先日の東京マラソン2018で設楽悠太(26:HONDA)が日本人最高記録を16年振りに更新した。
2020東京を前に日本記録が塗り替えられたことは喜ぶべきだろうが、日本マラソン界が依然として低迷に喘いでいる状況に変わりはない。
その背景にはケニアやエチオピアといった東アフリカ勢の台頭があり、実質そのその記録や競技(能)力には大きな差があるといえるだろう。
近年爆発的に広がった感のある世界との差について、黒人トップの走る姿勢(傾き)に注目し、日本人ランナーとの比較からアスレチックトレーナーとしての視点を論じてみる。
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黒人ランナーvs日本人ランナー

出典:https://goo.gl/TJPNCH「PERFORMANCE」 特に東アフリカ勢は前傾するスタイルが特徴
走りを横からみれば一目瞭然で、黒人ランナーと日本人ランナーにはその前への倒れ方に大きな差がある。
但し画像の一部を切り取って観るだけでは中々わかりずらいかもしれないが・・・。
前に傾斜する要因
はっきり言えばと黒人ランナーは走るときに常に前傾姿勢で走り、この傾向はスピードを上げる時にさらに強まり、体全体がさらに前のめりになるような特徴を持つ。
一方日本人ランナーはどちらかと言えば真っ直ぐ直上に立っている状態を維持しながら走り、スピードがあがっても多少前傾はする場合はあるものの、どちらかと言えばアップライトなスタイルといえよう。
走っている時のこうした体の傾きの違いはなぜ起こるのだろうか?
その理由、実は骨盤の前傾*1)に由来する。
世界トップはその多くが東アフリカ出身の黒人で人種的にはネグロイドに分類されるが、これは近年スプリント界を席巻するジャマイカ/アメリカ等のアフリカ系人種と同類である。
アフリカ系はアジア系や欧米系と比べると骨盤の傾きが極端に大きく、その特徴は体を自在に動かすという競技スポーツの分野でいかんなく発揮されている。
マラソン世界最高記録の変遷
走りはまったくの別物!?
これはもう観た目には一目瞭然であるが走る感覚も全く違う!というか、まったく別物ととらえて差し支えないだろう。
それは着地でもしっかりと体の真下(感覚的には上体のラインより後方に着いている)に足を振り下ろし、地面を“一瞬”の後に足裏で蹴って地面反力を生み出していることからもわかる。
黒人ランナーは大袈裟に言えば体が前に “つんのめりそうになる” のをあげた足を振り下すことで(接地点は上体の真下)抑え、そのサイクルを2時間強繰り返しているのである。
だから黒人ランナーは(ファラー*2も含め)接地後の足が臀部にくっつきそうな程跳ねあがるし、後半スピードアップする時は特にその動きが顕著となる。
これは骨盤が前傾しているため地面を一瞬で斜め後下方に蹴る時の推進する余力を(蹴る力の放出が間に合わないから)、膝から下をグイっと曲げることによって減衰しているためだ。
アップライトスタイルの日本勢はまずそれができない!
彼らは感覚としては体の真下よりやや前方に接地し*3、足裏で後方に押し出すという作業を毎サイクル繰り返すことになる。
つまり日本人ランナーの走りは上にピョンと飛び跳ねるイメージで、斜め後下方への力の放出は少なく、例えスピードアップしても黒人ランナーのこの動作ができないことを考えれば、ファラーを含む東アフリカ勢が如何に驚愕の身体性能をしているかが伺えるだろう。
*2:モハメド・ファラー(Mohammed “Mo” Farah)
足底の接地スタイルについて
最近の流行である足裏接地の議論についても言及しておくが、この問題を骨盤傾斜角でみればその多くが解決する。
海外のトップランナーの多くはフォアフット走法であり、対して日本人はミッドフットもしくはヒールフット接地になるという論評である。
しかしそこに日本人もフォアフットにする方が速く走れるという議論が巻き起こり、そのためのシューズ開発競争(2018箱根駅伝では採用するシューズに関するニュースがトップになる程)が激化する等、メディアを巻き込んで大賑わいである。
これは人種間の身体構造や動きの特徴を知っていれば当然合点がいかない!
なぜならフォアフットは骨盤が前傾して初めてその強みを生かせるからで、骨盤が前傾せず足を体の真下に接地できない日本人には足先での接地法は極めて困難と言わざるをえない。
走りでの前傾姿勢に大きな違い

出典:https://goo.gl/4iD1Yu「swali africa」
骨盤前傾位の影響は黒人ランナーと日本人の走りをまったく別物にしてしまう可能性があるし、さらに言えば地面への反発力を受け取る能力が大きく異なる。
頭上への跳ね上げは速さを生まない!?

出典:Photo by RunCzech
画像の一部観て判断することを危惧
するが参考までに掲載しておく
日本人ランナーの走りは男女とも頭上に跳ね上がるような動きに特徴があり、これだとどう贔屓目にみても前に進むための大きな推進力(エネルギー)を生むことにはならない。
黒人ランナーと日本人を比べると背中側のメリハリのあるライン・お尻の出っ張り・そして体の傾きがまったく違うのがその主な理由である。
今シーズンの東京マラソン2018を含む多くのメジャー大会でも、黒人ランナーと日本人ランナーが並走すると、この「前に傾く黒人ランナー」vs「頭上に跳ね上がる日本人ランナー」の構図が明らかになっていた。
男子では国内トップに位置し、所属チーム内で外国勢トップの1人であるファラーとも競いあう大迫傑(ナイキオレゴンプロジェクト)でさえ、前方へ傾斜している走りとは言い難い。
チームで競い合い黒人ランナーの走りを熟知している(と思われる)大迫でさえ、その走りを変えることは中々できないことを考えれば、国内選手の状況は推して知るべしである。
推進力とは例えば水上を移動する場合、前に進むのはオール(櫓)を水中に入れて漕ぐ時にしか推進力を得られない。それ以外はいわば惰性で進んでいるといってもいい。
陸上では力が伝わって推進力を得られるのは足裏が地面についている時のみで、足が地面から離れる離地の際はほぼ惰性で進みながらその力が衰える前に、再び地面を蹴るという操作がおこなわれる。
制するには学ぶべし!
はっきり言おう!
マラソンでオリンピックを制したいなら、東アフリカ出身の黒人ランナーの身体を前に傾ける走りをそっくり真似るという思考を持つべきである。
それはつまり骨盤を前傾させた状態で2時間強を走れるようにすることに他ならない!
なぜなら日本人に特徴的な頭上にピョンと跳ねるような走りでは前方への推進力を得られないばかりか、足を振り下ろして地面を蹴る前に「腿を上げる」というもう“ひと手間”を加えなくてはならず、全くもって効率的ではないからだ。
だから絶対的なスピードでは全く歯が立たず、従って後半に置いてきぼりをくらう場面に数多く遭遇することになる。
しかし「ならば骨盤を(仮に)30°に前傾させて走ればいいのか?」と言えば、事はそう簡単ではない。
骨盤を30°に傾けて走ろうとしてもそうできない理由があるのだ!
骨格形態の差、そして筋肉の再活性化

stressing & fine stretching hamstring
何せ黒人ランナーは骨格形態自体がそういう角度(骨盤前傾)になっているのである。
日本人がもしその角度を手に入れしかもそれを2時間強維持しようと思うなら、想像を絶する程の思考改革とカラダ機能改善が必須となるだろう。
彼らの走りを真似ようとするなら少なくとも股関節の屈曲最終可動域(エンドポイント)での、ハムストリングの伸び具合を高め、さらにかなり活発的に働く大腰筋が必要になる。
つまり今迄行ってきたストレッチのように腿裏を“ただ何となく”伸ばすことや、曖昧な深部筋群への動作アプローチは全く役に立たないということだ。
私見ではあるが米国留学時代、学内にいるほとんどの黒人アスリートのカラダを調べたら、特に走るアスリート達は腿裏のある特定部分の動きが特に活発だった。
腿裏はただ伸ばせばいいというのではなく、走りのパフォーマンスを高めるために坐骨結節に近い筋腱ユニットが最大限緩む必要がある
陸上界では最近流行っている特定のトレーニング等があり、駅伝で活躍しマラソンを視野いれた連中が専門家に師事し訓練をしているようだが、はっきり言えばそういう視点はまったくの検討違いも甚だしい。
新たな可能性を試す機会

出典:https://goo.gl/USn5Mj「Runners Connect」
さて、色々と私見も含めて述べているがではいったいどうすればいいのか?ということが最大の課題である。
既述の通り、まずは黒人ランナーと同じ体の使い方、その動作感覚を掴むことが勝つ可能性を高めることに繋がるだろう。
感覚の違いを自覚する!

ヘソから下が脚!の由来
日本人の感覚だと前にスムースに進んだりその速度をあげるなら腿を引き上げようとするはずだが、黒人ランナーには少なくともその感覚はないようだ。
これはTM鈴木自身が【機能的】骨盤前傾位を習得して初めて気づいたことだが、前傾位で腿を引き上げようとするとある角度以上は持ち上げられないことが理解できるはずだ。
腿を引き上げる意識だと骨盤は中間位から後傾位にならざるを得ない、つまり腿を引き上げようとすればするほど骨盤の傾斜角が変わってしまうのである。
通常個人の骨盤傾斜角は意識しない限りは変わらないもの、よって黒人ランナーは腿を引き上げるというより、ヘソより下の左右の縦ライン(とでも言おうか)を素早く斜め前方に動かすイメージである。
これこそがまさに「ヘソより下が脚」という感覚で動く(歩く・走る)ようなもので、骨盤の前傾がない日本人ランナーにはこの感覚は皆無であろう。
市民ランナーとは比べるべくもないが「股関節から下が脚」という感覚で、酷い場合膝下からしか動かないようなランニングフォームの選手も特に日本の女子には散見する。
あくまで個人的な意見だが、この「ヘソより下が脚」の感覚を掴むだけでも記録は大幅に伸びるはずである。
ただその域に達するには多くの時間と労力を費やすこととなるはずだが・・・。
骨盤前傾を自分のものに!
さて、ではどうすればよいのか?最終的な答えは骨盤を前傾させて走れるようにすることだ!
日本人ランナーはそうした骨盤前傾位で走ったことがないため心肺機能でもモデルチェンジが必要になるだろうが、最大の課題はその角度を維持する能力を有していないことである。
黒人アスリートは元々骨格形態が前傾しているため筋肉で前傾を維持する必要はないが、日本人は骨盤がどちらかといえば中間位なので、関連する筋肉を刺激して前傾位を維持しなければならないのだ!
この能力、そしてそれを2時間以上維持するには尋常でないカラダ性能が必要となる。トレーニングの大半をその姿勢維持での走りに費やさなくてはならない。
いくら極限のスポーツといっても(42kmを2時間少々で走るという)、今迄姿勢(骨盤傾斜角)について何も考えなかった状況を変えて同じ走りをするには、相当の覚悟と相応の質や量の訓練が必要になだろう。
そうした【機能的】骨盤前傾の維持を可能にする “画期的” アイテムをご存知だろうか!
それがセルフ・ボディコンディショニング・ピラー【ツブツブ】である!
未来を見据えた準備を怠るなかれ!
このアイディアは無論東京2020を見据えてのことではない!
高々2年程度でその考え方・そして能力や性能を獲得するのは現実的とは言えないであろう。
目指すとすれば6年後の[Paris2024]や10年後の[L.A.2028]が妥当であり、そうなると現在ジュニアや子供世代が対象となる。
それでも今、現役で【機能的】骨盤前傾位で走る感覚を身に付けたいという非常識な方がおられるなら、是非チャレンジしていただきたい!
TM鈴木は「“非常識”の中にこそ勝利がある!」と考えている。だからそうしたチャレンジャーには惜しみなく手を差し伸べたくなる次第である。
私、TM鈴木が提供する骨盤前傾位アプローチ【FAPTAメソッド】は超がつく程の高度動作性能トレーニングではあるが、日々のアプローチでその一端を徐々に感じられるはずである。
さて、あなたには果してその覚悟があるだろうか?ご興味があればこちらまでご連絡を!
最後に一言:
殆ど話題にはならなかったが、日本最高記録を16年振りに更新した設楽悠太、実はディクソン・チュンバに次ぐ41秒差遅れの2位だったことも伝えておこう!
まとめ:

出典:https://goo.gl/yhKzaH「現身日和 【うつせみびより】」
世界との差が果てしなく広がった感のある日本マラソンの現状、その大きなポイントは以下の要因と言えるだろう。
・前傾姿勢で走れる黒人ランナー vs 頭上に飛び跳ねる走りの日本人ランナー
・走りの違いは骨格形態の違いに由来:骨盤前傾位 vs 中間位
・前傾姿勢と一瞬の蹴りによる地面反力を高め前方への推進力得られる黒人ランナー
こうした黒人ランナーの優位性に追いつくため、日本人も【機能的】骨盤前傾位での動きや操作を習得することで世界トップと対峙することも可能である。
TM鈴木

TM鈴木が【機能的】骨盤前傾位に出会うまで