リオ・オリンピックで大活躍した池江璃花子選手、日本女子水泳界に彗星の如く現れた東京オリンピック期待の星です。
長身且つキュートなルックスで可愛いと評判のこの現役女子高生、実は凄い才能を秘めたスーパースイマーなのです。
力強さはまだまだですが、長い手足を使ったとても大きく伸びのある泳ぎをしている池江選手、日本記録を連発する彼女の速さの秘密はどこにあるのでしょう?
幼少時代からの様々な運動や動きが、今の泳法や考え方につながっているのは間違いないでしょう。
現在5つの長水路(50m折り返し:2017/7現在)日本記録と3つの短水路(25m折り返し)日本記録を持つ池江選手、その秘めたる凄い才能の秘密について迫ってみましょう。
Contents
幼少期から培った大いなる才能

長い手足を存分に使える機能が備わる!
池江選手に宿る大いなる才能とはなんなのでしょう?
知っているようで実はあまり知られていないものの、この能力は幼少期に獲得する要素としては最も重要な要素です。
池江選手にはこの才能を十分体験し養える環境が幼少期にあったはずです。
身体を“大きく”動かすが基本
母親の影響もあり子供のころから姉や兄と一緒に、様々な遊びや運動に取り組んできた池江選手、遊びの一環として雲梯は自宅にまで設置するという凝りようでした。
我が子にどんなことをさせるにしても、最も大切なことは身体を大きく動かす・大きく使うような動きを日常習慣に取り入れることです。
実はこれができそうで中々できない!

自宅に雲梯の怪(^_^;)
池江選手の母親が知っていてそうしたのかどうかは別として、例えば雲梯や姉・兄と遊ぶことも、この大きな動きを身体に染み込ませるための手段だったのかもしれません。
身体を大きな動きを意識して日常にとり入れることで、彼女の水中での才能が一気に開花したのではないかと考えます。
大きな動作は関節可動域(動く範囲)が最大限広がらないとできないし、関連する関節に付く筋肉がしっかりと伸びなくてはなりません。
この二つの要素によって日常的に身体を大きく動かせるかどうかが決まります。
大きな動きは脳の運動野・感覚野と記憶野の結びつき(神経刺激伝達)を強固なものにし、技術動作の習得にも繋がります。
日常の “遊び” から大きな動きに着目
池江選手のお母さんが娘を楽しく遊ばせるだけでなく、身体を大きく動かすという考えを念頭において様々な刺激を与えていたのだとすれば、彼女の現在の活躍にも合点がいきます。
以下は乳幼児期でも行える大きな動作を生む遊びのひとつです!
アンバランスな状態で骨盤の前後傾斜をしながら、体幹を大きく動かしてもらっています。
日常の【遊び】の中に大きな動きを取り入れて洗練された動きを高めます。
TM鈴木はこうした【遊び】を通して子供の運動能力を高めるサポートをしています。
詳しくはこちらまでお問合せください。
ダイナミック泳法を可能にする動き

大きな動きの源は体の高い機能から!
一見手足を速く動かす方が速く泳げると考えてしまいがちですが、が実は大きな誤解です。
池江選手は優雅にゆっくりと泳いでいるように見えますが、それでいて実に速い!
そこには着実にしっかりと水を捉える高い技術があるのです。
『優雅に!ゆっくり!』
ゆっくり泳いでいるように見えても実は非常に速い!
気が付くとも隣のコースの選手とは身体半分の差がついてしまう。
それが池江選手の泳ぎの特徴であり、才能あるスイマーとしての証といえます。
腕を速く回せば回すほど一見速くは見えますが、水中への腕の入れかた(入水)が「バッシャーン!」では、せっかく増した勢いを入水時で逆に落としかねません。
入水の際には多少抑え気味で最も効果的な入水角で腕を水中に入れるべきで、彼女はそうした技術も既に一級品であり、だから人より速いわけです!
さらに入水直後からの腕を真っ直ぐ頭上に伸ばすスタイルは彼女の真骨頂ともいえ、幼少時から培ってきた身体を大きく動かす才能がこの瞬間に如何なく発揮されています。
最大限に伸ばした腕は長い腕をさらに長くして使えるよう機能しています。
リーチを最大限に生かす
肩甲骨の上方回旋(腕を真上に挙げるための土台となる肩甲骨の必須動作)が最大になる角度でしっかりと水をキャッチします。
実は肩甲骨の大きな動きを可能にするのが機能的骨盤前傾位:FAPTAによる脊柱の大きなしなりです。
脊柱が若い竹のようにしなるからこそ胸郭が連動して肩甲骨が大きく動く、その結果腕が尋常ならざる程の伸びをするというわけです。
あとは今彼女の最大の武器でもある水を上手に捉える技術(プルでのわずかな “ハイエルボー” とスムースなプッシュ&リカバリー)にしっかりとつながっています。
体格的特性

リーチ/身長比も世界トップレベル
スイミングは比較的、というか絶対的に長身で手足が長いことが有利です。
女子でもフェデリカ・ペレグリーニ、ケイティ・レデェッキー、カティンカ・ホッス―(敬称略)など180cmオーバー(前後)の選手は世界にゴロゴロ存在しています。
泳ぎに有利な体格!?
池江選手の身長・体重は公表170cm56kg。世界のトップと比べると正直体格差はどうしようもありません。
現在高校生の池江選手が今後どんなに伸びたとしても5~6cmがいいところ、あくまで希望的観測ですが。
池江選手が専門とするバタフライやフリースタイルでは、体格が大きなアドバンテージとなるのです。
この種目は技術はもちろんですが、身体周りの水をできる限り多くとり込んで、後方に如何に上手く押し出す(流す)かがポイントです。
だからこの2種目、特にフリースタイルで活躍する選手には特に長身で手足の長い選手が多く集まります。
でもこれってニワトリが先なの?それともタマゴなの?っていう話にもなりますよね。
手足が長いからクロールをやるのか?それともクロールやっていたらか手足が長くなったのか?ってことなんですが。
身長とリーチの関係

長いリーチは一流の証!
しかし池江選手170cmの身長に対し左右の手を広げた長さであるリーチ(ウイングスパンWing Span)は186cmです。
身長より15cm以上もリーチが長いことは、泳ぐ上では非常に有利に働きます。
ある数値を分母(身長)で割れば(除せば)相手との相対比較ができます。
リーチを身長で割れば他の同種目の選手との身長に対するリーチの割合がでるのです。
因みに池江選手のリーチを身長で割ってみると
186cm/170cm=1.094
この数値を仮にR/H値(Reach:リーチ/Height:身長)としましょう。
今のところ世界のトップスイマーのこうした数値はありません。
世界はおそらく身長はもちろんリーチはさらに長いはずですが、ことR/H値(リーチ/身長)なら、ウイングスパンが長い池江選手は世界のトップスイマー達と肩を並べるレベルです。
手足の長さと泳ぎの関係
手足が長くその長い手を上手に使いながら水の流れを足元に運べる技術があれば、おそらく過去のどんな偉大な記録にも引けを取らない!
池江璃花子選手を観ているとそんな感じがします。
バタフライもフリースタイルも彼女の泳ぎは水を捉える技術が非常に優れています。でなければこの2種目でこれだけ日本記録を連発できるはずがありません!
今後は腕の搔き方にみる『キャッチープループッシューリカバリー』動作をさらに洗練させることを念頭に水を捉える技術の精度を高めることが予想されます。
金メダルを狙う秘策

ノーブレスを阻む要素とは?
2020年東京オリンピックで金メダル獲得を目指す(おそらくそうでしょう!)池江選手にとって、如何に今持っている技術を高めるかが今後の課題となるでしょう。
ひとつには泳ぎをさらに洗練させること、そしてもう一つがブリージング(息継ぎ)かもしれません。
50mを無呼吸で!

課題のノーブレス:克服できるか!
池江選手は先日行われたレースで50m(フリースタイル)をノーブレス(息継ぎしない)で泳ぎきりました。
通常であれば1回または2回程の息継ぎでゴール!というところ、今回彼女が息継ぎをせずに泳いだのにはちょっとした訳があったのです。
特に50mという競泳で言うなら短距離種目では、息継ぎをしない方が断然速く泳げます。
息継ぎをするということは身体をローリングさせる必要があり、そうなると水の抵抗が増してしまうのです。
さらなる技術革新と体力アップへ
競泳においてローリングは必要不可欠な技術です。
ローリングとは頭部側から観た場合身体の中心軸を回転させることで、右向きで息継ぎする場合水底に正対していた身体を約45~50度右側に傾けることです。
特にフリースタイルではローリングしなければ息継ぎはできません。
しかしローリングすることは水の抵抗を増やすことになり、速さを追求するとどうしても足枷になってしまうというわけです。
そこで50mでは息継ぎをしないで水の抵抗を極力減らすことが考えられたわけです。
ノーブレスだと効率性の面では多くのメリットがあるということで、現在はなるべくノーブレスで泳ぎ切ろうとする泳法に変わってきています。
100m・200mの記録を伸ばすため
息継ぎに関しては例えば100mや200mでもその回数を減らすことが速さに繋がるのではと言われます。
ただレースの後半では疲労がピークに達するため身体の軸もブレやすくなり、泳ぎの効率性を考えると息継ぎの回数を減らすことは必ずしもメリットとはいえません。
さらに後半での息継ぎを減らすと筋肉や脳への酸素供給が減り、身体全体への負担も一気に高まるため中々難しいのが現状でしょう。
ブレスコントロール(呼吸数を減らす)と疲労がピークに達する終盤での体幹軸の乱れを瞬時に補正する技術は、2020年東京で金メダルをねらう彼女にとっての大きな課題でしょう。
その上で水の抵抗を如何に極限まで減らせるか!池江選手の正念場です。
彼女は50mを37回のストローク(腕搔き)で泳ぎます。
左腕から搔き始めて37回搔いて左手でゴールにタッチします。世界の一流どころも50mでは現在37回が主流です。
まとめ:

困難に敢然と立ち向かう姿勢
池江選手が幼少期から沢山の遊びを体験した根底には、身体を大きく動かすという考え(アイディア)があったのかもしれません。
雲梯等を含めた様々な動きの経験をすることで、身体を大きく動かす・使う技術が高まり現在の泳法にしっかりと生かされているといえます。
外国人とは多少の体格差はあるものの、機能的で上手な身体の使い方が水泳の技術の洗練に伴ってしっかりと発揮されています。
池江選手はこうした自分の体格特性や機能特性を最大限に生かした泳法で世界と戦える稀有な存在なのです。
もしあなたが我が子の運動能力を高めたいと考えるのであれば、様々な動きを体験させる習慣をつけ、その中で身体を大きく動かすような遊びやその環境作りを考えることが何より大切でしょう。
技術・戦術習得はその後でも十分遅くはないことを理解しておくと良いですよ(^_^)
TM鈴木

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