シューズ性能に特化したフォアフット走法移行には限界あり!?~運動性能を高める訓練なしにフォーム改造はありえない~

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第94回箱根駅伝(2018)は混戦を予想したメディアの論調とは異なり、地力の青学が総合優勝(往路2位・復路1位:10時間57分39秒/大会新記録)で4連覇を達成しました。

終わってみれば「またもや青学かぁ~・・・」とか「やっぱり青学!強しっ!」と両端の意見が飛び交う一方、他校の役不足と戦略の未熟さを嘆くコメントもちらほらと聞こえました。

それにしても気になったのは徐々に“高速化”しつつある“箱根”に対応すべく、シューズメーカーが独自の戦略を立てたこと、そしてその策に溺れてしまった感のあるチーム(個人)の反応でした。

その最たる例がシューズ性能を過信したがための、体作り・動きづくりの欠如だったのではないでしょうか。

一体どういうことなのか?2020TOKYOを見据え、年々進化する長距離ランナーの走りに注目してみました。

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着地スタイルの特徴

image1:

着地のスタイルが勝利のカギ!?

「リア・フット・ランディング(RFL)」、長らく長距離を走るための走法として日本人(特に市民)ランナーには馴染みのあった踵着地法ですが、既に過去のものとなりつつあるかもしれません。

新たな着地法として注目されるのは『フォア・フット・ランディング(FFL)』で、一部のトップランナー達がこの走り方に注目し徐々にとり入れだした背景には、シューズメーカーの熾烈な開発競争があるとも言われます。

何がどう違うの?

image2:

着地法3種

「リア・フット(RFL)」から「ミッドフット・ランディング(MFL)」が現在の主流、さらに「フォア・フット・ランディング(FFL)」は世界を席巻する東アフリカ出身(特にケニア・エチオピア・タンザニア等)のランナーに多いことが近年の調査により明らかになっています。

ランニング時の着地の仕方には、「かかと着地(ヒールストライク)」と「ミッドフット走法」、「フォアフット走法」の3つがあります。それぞれのメリットやデメリットを紹介しているので、着地の仕方が気になる方は是非参考にしてみてください。ランニング時

*各々の着地法については上記サイトでその特徴が述べられているので比較してみてください。

世界トップの着地法はMFLが主流の日本人ランナーとは明らかに違っていて、それが日本が勝てない主な原因!とする専門家の意見もあります。

要素としては一定の違いがでてくるのは当然といえば当然ですが、それだけが主な要因とまでは言及できるのかどうか・・・、大いに疑問が残るところです。

速度による着地法の違い

image3:RFL vs FFL

速度的に観るとジョギング程度のミドルペース(7分/km)ならミッドフットL(MFL)が最も適しているといえます。

しかしジョギングよりも遅いスローペースなら、リア・フットL(RFL)は選択肢のひとつとして有効でしょう。

RFLだと踵から入ることで一瞬ですが力(force)が下がってしまう、つまり速さにブレーキがかかってしまう(image3  上図の “谷の形” がそれ!)のです。

ミドルペース以上の速さでの踵着地だと、地面からの反発力が前方への推進力より上方への跳ね上がる力に変化するため速度に反映されにくいと言えます。

走法が変わる!?着地法とシューズの適正

image4:

着地に合わせたシューズ選択を!

昨シーズンから長距離・マラソン界では静かなる革命が起こりつつあり、それがナイキが世に送り出したいわゆる「厚底シューズ」戦略です。

黒人、特に東アフリカ出身のトップランナーに多く観られるつま先着地(フォア・フットL)の技術に着目し、その技を道具(靴)の面からサポートする取り組みが数年前から行われているのです。

シューズ革命の恩恵を受ける日本人

出典:https://goo.gl/mnSgQg

★4″22~4″32までの約10秒間に注目!

そのシューズ「ズームヴェイパーフライ4%」を身に付けた日本人が名立たるレースで軒並み自己記録を更新したり、フル・ハーフ・10000mレースに十分な間隔を空けずとも出場し満足いく結果を残しています。

これには多くの関係者や専門家も驚きを隠せないようで、日本人のトップランナー達も様子を伺いながら使い始めるという連鎖反応が起きています。

特に大迫傑選手(ナイキオレゴンプロジェクト)は、世界トップのランナー達と日々顔を突き合わせて練習しているということもあり、いち早くこのシューズをとり入れ順化した選手の1人となりました。

さらに駅伝レースでもチーム単位で使用し成果を出しつつあるケースもあり、その筆頭が2017年の出雲を制した東海大学と、ここ数年は青学の後塵を拝している東洋大学です。

感性は世界トップレベルかも!?

早稲田大学で箱根駅伝を走ったエリートランナーとして、その後所属した日清食品でのニューイヤー駅伝の快走に満足せず1年で契約を解除、海外に目を向けた大迫選手は、現在ナイキオレゴンプロジェクトに所属しプロランナーとして活動しています。

彼は体の中心(コア:core)に走るためのしっかりと働く筋肉を作り上げる意図をもって日夜筋トレ(自重トレ)に励む日本人では珍しいタイプのランナーです。

また体型的にも先端にいくに従って足が細くなる、黒人ランナーの体型に近いタイプといってもいいでしょう。

ただ映像(4″22~4″32までの約10秒間)を観ると一目瞭然で、ロンドンオリンピック金メダリストのキプロティチ選手(ウガンダ)と比べると、上半身の前方への傾き角は10°近く違いがありそうです。

上半身の傾き角が大きいのは骨盤の前傾角に違いがあるためで、キプロティチ選手の方がアップライトスタイルで走る大迫選手に比べ5~10°骨盤が前傾しているといえるでしょう。

モハメッド・ファラーを始め世界のトップがしのぎを削る同プロジェクトで、ランナーとしての感性を限界まで磨いているせいか、体・動きづくりやシューズにも非常に強いこだわりを持っているようです。

フォア・フットLに合う骨盤前傾位

この「ズームヴェイパーフライ4%」は2017年5月にナイキが手掛けたプロジェクト「ザ・ブレーキング2(2時間を切るマラソン・プロジェクト)」に向けて開発されたシューズが元となり、それを市販化したものです。

「ザ・ブレーキング2」には、リオ・オリンピック金メダリストのエリウド・キプチョゲ選手(ケニア)を含めた世界トップのランナー3人が出場しましたが、おしくも2時間切れはできませんでした(キプチョゲ選手が非公認ながら2時間0分25秒を達成)。

彼らはもちろん東アフリカ出身(ケニア・エリトリア・エチオピア)の黒人ランナーであり、走りの理に適った骨盤前傾位に伴うフォア・フット・Lを特徴としています。

つまり「ズームヴェイパーフライ4%」は元々骨盤前傾位仕様でナチュラルなフォア・フットLをする選手に対応したシューズといっていいでしょう。

ということは骨盤傾斜角が黒人ランナーに比べて平均10°程劣る日本人には、相応の工夫をして履いたとしても、パフォーマンスに影響する程の効果は期待薄とみるべきです。

履きこなせる日本人は多くない!?

image5:

カラダ特性を理解する!

残念ながら全てのランナーにフィットするシューズは存在せず、だからこそ大手メーカーは独自色を出し、各々のランナーの好みに合わせて使ってもらうことになるわけです。

ナイキが世に出した今回の厚底シューズも、それを履きこなせる能力(走りの技術)があってこそ力を発揮するのであり、動き的に合わないのであればパフォーマンスが高まらないのは当然です。

扱いずらさも一流!?

この厚底をいち早く取り入れた大学勢も苦戦または対応するのに苦慮しているようで、観るところ履きこなせる体・動きづくりが不足しているのは明らかです。

今シーズンの大学駅伝、出雲を制した東海大や箱根往路トップとなった東洋大がこの厚底シューズを採用していましたが、今一つ戦略的には使いこなせていなかったようです。

以下は大学3大駅伝の距離的な特徴です。

出雲:6区間(45.1km)1区間平均7.52km

全日本:8区間(106.8km)1区間平均13.35km

箱根:10区間(217.1km)1区間平均21.71km

出雲・全日本が10km前後の距離なのに対し箱根は20kmを超える長距離が設定されており、その箱根で今回、東海は5位、東洋は惜しくも2位となりました。

しかし東洋は多くの選手がこの「ナイキズームヴェイパーフライ4%」を履いていた中、5区山登りと6区山下りの2選手だけは履いていなかったのです。

着地に合わせた動きづくり

image6:

走りの周期

フォア・フット・ランディング(FFL)は長い距離になればなる程、ランナー本人の動きの特性とフィットするか否かが課題となるようです。

ランナーの体を支えるシューズ(例:今回のような“厚底”)の性能がいくら優れていたとしても、体や動きがその特性にフィットしていなければ、マイナスの影響が出やすくなるのは必然かもしれません。

先にあげた東洋大の山登り/下りの2選手はフォア・フットLでの走法には体的に無理があると考え、元々のスタイル(おそらくはミッドフット)に適したシューズ選択をしたのかもしれません!

本来はミッド・フットLである大迫選手にしても、映像を観る限り(黒人ランナーに比べると)骨盤の前傾位が少ないため、いわば “無理して” フォア・フット・L(FFL)にしてるように感じます。

今後2020東京オリンピックに向けて、日本人ランナーがこの厚底シューズを多用し始める可能性もあり、そうなると本来はミッド・フット・Lであるべき日本人が無理矢理フォア・フットLに合わせることによるケガのリスクやパフォーマンス低下が懸念されます。

使いこなしてこその“道具”

日本人と現在世界のトップに位置する東アフリカ出身ランナーとの違いはずばり!骨盤の前下方への傾斜角といえるでしょう。

日本人と比べ10~15°程違う骨盤の前傾位(骨盤を真横から観たときの前下方への傾き)を持つ黒人ランナーは、放っておいても体が前のめりに倒れやすいため、それを補う意味で足を前に出すだけで前方への推進力が高まります。

骨盤が前傾しにくい日本人ランナーはその分、腿を持ち上げる(前に動かす)という余計な操作を強いられる分、動作的負担は大きくなり走力で大きな差がつく要因となるのです。

骨盤が前傾しにくい状態でのフォア・フットL(FFL)では道具(としてのシューズ)に使われている感は否めず、それを使いこなせるまでに相応の工夫と時間が必要となるでしょう。

『汝、道具(“厚底”)に使われることなかれ!』

カギとなるのは走っている最中、如何に【機能的】骨盤前傾位を維持できるかという観点での継続したトレーニングです!

TM鈴木が提唱するこの理論について試してみたいという方はこちらまでどうぞ!

プロならサブ10、市民ランナーならサブ3も夢ではないかも!(^^)!

まとめ

image7:

走りが変わるシューズの役割

近年の箱根駅伝や長距離レースでは足元から静かなる革命が起こり、中でもつま先着地を基本とするフォア・フット・ランディング(FFL)に注目が集まっています。

こうした高速走法に対応するための“厚底シューズ”開発が盛んになり、2020Tokyoを見据える今、履きこなせれば一気に世界をリードする程の旋風を巻き起こす勢いです。

厚底シューズの恩恵を受けるのは、元々骨盤前傾が際立ち自然にフォア・フットLになる東アフリカを起源とするランナーで、日本人の体形や動きには合わないケースも散見されます。

ミッド・フット/フォア・フットLに関係なく、そうした新たなコンセプトのシューズに合うための体作り・動きづくりがまず基本にあることをしっかりと認識すべきでしょう!

TM鈴木

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