なぜ肩は凝るのか?
中高年以降の日本人であれば誰しもが経験したことがある身体症状でしょう。
しかし実は若い人にも肩(頸)凝りが非常に多くなっていることをご存知でしたでしょうか。
一般的には様々が要因があるこの肩(頸)こりですが、少し違った方向から見ていくと対処法も変わってくるというのが今回のストーリーです。
TM鈴木の視点から観た肩凝りの原因とその改善法について、機能解剖学的な立場から迫ってみましょう。
Contents
肩コリの本当の要因は?
出典:https://goo.gl/yccfVD(保健指導リソースガイド)
悪い姿勢・良くない姿勢が肩こりの大きな原因となっていることは多くの専門家の指摘するところです。
だとすればその「悪い」と言われる姿勢はどこがどうなっているのかを知りたくなるのが人情かもしれませんね。
肩こりの原因
出典:https://goo.gl/Cc5mDS(脊柱間狭窄症ひろば)
姿勢の影響は非常に大きくここが改善されれば肩こりは治ったといっても過言ではありません。
それだけ姿勢に関しては肩こり症状を持つほとんどの皆さんが注目しているポイントです。
最も簡単そうにみえて最も難しいのが姿勢の改善です。
何しろ今(あなたの現在の年齢)まで、あなたを支えてきた「姿勢」なのです。
改善しようと思ったところで現在の姿勢維持に慣れてしまっているためおいそれと治すことなどできません。
さらに現代ではタブレットやスマホの普及により画面を見る機会が多くなり、その頸椎角度は益々深くなるばかりです。
因みにこうした電子機器を見ることによって肩頸周辺に出る症状を総称してスマホネック等と呼ばれます。
さらに頭が前方に倒れる状態を真横から撮ったレントゲン写真でみると、頸椎が真っ直ぐに斜め前上方に傾斜している姿勢をストレートネックといいます。
本来は下部頸椎が少し前方に傾き上部頸椎がほぼ真上に伸びるような前弯という曲がりがあり、お蔭でボーリング球と同じくらいの頭の重さや重力に対抗することができるのです。
こうした“現代病”とも絡むことで肩(頸)コリは重症になればなるほど治療がやっかいで、一時良くなったとしても後に必ずといっていい程症状が再発するケースが多くみられます。
頸肩周りの筋肉の強張り
出典:https://goo.gl/ujNxkc(セラピーのある生活)
肩こりで対象となる筋肉は特に僧帽筋・肩甲挙筋・板状筋・頭半棘筋等の首から肩にかけての筋肉と、菱形筋などの肩甲骨周りの筋肉です。
これらの筋肉が硬くなる、いわゆる強張りがでることによって肩頸周辺のコリや張りが自覚症状として現れます。
広背筋の作用
従来の肩こりの対処法は強張った筋肉をマッサージで揉み解したり、張っている部位をストレッチで伸ばしたりする方法が一般的でした。
確かにそうした方法も有効でしょう。しかし筋肉の特性を知っておくとそれ以外にも方法があることをご理解いただけると思います。
そこでポイントになるのが肩こりの主原因となる僧帽筋、そしてその拮抗(バランスをとる)作用を担う広背筋の働きです。
僧帽筋の特性を知る
僧帽筋は日常生活において2つの不利な点があります。
①デスクワークやパソコン作業で、頭が身体より前にでている前屈みの姿勢になってしまうことで、過度に緊張する。
いわゆる肩があがる、肩をすくめてしまう姿勢。この場合、僧帽筋は縮まりながら硬くなる。
②肩周りや上背部の筋肉が弱く、腕の重さをコントロールできない場合。
前屈み姿勢で僧帽筋が引っ張られるためそのままだと硬くなりコリや張りの症状を呈する。
僧帽筋の特に上部・中部繊維は頸から前側は外側の鎖骨1/3、そして肩甲骨の先端(肩峰)に繋がっています。
従って頭が斜め前方に傾き両肩が前方移動する円背(えんぱい)状態になると、僧帽筋は伸ばされながら硬くなる傾向が強くなります。
日本人は前屈みになりやすい骨格特性をしているため、デスクワークやPC作業等では肩をすくめやすく、僧帽筋が縮まりながら硬くなりやすい傾向があるのです。
筋肉の主働・拮抗作用
骨格筋が動く際には主働筋と拮抗筋の関係が必要です。
ある特定の部位を動かす場合、その動きのメイン(縮める)となる筋肉を主働筋、そしてその動きとは逆の伸びる働きをするのが拮抗筋です。
腕の力こぶをつくる際、縮めるというメインの働きが上腕二頭筋で主働筋となり、その動作を行うために伸びる働きをするのが反対側に付く上腕三頭筋で、この場合の拮抗筋でせす。
僧帽筋・広背筋に関してもこの主働筋と拮抗筋の関係が成り立ちます。
肩こりの場合であれば肩がすくんでしまう状態であれ、伸びて凝り固まってしまう場合であれ、広背筋が拮抗作用の役割を担っています。
広背筋が弱くなるとどうなるか
広背筋は腕を曲げた状態で下方や後方に引くことで刺激され、鍛えられます。
この広背筋が弱く、本来の機能を発揮しなくなると背中はまるくなり前屈みの姿勢が増えてしまいます。
特に日本人にとっては前屈みが“楽な”姿勢になってしまうわけです。
いつもいつもこうした筋肉のバランス的に“楽な”姿勢をとってしまうと、しっかり身体を伸ばす(=背中は縮める)という行為がとても困難になります。
そこで広背筋が本来の仕事をしてくれることがとても重要なわけです。
広背筋が働くことで、僧帽筋(特に上・中部繊維)とのバランスも維持されその働きも高まり、肩こりが解消できることになります。
広背筋ホームエクササイズ
出典:https://goo.gl/nCTPdU 画像1)
拮抗筋である広背筋は鍛えることが難しい筋肉と言われています。
広背筋を鍛えるためには特別なマシン 画像1) を使うことが一般的であるからです。
しかしちょっと工夫さえすれば、広背筋も自宅で簡単に刺激し鍛えることが可能です。
ゴムチューブを使用する
広背筋は背中にある①左右の肩甲骨を脊柱に寄せたり、②逆側斜め下方(右側なら左のお尻方向)に引き下ろすことで鍛え(縮め)られます。
①では直角に曲げた肘を真後ろに引くこと(ローイング)で、②では背中を反らしながら後下方向へ引く(ラットプルダウン)という動きによって、その働きを活性化することが十分可能です。
広背筋がしっかり機能すると肩甲骨は背骨側に近づき(内転)、逆側斜め下方つまり右肩甲骨なら左臀部(下方回旋)に引き下げる力が働きます。
この広背筋の動きによって縮まっていた、あるいは伸び固まっていた僧帽筋は本来の長さや動きをとり戻し、肩こりが解消されるのです。
こうした広背筋と肩甲骨の運動は肩こりを解消するだけでなく、背中全体や骨盤の位置調整も改善してくれて、姿勢を変えてくれる優れもののエクササイズなので、やらない手はないですよ。
今回はゴムバンドを使って片方の腕を後下方向へ引くシングルアームプルダウン(SAPD)を映像を交えて説明します。
ポイントは立って行うこと、そして骨盤を前傾にして身体を(なるべく)反らせた状態で行います。
右側から行う場合、左手でゴムチューブの端をしっかりと持ち左腕を肘を伸ばした状態でしっかりと挙げておきます。
チューブの反対側の端っこを右手でしっかりと持ち、それを逆側のお尻に向かって引き下げるようにしていきます。
回数・セット数は調整してください。両側各10回を3セット位が理想です。
もし何か固定されたバーがあればそれにチューブをひっかけてできます。
このエクササイズの詳細や個人的なパーソナルレッスンをご希望の方は、こちらまでお問合せください。
まとめ
肩こり解消するのはストレッチやマッサージだけでは十分な効果を得られません。
原因となる僧帽筋との拮抗作用を利用し、そのメインとなる広背筋の働きを高めることで肩頸凝りが驚く程解消します。
ゴムチューブがあれば家で毎日でもできるので是非、お試しください。
肩甲骨が「動いているな!」と感じられれば運動の効果は増々高まり、背中が丸くなることも防げて姿勢の改善も期待できます。
TM鈴木