アスリートも一般人も(日本人全体)腿裏が非常に伸びにくく、動く時に使われにくいという事実を知りません。
でも伸ばしにくい理由・伸びやすくする方法がわかると動きが大きく変わりパフォーマンスが向上します。
そのためには腿裏ストレッチに関する従来の考え方を排除し少し工夫をこらした技術と実践の積み重ねが不可欠です。
そこでハムストリングと動きとの関係、その仕組みや実践法を骨盤前傾マニアの視点で紹介しましょう。
Contents
伸ばしにくい筋肉!?

ハムストリング・背中を伸ばす前屈は苦手!?
日本人の多くがハムストリングを伸ばすのが苦手、またはあまり好まないといわれます。
なぜ伸ばしたくないのか?そこには日本人特有の体型的課題があり、対処できない問題として認識されていたからです。
伸びにくい要因を一緒に探りましょう。
伸ばしにくいわけ
ハムストリングが伸びにくいと感じるのは、骨盤が前傾せずニュートラル(中間位)や後傾気味で腿裏がいわば緩(ゆる)んだまま伸ばそうとするからです。
筋肉がゆるんだままのストレッチと、ぴ~んと張ってテンションがかかる緊張状態から伸ばすのとでは、伸びる感覚が3割程違ってきます。
そこでハムストリングが適度に引っ張られた状態で伸ばすため骨盤前傾動作が注目されています。
ハムストリングを適度に引っ張り程よい緊張を生む骨盤前傾に比べ、骨盤後傾はびろ~んと緩むため筋肉の緊張する(伸びる)感覚が高まりません。
ニュートラル(中間位)でも前傾と比べればやはり筋肉は弛緩しやすく、ハムストリングの伸びる感覚を得るのは難しいでしょう。
この “感覚的な ”差がハムストリング・ストレッチの好みに大きく影響するのです。
伸びる個所でも好みが変わる
ハムストリングのどこが伸びるか?によっても好き嫌いにつながります。

筋腹からお尻付近は“好意的な伸び”につながる
ニュートラルや骨盤後傾(気味)の場合、膝裏付近が引っ張られるのに対し、骨盤前傾ならハムストリング中央部の筋腹がきちんと伸びます。
前者は細く筋断面積が小さい上、筋肉が腱に変わる筋腱移行部(MTU)のため筋肉(筋腹)そのものに比べると伸び率がほとんどありません。

これはやだぁ~!!!(汗)
腱は本来伸びる筋肉と違い、いわば伸びない紐を無理矢理引っ張っているようなものです。
本当に伸ばしたい箇所はこの筋腹とそれより座骨に近い筋腱移行部ですが、通常のハム・ストレッチではこの伸ばすべきポイントが見逃されてしまうのです。
同じ筋腱移行部でも座骨付近は筋肉の割合が多く柔軟性があり、なにより強靭でハムストリングの“バネ”を効かせて動けるポイントです。
ハムストリングの伸びを座骨付近で感じながら動ける!
これが走る・跳ぶ・打つ・投げる・泳ぐといった動きの質を今より少なくとも3割高められるコツです。
伸びやすくする工夫

骨盤前傾を取り入れた伸びを!
ストレッチはもちろん大切ですが、そのベースとして体の構造・仕組みを理解した上での創意工夫が大切です。
伸ばすべき具体的なポイントをターゲットにしないストレッチでは、腿裏にとって最も “悦ばしい” 伸びを得にくく、伸びる感覚が好意的に高まってくれません。
先入観:認知バイアス
ご存知でしょうか?
筋肉を伸ばそうと思うと自分の目線がいきやすいところ、つまり良く見える部分を動かして(意識して)ストレッチしてしまうことを。
腿裏なら立位や長座位で上半身を倒す、上体や顔を太もも前に近づけるといった動作で、腿裏を伸ばすことでしょう。

顔を近づけるか!太ももを近づけるか!
でもそれでは膝裏へのテンション(引っ張られる力)が高まるだけで、バネのある動きに必要な筋腹から座骨付近(筋腱移行部:MTU)の緊張は感じられません。
骨盤前傾をとり入れず体への介入を阻んでいること、つまり先入観によって太腿に顔を近づけるか(顔を太腿に近づけるか)という考えでしか前屈しないわけです。
こうした日常の考え方に依存する思考を認知バイアス※1)といいます。
※1)日常に存在する常識・先入観・固定観念を基礎とする考え方・思考
先入観を排除&新たな工夫を
前屈は顔を近づけるか/腿を近づけるかだけでなく、その最中に骨盤を前傾させれば(本来伸びると本当に)通常とは違う気持ち良い場所がストレッチされるのです。
また我々が持つ常識には以下の固定された観念もあります。
①【鍛える=縮める】⇔トレーニング
②【緩める=伸ばす】⇔ストレッチング
多くのアスリートはこうした感覚でトレーニングとストレッチを捉えています。
ハムストリングなら縮めることでトレーニングになり、伸ばすことでストレッチング効果が高まるという思考!しかしそれは明らかな誤解です。
脚をある角度で固定したまま骨盤の角度を前傾にしていくことで、座骨付近への伸展ストレスがかかることを体感すればこうした考えは変わるはずです。
先入観をとっぱらわない限り工夫は生まれません!
まずは体感してみることが必要でしょう。
骨盤前傾で腿裏を伸ばす
伸びやすくなり伸びを好意的に感じたいなら “いつもの” 顔を近づける/太腿を近づける思考(腿裏ストレッチ)は一旦排除しましょう。
その代わりに腿裏が緊張する股関節角度のまま骨盤をすこし前傾させ、座骨付近への伸張ストレスが加わるようにするべきです。
膝を伸ばし気味にしながら骨盤を前傾させて股関節を曲げていく!すると脊柱にアーチ(弧)ができて腿裏座骨付近が徐々に伸びていく感覚を得られますよ!(^^)!

脚を固定したまま骨盤前傾操作を!
脚を顔に近づけたり体を倒していくのではなく、腿裏がピーンと張るような位置で骨盤を前傾させるという“工夫”でハムストリングを伸ばす!
体をコントロールすることが必須のバレリーナは骨盤を含めた体幹の動きを敏感にわかるから、多くの動きの中で骨盤の(傾き)角度や体幹との関係を凄く意識します。
ゆっくり/すばやい動き・力強さ/柔軟性のメリハリが明確にでるのはそうした“コア”への働きかけと動きを察知する感覚に優れているからできる芸当なのです。
このアイディアを知っている/実践できるかどうかでスポーツや日常の動きに大きな差がでる!つまり思い通りに動ける体に近づくわけです。
伸びを感じると起こる成果

ハムストリングの伸びを感じられると変わる静的・動的姿勢
ハムストリングの伸びを動きの中で感じられるようになれば静的(動かない)・動的(動いている)姿勢もおのずと変わってきます。
ベースとなる基本姿勢が変わるにはコアの意識が働く必要があり、それこそが競技力を高めるための『思い通りに動く体』に近づく方法なのです。
コアへの意識付け
ハムストリングの伸び縮みは骨盤を介してお腹・胸郭の引き上げ・引き締め(=腹腔圧/胸腔圧)といった“コア”コントロールにも深く関与します。
ハムストリングに継続的・断続的な緊張があると、骨盤がニュートラルまたは後傾しやすくなり腹直筋への緊張も高まります。
この場合、一般人だと股関節伸展がおこり下腹部が前にでるいわゆる「ぽっこりお腹」等の不良姿勢が生じるし、アスリートなら表層の腹直筋だけを使う姿勢になりかねません。
また骨盤が後傾になる(傾く)ことを本人はもちろん自覚できない!つまり骨盤の傾き角度(が甘くなること)についてそれだけ鈍感になってしまうわけです。

このやり方ではハムストリングの伸びを感じられない!?
ハムが緩んでいて縮まらない場合も同様で、お腹の圧力コントロール(力の入れ具合)が効かずスポーツで必要な体幹機能が引き出せません。
腹腔(ふくくう)は上下動する筋肉:横隔膜を介して胸腔とつながります。
ハムの緊張や緩みは骨盤腔を含めたコア(体幹)全体のコントロールの消失を招き、スポーツ動作に必須となる“コア感覚”を低下させてしまうのです。
コア感覚は体の接触(フィジカル・コンタクト)や不安定な状況下でのバランス維持、さらにバット・ラケット・クラブ等からボールへの力伝達(エネルギー移動)に深く関わります。
コア・コントロール
ハムストリングの緊張や全体的な緩みで伸縮能力が妨げられると、下腹部・上腹部また胸郭といった体幹全体のコントロールが効かなくなるわけです。
だから腿裏筋もお腹も頭上にピーンと伸びた状態を維持して体を動かせることが大切というわけです。

腹空圧が高まったまま動くにはハムの程よい緊張が欠かせない
例えば持ち上げる動き、一般的に腹筋群を収縮させ背中をまるめる “からだ使い” ですがこれだと理想的な『コア意識』は高まりません。
本来骨盤前傾で腹直筋を伸ばしたまま腹腔圧を高める意識が(感覚)でないと、地面から得た力を手や足を介して外にロスなく伝えることはできません。
“コア意識”が働かないと静・動どちらでも体の安定性が確保できず、また力の伝達が上手くいかずキレやスピード・クイックネスが生まれないのです。
地面からエネルギーをもらって体を支持・安定させ、その力を末端である手や足にロスなく伝えることで競技能力はアップします。
コアをコントロールできないと体幹に力をため込んで腕やその先のスイングでラケット・クラブ・バットでボールに力を伝える感覚が鈍るというわけです。
伸びる意識を高める
ハムストリングの伸びを感じやすくするには骨盤の傾斜角、具体的には骨盤前傾させながら体感全体を伸ばす!いわば体の技術的な使い方を習得する必要があります。
そこでおすすめするのが今より+5度骨盤を前傾させる骨盤前傾ルーティンです。
今やっているスポーツや日常での動き・トレーニング・ワークアウト等を+5度骨盤前傾にして行う習慣です。
もちろんそのベースとして普段から骨盤を前傾させて動く感覚を身に付ける必要があります。

ツブツブfitに“のる”ことで骨盤前傾でハムストリングをストレッチ可能
パワーコンディショニング・ギア『ツブツブfit』の上に “のる” ことで骨盤前傾しながら体幹を頭上に伸ばす感覚を身に付けていくべきです。
詳しくは以下のサイトをチェックしてみましょう。
骨盤を前傾させながらハムストリングを伸ばす独自の発想でハムストリングがいつもピ~ンと張って動きの準備OK状態を創り出すことが可能です。
まとめ:

ハムストリングの“伸び”を感じながら動けることが大切
▼ハムストリングは日本人の体型的構造上とても伸ばしにくい筋肉のひとつ!しかし先入観を排除し+5度の骨盤前傾という工夫を加えることで好意的な伸びにつながる
▼ハムストリングが伸びやすくなると動作中の力の伝達がロスなくスムースになり、動きやすさやスイングスピード・アップなど競技能力に貢献する
▼ハムストリングの好意的な伸びを獲得するベースとして+5度骨盤前傾でストレッチできるパワー・コンディショニング・ギア『ツブツブfit』に“のる” ことは有効となる
TM鈴木