本格的な冬の到来と共に冬季スポーツも活況を呈してきました。
中でもフィギアスケートは冬季スポーツの花形でんもあり、日本の男子・女子とも面白い戦いが続いています。
しかし、今シーズンの浅田真央選手は驚く程苦戦しています。というがもうほとんど『もがいている』といってもいい状態です。
11~13に行われたフランス大会、浅田真央選手はショート8位、フリーは結局9位となり、総合でも自身初となる9位と惨敗といっていい内容でした。
いったい浅田選手に何が起きているのでしょう?身体の変調なのでしょうか?それとも・・・。
今回は自分自身とうまく折り合いを付ける【メンタルコントロール】法について、フィギアスケートを例にとりあげて観ていきましょう!
Contents
体力面は大丈夫?
浅田真央選手の得意な演技はなんといってもジャンプでしょう。
トリプルアクセルは彼女の代名詞となっており、『3回転半=(イコール)浅田真央』といっても過言ではありません。
しかしそのジャンプが跳べていません。
膝の調子が悪いとか、コンディションの問題もとり出されています。身体が大きくなり動きが鈍重になってしまった等と伝え聞く場合もありますが、本当のところはわかりません。
現在のアスリートはオフシーズン、オンシーズン関係なく、ストレングスコーチやトレーナーのもとで様々なトレーニングをおこなっています。浅田選手も通年でトレーニング計画を組んでいるはずですから、実際には基本的な能力であるジャンプ力や体力が落ちてしまって跳べないということは考えにくです。
もしフィジカルフィットネスの問題でないとすれば、ジャンプの技術的課題がこなせないか、体調(コンディションニング)か、はたまた精神的な問題のどちらかと考えられます。
技術面のスローダウン
「アクセルに入る際の助走スピードは?」、「着氷する際の姿勢は?」
しかしこれらは陸上でのトレーニングが十分効果を発揮し修正が可能な要素です。但しコンディションが良ければという条件付きではありますが。。。
トリプルアクセルでは通常左足で踏みきり3回転半しながら後ろ向きに右脚で着氷することになります。成功のカギはいくつかありますが中でもその回転は空中で無駄なく、しかも非常に速く回らなくてはなりません。ジャンプの頂点で完全に2回転(以上)していなければ着氷までの降下時間にあと1回転半することは不可能です。
因みに伊藤みどり選手はそのジャンプの高さには非常に定評があり、おそらくトリプルアクセルを成功させた女子選手では最も高い跳躍力(ジャンプ力)を誇っていたと考えられます。浅田選手はジャンプの高さもさることながら、他のトリプルアクセル成功者と比べその回転する美しさは群を抜いています。
「フワリ」と宙に浮いて「クルクルッ」と無駄のない動作で着氷するのが浅田選手。「バーン」と氷を蹴って「グルグルッ」と力強く回るのが伊藤みどり選手といったイメージです。伊藤選手の回転は非常に無駄が多く軸はかなりブレていましたが、それを高いジャンプと力強い回転で補っていたという印象です。
仮に膝に問題を抱えていたり、コンディションが高まらなかった場合、助走速度の低下やジャンプに移行するタイミング等がくるってしまい、この空中における回転も不足気味となり、結果として完全に回れない、または無理をしてしまって着氷で転倒といったケースに繋がります。
つまり、いくらトレーニングをしてもその効果がうまく身体を動かす能力に反映されない状態だったとすれば、良い成績を残すことは到底無理な話です。
心の中が【暗雲】状態!?
浅田選手のその高い技術を左右するのは精神的な要素かもしれません。コンディショニングでの【暗雲】状態が精神面をも蝕む状況を作っているとすれば、事はかなり深刻です。
仮にメンタルの問題だとすればその根本的な状況を改善しない限りは中々上昇は望めないでしょう。
精神的な要因といっても様々なものがあるでしょうが、TM鈴木は浅田選手の現在の心境から少し気になる点をみつけました。
それは【内なる自分】をコントロールする思考です。
戦うべき本当のライバルはだれ?
我々が一般的に考えるスポーツでの勝負とは、あくまで「自分」と「他人」との戦いです。
スポーツではもちろんのこと、ビジネスの世界でも他人との競争にさらされライバルに勝つことで自分を高めたり、位が上がったりするものです。それが実社会では望むと望まざるとに関わらず回避しがたい現実なのです。
しかし実はそういったビジネスやスポーツに関わらず世の中はすべて【自分との闘い】だということを認識できる人はそう多くありません。
特に勝負事では他人との“競争”を意識し過ぎてしまい、【内なる自分】に対するコントロールがきかない状態になる事が往々にして存在します。
これが不思議なもので、他人との勝負や、他人を意識しているうちは勝てないのです。【内なる自分】をコントロールすることこそ勝利へ道だということを理解できる人はそれこそ数える程しかいないでしょう。
知らず知らずに深まる心の闇
果して浅田選手の場合はどうでしょうか?
復帰してメディアを含めた周りからのプレッシャーも相当あるでしょう。それを真に受けてしまう性格も今はどちらかと言えばマイナスに作用するかもしれません。
小さいときから頑張り続け最大の目標としていたソチでも満足のいく結果を残せませんでした。心が折れたとしても当然で、でもそんな浅田選手をみて誰も文句をいう人はいないと思います。
もちろんメディアを含め辛辣なコメントをする人はいます。でもそこまで気にする程のことでもないことです。
正直、浅田選手の向かう先がどこなのか?それを彼女自身がわかっていないような気がします。出口がわからず真っ暗闇に向かっているとすればそれはとても危険な現役復帰の道となってしまいます。
目標もない状態で真っ暗闇に向かっていては結果など求めるべくもなく、それが仮に彼女自身ではなく他人によって用意されている道であったとすれば、ただ無駄な練習をして無駄な体力を使い無駄なエネルギーを注いでいるだけになってしまいます。
彼女自身が早くこのことに気づく必要がありますが、その点で彼女はまだまだ成熟した大人にはなりきれないのかもしれません。
外見に現れる心の闇
今回のショートプログラムの衣装や化粧方法、そして演技構成、まるでそう!ブラックスワンのような・・・。それならそれで構いません。その役に徹すればいいのです。
しかし彼女の天性の性格や持って生まれた朗らかな心は、どうもその役を好んではいない!のではないかとさえ思ってしまいます。
正直、似合いません。ブラックスワンが羽を羽ばたかせるかの如く両手を広げ手首から先をヒラヒラとさせている演技、彼女にそういったまさに“小手先”だけの演技は必要ないのです。
そしてそういった演技の確信部分、全体的な構成や選んだ音楽は彼女の全体像とはかけ離れたものになっている感じがするのです。楽調がなんとなく悲しいし、彼女の動きのテンポにも合ってないし、そんな状況下で両手両足を目一杯たなびかせ天女が天に昇るようなフワリと宙に舞うジャンプなどできるはずもありません。
絶対的な緊張を強いられる場面で、わざわざ手足が縮こまるような曲調の音楽を選ぶこと自体、首をかしげていまいます。
思えばソチでも、そして浅田選手の先行きを決した分岐点となったと考えてもおかしくないバンクーバーでも、曲調が彼女のイメージにマッチしていませんでした。
その場を『自分劇場』に変える力
荒川静香選手(当時)がトリノで金メダルを獲れたのは、あの音楽(トゥーランドット)の曲調が彼女にピタリとマッチしていたからです。フリーでは大きく伸び伸びと、両手両足を思う存分動かすことでメリハリがつき、まさに自分自身を大きく魅せられたことが勝因です。
最初は緊張、そしてその心の縛りをなんとか解き放ちつつ徐々にスピードとテンポがアップした演技は、終盤にとてつもない大きな動きで観客の度肝を抜き拍手喝采を浴びました!
当時の彼女の実力で金メダルを獲れると予想した人はほとんどいなかったでしょう。にも関わらず彼女は結果を出しました。選んだ音楽と彼女の性格やイメージがマッチしていたことはいうまでもありません。
彼女は“最高の結果”という【運】を彼女自身の手で引き寄せたのです。そういった意味で荒川静香選手はアスリートとして実に強い才能をもっていたと言っていいでしょう。
一方、残念ながら浅田真央選手は荒川選手程のように宙に浮いていて誰もが狙えるような【運】を引き寄せる才は持ち合わせていないようです。動く能力、つまりスケーティングのフィジカル面からすれば浅田選手のほうがずっと上で、荒川選手がどうあがいても太刀打ちできない程の差があるにも関わらずです。
取り巻く環境にも原因が!
残念なことに彼女は周りのスタッフにも恵まれていないように感じます。
誤解のないように言いますが、彼女を支えるスタッフのレベルは超一流です。コーチにしても振付師にしてもトレーナーにしても、あれほどの選手にをサポートするわけですからみんな優秀な人材なのでしょう。
しかしいくら優秀だからとはいえ、選手との反りが合わなくてはうまくいくはずがありません。浅田選手が前コーチであるタラソワさんと決別したのもそういった原因があったからではないでしょうか。しかし現在もコーチを務める佐藤さんや周りの人材も決して合っているようには感じません。
“今”を【楽しむ】という思考
正直今の浅田選手に平昌(ピョンチャン)オリンピックで金メダルをというのは無理な話でしょう。前述した先が見えない暗闇が明るくならないのであれば彼女自身の進路について大きな決断を下すべきではないでしょうか。
浅田選手がもし再度頂点に挑もうとするのであれば是非、【因果一如】を理解することが必要だと感じます。
【因果一如】と書いて「いんがいちにょ」と読みます。
一般的に「因果○○」とくれば、○○には「因果応報」や「因果因縁」等と思い浮かべますが、この【因果一如】とはいったいどういった意味なのでしょうか?
彼女が今すべきことは「努力(練習)することで良い結果がもたらされる」ということを考えず、自身のスケーティングを形作っていく過程を【楽しめる】ようにすることです。
それこそが【因果一如】の考え方なのです。
【因果一如】は禅の教えである思考法で、結果はすでに原因と一緒に育まれているという捉え方です。世の中、頑張った、努力したからいい結果が出るとは限らないのです。
煩悩とは「私はこれだけ努力したから、これだけ頑張ったんだから!」と次に起こる良い結果を期待しがちです。
しかしそうとはならないことが現実にはほとんどです。だとすれば目の前の現在できることを如何に【楽しめる】か、そして【ベストを尽くせる】思考にシフトし、結果にとらわれない生き方をすることこそ最善の方法ではないでしょうか。
浅田選手には今ある彼女自身が持つ思考を変える勇気と柔軟性を身に付けてほしいと節に願っています。
それこそが浅田選手がチャレンジする最も大切な“意義”なのではないでしょうか。
TM鈴木