今年から北海道日本ハムファイターズの背番号1番は斎藤祐樹投手が背負うことになりました。チームの中心選手としてしっかりと働いてほしいという願いを込めてのことでしょう。
斎藤投手は今年入団7年目です。新人の時こそ6勝と“それなり”の活躍!?をしましたが、それからは肩の故障、股関節の痛み等ケガもあり思ったような活躍はできませんでした。
その斎藤投手が昨年オフから取り組んでいるのが肉体改造です。斎藤投手が師事するのは日本のスポーツ界ではかなり有名なスポーツトレーナーです。過去・現在でも何人ものプロ選手がそのトレーニング理論と実践を学んでいます。
果して今季、斎藤投手は復活できるのでしょうか?ただ彼には常に結果を残すプロアスリートとして必要なある能力が欠けているかもしれません。
今回は日ハム斎藤投手を通してみた活躍するアスリートにとって大切な要素に迫ってみましょう。
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トレーニングを選ぶ“視点”判断力
プロスポーツの世界はいつの時代も弱肉強食です。実力主義なのでいくらルックスが良く品行方正であろうと結果が伴わなくてはそこに存在することすらできません。今シーズン復活を期す斎藤投手も自らの立場が分かっているようで並々ならぬ決意で臨んでいるはずです。
今一歩には“それなり”たる理由がある
プロアスリートは基本的には個人事業主、つまり一国一城の主です。ということは物事の決断を迫られる際、しっかりと自分で決める必要があるのです。この決断する力は過去の経験や新たな知識・技術の積み重ねによって磨かれます。
その世界で中々大成しない人達には残念ながらこの決断力や判断能力が決定的に欠けてしまっています。大切な判断や決断は他人に委ねるべきではありませんし、何をおいても自ら決断しなくてはなりません。
しかし斎藤投手はみずから選択したその結果がまだでていません。彼の判断が正しいか否かは今シーズンの彼の成績いかんといったところでしょう。
斎藤投手は昨年秋から始めたトレーニング内容を時々メディアに公開していました。しかしこれはプロ野球の話題に欠けるオフシーズンにメディア対応策として彼が通うジム側や彼のマネージメント側の意向が働いたのかもしれません。しかしその内容を見てみると正直残念なことがありました。
今の自分に必要な要素とは?
トレーニング内容すべてを把握したわけではないのであくまで予想の範囲ですが。。。今の斎藤投手にとって必要な内容ではないんじゃないか?ということです。
彼に今必要なのは筋力アップや体にとって苦しいことを強いることではありません。その最たる場面はプロ野球の練習風景でよく見られる矯正(きょうせい:Correction)です。あれは正直どうか!?と思ってしまいます。
例えば股関節を上手く閉められないからしっかりと閉じられるように、現場でチューブを用いて矯正していました。こうしたことをするのが斎藤投手にとって今必要なことなのでしょうか?
股関節が閉じないのにはそれ相応の理由(わけ)があることを知るべきなのに、彼の目は矯正にむいてしまっているのです。この視点の方向(「考え方」ともいえますが)が違うとその努力は単に自らを苦しめているだけになってしまいます。
視点(考え方)の向きが違う
例えば股関節を曲げた状態では外側の腸脛靭帯とそれに繋がる大腿筋膜腸筋に筋緊張があれば股関節を閉じにくくなるのは当然です。これに内側の内転筋群が瞬時に収縮できない機能不全を併発しているのですから股関節を閉じようとしても閉じるわけがありません。
腿の内側と外側の力発揮のバランス不均衡であり、それを無理やり閉じようと矯正すれば他の部位にその歪みが生じることになりかねません。その要因のひとつは骨盤の機能的前傾位がないため体幹深部の筋肉が働かない状態にあることです。
メディア報道では彼のトレーニングの一場面を切り取って映像にしているのかもしれませんが、彼は自身の股関節が開く理由に目が向いていないように思えるし、斎藤投手を指導するトレーナーもそのことには言及していないように強く感じました。
体はすべてにおいてバランスを保っている(均衡)状態にあるので、それを無理やりに矯正しようとすれば投手ならそれが最終的に肩や肘の負担を増やすことになりかねません。
自然な形で修正してこそ身体はその改善を無理せずに受け入れてくれるのであり、それを無理やり“働け!動け!”と強制を強いてる現状では、その結果も推して知るべしと言わざるを得ません。
トレーニング=辛い・苦しいではない!
大汗を流し息を切らせながらのトレーニングはある意味(TV受けし)見応えがあるかもしれません。しかしそれはある意味なんの成果ももたらしません。大汗をかき息を切らせることが目的ではないはずです。
トレーニングは自分が行うスポーツにおいてパフォーマンスが高まるようなものでなくてはなりません。決して苦しむために行うのではないのです(精神的なストレスを与えるのが目的ならばそれでも構いませんが・・・)。
なぜそののトレーニングをするのかと言えばパフォーマンス向上に必要だからです。しかしそこには脳での動くイメージができることが大前提です。斎藤投手のケースであれば股関節の基本的な動きを良くしそのイメージを脳とローカル(この場合股関節)で繋げる役割を担うのが関連するトレーニングなわけです。
苦しい・辛いだけのトレーニングはこの脳内イメージを作り上げローカルと結びつけることができません。結果汗を流し息を切らせた傍から(TV的に)観たら『頑張ってるな!』というだけのトレーニングになってしまうというわけです。
下半身と上半身の連動
連動とは一緒に動くということではありません。一方が動くのに反応(呼応)して他方が動く、つまりそこには時間差が存在します。その差はごくごくわずか、コンマ(,)0数秒ですが、それが大きな力を生み出す原動力ということをあなたも知るべきです。
上下の連動がないとどうなるか?
斎藤投手は下半身、もっと言えば骨盤と上半身が同じ時間で動いてしまっています。勢いのあるボールを投げる投手であれば先に下半身(骨盤)が回旋し、わずかな時間差で上半身、さらにコンマ何秒の差で肩・腕・肘・手という時間差の動きがあります。
つまり下半身が動くとほぼ同時に上半身も動いてしまうため球を持つ手が遅れてこないのです。これではバッターにとって球の出所や球質がわかりやすく、結果しっかりとバットの芯に当てられてしまう(Clean Direct Contact:CDC)ことになります。
投手の優劣を評価する場合、この身体のしなりと腕のしなりがあるかどうかは非常に大切な要素ですが、実際のところこうした要素の不足が斎藤投手をここ数年結果のでない投手におとしめている最大の要因だとTM鈴木は考えます。
斎藤投手、今後の展望
一生懸命練習することは確かに大切です。しかしそれだけでは成果をあげることは特に汎用性が高まる現代においては難しいと言わざるをえません。
斎藤投手の現状とは
立場的に非常に厳しい状況が続く斎藤投手ですが、年棒推移を見るとその結果に比べ上がり幅は大きく、これは日ハムがこのドライチ選手を如何に重視しているかの現れかもしれません。
メディアやファンからは「使えない!」、「過去の選手」という評価を受け、例のポルシェおねだり事件などではネットや2chなどからも総スカンを食らってしまいました。
斎藤投手は現在こうした厳しい条件に晒されながらもなんとか野球人としての責任を果そうと懸命に努力をしています。その努力が今季どうなるのかファンやメディアは彼を温かく見守ってその結果を待って欲しいと願っています。
色々な風評や避難にされされても頑として自己を追求している姿は無神経とか鈍感等と揶揄されますが、そうした評価とは関係なく一野球人としてシーズンを精一杯戦ってもらいたいですね。
今必要なこととは?
今、斎藤投手に求められるものは柔軟な思考だとTM鈴木は考えます。焦って色々と試したところで身体は思った通りには動いてくれません。ローカル(体の末梢部位)からの信号によって脳が解釈し命令を下すといった一連の経路が形作られ活発になるにはある程度の時間を要するのです。
人によっては1年から数年単位でかかることも不思議ではありません。それをシーズンオフの短い時間で獲得するのは雲をつかむような話です。
ピンチングで最も大切なしなりを生む身体の使い方、さらに言えば上半身と下半身が連動するような動きを獲得する必要があるでしょう。そのためには骨盤ー股関節ー脊柱といったラインの基本的な動作を学習することです。
股関節が正常に動くようになれば脚から脊柱、さらに肩・肘・手という各部位の動きに時間差が生じ、ムチのようなしなりのある動作が生まれます。まずはこうした基礎動作を作ることがその後の技術覚醒への道ではないかとTM鈴木は考えます。
ローマ帝国は1日で出来上がったわけではないし、野球チームは全世界(特にアメリカ・中南米・台湾・韓国等)に沢山あるのですから。
斎藤投手を通して見えたトレーニングに対する思考や実践方法を検証しました。さて、あなたはどう考えますか?
TM鈴木