流れるようなフォームやスムースな投球腕のスイングに骨盤前傾や脊柱といった姿勢はどうかかわっているのでしょうか。
投球時に骨盤前傾を意識して投げることはないし、それを身に付けるために前傾操作を練習から取り入れる投手などみたことがありません。
しかし人と同じ練習をしてもとび抜けることはできないはずなのに、人がやっていないことをやろうとしないのはチャレンジとしての本質を欠いています。
投球のある局面で特に+5度骨盤前傾を維持することでボールにどういう力が加わるかを是非!試してみることをおすすめします。
Contents
骨盤前傾を意識すべきフェーズ
投球動作を分類する時はフェーズという概念を使います。

投球(動き)を部分的に観ていくとおもしろい
フェーズ中に前傾操作が最もスムースに直後の動きへとつながり、ボールの勢いに関わるポイントを紹介します。
基本的には投動作全てにおいて骨盤前傾を維持する必要はあります※1)が、特に骨盤前傾の効果を生み出すために気をつけるべきフェーズにフォーカスします。
投球動作の分類
投球中、+5度を最も意識すべきフェーズはどこなのか?
そのフェーズを意識するとなぜ球の勢いがつくのか(回転数・球速アップ)?を理解する前に、投球分類を示します。

投球動作を観る時に必要なフェーズ分け
ボールリリースを除き大きく分けると以下の4つに分けられ、各フェーズは球速・回転数アップのためにそれぞれ大きな意味を持ちます。
- ワインドアップ
- コッキング(引き金を引く)
- アクセラレーション(加速)
- ※リリース(ポイントなのでフェーズには含めず)
- フォロースルー
威力あるボールを投げるためには、全てのフェーズで地面から得たエネルギー(地面反力)をできる限りロスすることなく、ボールを持つ指先にしっかりと伝える必要があります。
骨盤前傾を意識すべきポイント
骨盤前傾を意識するフェーズはずばり!画像左上コッキング開始での軸足支持期です。

骨盤に全く角度がついていない!
この時に「ビーナスのえくぼが少し緊張する/上下腹部が縦に伸びる」+5度骨盤前傾が効いてないと、腕が振りきれない中途半端な投球フォームとなります。
理由は以下2つ、部位ごとのつながる動き(運動連鎖)が起きない大きな原因だからです。
- 骨盤から捻る/まわす感覚が生まれず部位ごとの連鎖がおこらない
- 骨盤から始まる動きが連鎖せずコアでエネルギーをロス
また投球腕のスイング速度を高める力の溜め込みと放出もできません。
- 上半身を股関節へのせたまま足で地面を踏み込み得られる反発力
- 脊柱のしなり/胸郭の拡張&開き/肩甲骨の内転で維持される力
どの画像を切り取っても球速・回転数アップにつながる体の使い方ではありません。
プロの投手なので筋トレ等は十分しているのでしょうが、スクワットやデッドリフト等、表層筋を鍛えることで生まれるはずの無意識の前傾位さえ投球に生かせていません。
投げる時の身体操作が上手くできないと当然ながら勢いのあるボールは投げられないのですが、それを気付いてないことがこの選手の致命的な欠点といえるでしょう。
骨盤前傾を維持して投げるのが基本
大切なことはこのコッキング片脚支持期だけ骨盤を前傾させていればいい!ということではありません!
骨盤前傾を意識することなく+5度感覚が体に染み込んだ状態で投げられること!前傾が自動化された動きをできることこそが理想です。
そこまで筋肉や周辺組織の使い方が脳の運動野・感覚野に刻み込まれて初めてスムースな投球動作が可能となるわけです。
チャップマン(NY)がなぜ常時160km/hを超える球速なのかは、正に先天的・骨格的な骨盤前傾とそれに伴う脊柱のしなりやムチの腕振りができるからです。

矢を目一杯引けてバネの力で戻せる能力があるか?
日本人は骨格的前傾が備わっているわけではないため、筋のコントロールを利用した伸縮操作を意図的に身に付けることで、骨盤前傾で動ける体にしなければなりません。
そこでまずは片足をあげた時の軸脚の+5度骨盤前傾位:右ビーナスのえくぼに緊張を感じる状態を体感してみては如何でしょう。
感覚として身に付けば骨盤から動き始め上半身を股関節へ“のせる”ことで、地面反力を高めてエネルギーをロスなく指先に伝える感覚に繋がるはずです!(^^)!
前傾位を意識することなく+5度骨盤前傾を維持しながら脳と体に染み込んだ状態で投げられるためのトレーニングに興味をお持ちの方はこちらへどうぞ!
まとめ

+5度骨盤前傾はスムースな投げにつながる体の使い方がわかる
▼スムースな投球と力強い腕振り・スイングを身に付けるには+5度の骨盤前傾が必須
▼特にコッキング開始片脚支持期で前傾を維持する感覚を体感しておくことは、その後の滑らかな並進運動と骨盤の回転を伴う動作に有用
▼大切なことは球に勢いがつく体の使い方を知った上でトレーニングや実践を積むこと!その知識がないままいくら練習をしても致命的な欠点に気づかずキャリアが終わる
▼まずは片脚支持で同側「ビーナスのえくぼ」の緊張を感じ取る感覚を高めること
TM鈴木