昨今の高校野球で流行っている質問、それがこの『どんぶり飯を何杯食べるのか?』です。
実際何杯食べているかというのが問題ではなく、沢山食っているかということが重要らしいのです。
どれだけたくさん食べているかというのは裏を返せば身体を大きくする必要があるとのこと。
勝つことを義務付けられているハイレベルな高校野球の一面を垣間見た気がしますが、ここには一つ大きな問題、というか誤解があることを気付かせてくれます。
今回は特に成長期における身体を大きくすることの是非について迫ってみます。
量なのか、それとも質なのか?そしてそこに至る過程と考え方が一つの大きなポイントになると考えられます。
あなたは果してお子さんが「どんぶり飯を何杯食べたか?」に意義を見出せまるでしょうか?
Contents
昔からあった大飯食らい!の習慣
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どんぶり飯○○杯食べた!しかし・・・
スポーツ科学が発達していない時代、とにかく腹がはち切れそうになるまで米(コメ)食べて身体を大きくしたものだ!という話はそこかしこで聞かれたものでした。
確かにたくさん食べることで栄養になり身体に吸収されて「血となり肉となる」という筋道はわからないでもありません。
スポーツ栄養学とトレーニング科学の発達
しかし現在はスポーツ栄養学やトレーニング科学が発達した時代です。
「どんぶり飯を○○杯食べた!」というようなメディアが飛びつきそうな格好の話題は現代科学からすれば大いに逆効果と言わざるを得ないのが現状でしょう。
沢山食べれば良い!というものではないのです。
前述の高校生の話であれば、身体を大きくして攻撃力をアップさせることが主な目的となりますが、高校野球、特に県大会優勝、甲子園出場を争うようなレベルの高校にはその傾向が強いと言われています。
大切なことは筋肉のサイズを大きくすることよりも筋発揮能力を高めることなのです!
サイズが大きいからといってそのスポーツに合った発揮能力が示されるとは限りません!
何をどれだけ食べたか! が問われる
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食事の質とは?
高校野球のこうした習慣を真似てかどうかはわかりませんが、最近では中学生の間でも体を大きくしたいために「どんぶり飯○○杯食べる(食べさせる)!」といったお母さんお父さんの考えがあることは大変な懸念材料です。
ご存知の通り食事はその量よりも質が大切です!
質よりも量に目がいくことは食べ盛りの彼ら(中・高校生)からすれば、そしてその子供を抱える親からすれば決して良くないことではありません。
重要なことは彼らの食習慣を管理するべき指導者や親(お母さん・お父さん)達が食事の質に目を向ける必要がある!ということです。
極端な話ではありますが、炭水化物(お米やパン)の摂り過ぎは脂肪の体内蓄積を招きます。
炭水化物は人が動くためのエネルギー源となるため3大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)の中でもその約半分(5割)を占めることが理想とされます。
しかしこうした極端な「どんぶり飯○○杯」という話となれば少々面倒なことになってきます。
「どんぶり飯○○杯」といった世界は栄養素の占める割合で炭水化物が半分どころか、7割・8割に達してしまうケースもあり、そうなると極端に偏ってしまうケースとなるでしょう。
過度の摂り過ぎの影響
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動きが・・・
食事はあくまでバランス良く!が原則です。
それを外れてしまう場合、体には様々な変化が起こりやすくなります。
余分の脂肪の行先は?
炭水化物は体内で糖質に分解されて筋肉や肝臓の栄養源となります。
また最も糖のエネルギー源となる脳へのエネルギー供給が妨げられることは避けなくてはなりません。
特に成長期の中・高校生であれば脳の神経回路の発達は8割からほぼピークに達し、様々な思考・感情等の脳機能が亢進して大人になるための基礎が作られます。
ただ余分な脂肪は体内で分解されずに脂肪の蓄積を招きます。
余分な脂肪の行先はお腹まわりやお尻・脚・背中・頸等、人のあらゆる部位へ供給されてしまいます。
余計な重り!?の悪影響
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動けない!?
特にアスリートであれば体幹部や臀部・腿裏等への余分な脂肪の蓄積は避けなければなりません。
なぜならこの部分は身体を支えると同時に動く方向への推進力や、捻る・伸ばすといった爆発的・立体的動作の根幹となり、その部分に余計な重り!?がつくことはシャープでメリハリのある動作に確実に悪影響を及ぼしてしまうからです。
お腹周りの肉付きがよくなってくればくるほど、投げる・打つ動作が鈍くなってくることは大人になれば誰でも経験するもの。
そうした状況がキャリアエンド(引退)を早めてしまう原因となることはまだまだ知られていないのです。
成長期の若いうちからそうしたマイナスの影響があるか否か?まだまだ研究段階ですが、最も懸念すべきはそうした「どんぶり飯○○杯?」の食習慣が後々のキャリアに影響を与えてしまうことを懸念すべきでしょう。
余剰糖質は「体のコゲ」をつくる!?
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炭水化物盛り沢山!?
糖化(とうか:SACCHARIFICATION)をご存知でしょうか?
糖がタンパク質や脂質と結びつくこと。血液中に余分な糖分があると、体内のたんぱく質や脂質と結びついて変性し、老化促進物質であるAGE(糖化最終生成物)を作り出す。
出典:https://goo.gl/ygcj9e
活性酸素(フリーラジカル)による酸化が「体のサビ」であるのに対し、糖化は「体のコゲ」とも呼ばれます。
糖化は細胞等を劣化される要因と呼ばれ、進行すると肌のシワやくすみの原因となります。
筋肉ではコラーゲン組織の変性(硬くなったり破壊されたり・・・)が起こり、弾性(形が変わろうとする作用に対し元に戻る)と粘性(一定の張力を加えていくと伸びる)能力が徐々に衰えます。
良いと思って沢山食べた炭水化物が体内に入って余ってしまった結果、脂肪に変化したり糖化現象が起こる要因に変わるのです。
こうした体内で起こる変化が動作にも直接影響することを知っておくべきでしょう。
ではこうした「どんぶり飯○○杯たべた!」を防ぐ対策はあるのでしょうか?
ゴール(目標)設定
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ゴール設定がすべての始まり!
もしあなたがプロ・アスリートやオリンピックの金メダリストになりたいと思うなら最も大切なことはなんでしょうか?
それはゴール設定です!
ゴールとはあなた自身の目標を設定することです。
『○○○○年の○○月までにこうなっていたい!あぁなっていたい!』ということです。
なぜ大切?ゴール設定
自分のキャリア(アスリートとしての)のピークを何年に定め、その時から逆算して必要な要素をひとつ一つ積み上げていくのです。
最終目標が決まってさえいればいつ?何を?どのように?設定すれば良いのかが分かってきます。
身長を伸ばしたい!身体を大きくしたい!と考えるならばあなたの(あなたのお子さん)の成長期のピークを知っておくことは当然必要です。
身長の伸びのピークや身体を大きくしたいと考えるピークは人それぞれですから、その時期がわからなかったり逃してしまうことは人生においての繊細一隅の機会を逸することにもなりかねません。
身長・体重を毎日(あるいは定期的に)測っておくだけでも重要な情報になります!
筋肉の硬さや張り具合を毎日触って確かめておくことで動きのチェックの基礎として使えます!
親からすれば子供とのスキンシップ(フィジカル・コミュニケーション)にもなるため、会話と共に強力なツールにもなるのです。
最終目標が決まり、そのためのプロセスを設定できれば、必要が要素や知識・技術を探すことになります。
ネットで調べることはもちろん、そこから専門家にコンタクトをとることだってできるでしょう。
こうした内容についてもしわからなければTM鈴木にご連絡(こちらに)を!
成長期の体作り、トレーニング、何をいつどのように!そしてどれくらい摂れば良いのか等、あなたの疑問にお答えします
成長期に合わせた課題を!
お子さん(選手)の成長期に合わせた、少しだけタフである課題(負荷=ストレス)を与えることが成長にとって最も必要な栄養素なのです。
運動(野球・サッカー等の普段取り組んでいるスポーツの他、体作り)・栄養・睡眠がうまく噛み合えば、体は自然に大きくなっていきます。
それが自然の摂理(人のカラダ)というものです。
無理矢理に体を大きくすることは後々の選手としての負担を増大させるだけでなく、引退後の生活習慣を乱してしまう大きな要因となるのですから。
まとめ
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アスリートの食事とは?
「どんぶり飯○○杯食べた!」という黒魔術!?は身体を変える際のキーワードになっている昨今の現場の状況について、プロ・アスレチックトレーナーの視点で解説しています。
体を変えることはあくまで自然な状況に負荷のかからない範囲で行うべきであり、“その時期”を逃さないよう普段からお子さんと向き合い、知識・技術の研鑽を積み、あなた自身の考え方を整理しておくべきでしょう。
お子さんと一緒に(親子で)最終目標をじっくり考え、設定することでその過程に必要な要素を選択でき、着実に遂行するためのモチベーションとなります。
必要なのはあくまで楽しく・美味しく・偏らない食事を心がけることであり、そうした明るく楽しい食卓がお子さんのキャリアのピークを持続させる要因となるはずです!(^^)!
TM鈴木