クロール(自由形・フリースタイル)が上手に思い通りに泳げると、スイミングはとても楽しくなります。
しかし子供はいざプールにはいると、そのゴールまでには実に多くの壁があることに後々気付くことでしょう。
ではクロールを上手に!スイスイ泳ぐためには、子供やその親にとってどのような視点が必要なのでしょうか?
当ブログでは幼少期のお子さん・お母さん・お父さん向けに、クロールが上手にスイスイと泳げる3つのコツや、水中観察と伝え方の重要性にフォーカスします。
3つのコツを親子で共有しお子さんのさらなる気付きに繋げられれば、泳ぎは劇的に変っていくことでしょう!
対象者:子供5歳~、親、コーチ、指導者
キーワード:クロール 泳げる 見かた 伝え方
Contents
大きなストローク

大きく伸びやかな動きがス~イスイにつながる!
3つのコツを身に付ける前に水中で体を「伸ばしきる」息を「吐ききる」という、2つの習慣を理解することが大切です。
この2つをたくさん体感できると水中での大きなストロークの実現に大きく近づき、その後の泳法習熟度が格段に伸びていきます。
伸ばしきる勇気
水中で如何に体を伸ばしきれるか!を突き詰めていくことは、泳ぎをマスターすること以上に大切です。
伸ばしきる癖をつけるための工夫は普段の遊びの動作や日常生活等、様々な場面で存在します。
伸ばしきるとは突き詰めていえば大きな動きです。地上でもそして水中でも大きな動きができれば幼少期の運動能力としては十分といえるでしょう。
例え4泳法ができたとしても、こじんまりとまとまった動きでは記録は伸びにくいし、機能性という意味からも運動効果には繋がりにくいかもしれません。
リラックス(程よく力が抜けた状態で)しながら大きな動きで泳げれば、スイミングの3つのコツをマスターする一歩手前といってよいでしょう。
伸びるのは全身ですが具体的には、体幹といわれる胴体部分を意識的に伸ばせることが重要なのです。
別名コアとも呼ばれ、下腹部(下っ腹)の奥に適度な力を入れることで、その伸びる感覚を水平に維持し、スイスイと進んでくれるストリームライン作りに役立ちます。
コアのこうした伸びは全身のリラックスにもつながり、肩から腕、そして骨盤・股関節から脚にかけての伸びやかな、そしてしなやかな動きの習慣が身に付くのです。
鼻から全部出す

鼻から全部ブフォ~~~ぐぁがががが~と吐き出す
ここで必要なのはクロールで行う横向きブレスではなく、水中で息を完全に吐き切る習慣です。
クロールを含めスイミングは水面で口から吸うので、水中では鼻から空気を全部出しきる習慣を心掛けてください。
肺に溜まっている空気を水中で最後の最後に鼻から、「ブクブクブクブク・グゴォ~」という感じで全て出しきって水面に浮上しましょう!
体の中にある空気を全部出し切れば(死んでいない限り)、水面で勝手にたくさん吸ってくれます。
呼吸の強弱や水中で吐ききる感覚を自分の意志で身に付けることが重要なのです。
もっちは小さいころからこうした呼吸法をボビングを用いて勝手にやっています。今でも泳ぐよりボビングの方が得意なのはちょっとご愛嬌ですが(^_^)
大きなストロークに繋がる要素「体を伸ばしきる」「息を全て出しきる」を実践していきながら、次はクロール上達のコツをみていきましょう!
さらにこうした視点に加え、親としては常に側で一緒に泳いだり地上・水中の両方から観察しながら、3つのコツを子供にわかりやすい言葉で伝えることが大切です。
ストリームライン

えんぴつをイメージ:ストリームライン
水中で最大限に体を伸ばせるかは上手なストリームライン作りに役立ちます。ちゃんと体を伸ばせているかどうかをどうやって感じてもらうかにフォーカスしましょう。
TM鈴木オリジナルの変形ストリームラインは特におすすめで、実際「すいすい」と水面をまるですべっているように進める方法なので是非試してみてください。
どうやって感じてもらうか!
ストリームライン(伏し浮き)の基本は、まずこの言葉の意味をどうやって理解してもらうか?子供が理解できる言葉で伝えられるか!が重要です。
TM鈴木の奥様はもっちにストリームラインをやってもらうとき、「えんぴつやって!」と言っています。
TM鈴木はほぼ同じなのですが「槍(やり)やって!」といいます。
えんぴつでも槍でもどちらでも構いませんが、しっかり伸びる感覚でギュンと水中を進んでもらうためには、「えんぴつでここ(自分の体の一部を示して)ブスッ!と突き指して」といったりします。
体を伸ばしきる感覚とストリームライン作りの基礎として、是非この「えんぴつ」を親子で試してみては如何でしょう。
変形ストリームライン
クロールでの息継ぎ直前姿勢をTM鈴木は「変形ストリームライン」と呼んでいます。
右側での息継ぎなら左腕をギューッと進行方向へ伸ばして体を約45度近く傾けるローリングまでの状態を現します。
では「変形ストリームライン」のやり方を説明しましょう。
- 顔を水底に向けた従来のストリームライン
- 右手は水をかくように下から脇へ
- 同時に左腕をギューッと伸ばしながらバタ足(基本姿勢)
- 骨盤を起点に体を45度傾けて息継ぎ
- キックを打ち続けながらス~イスイと進む
- 基本姿勢に戻って3から繰り返す
45度傾けたままバタ足で進んでいく場合、ずっと息継ぎ状態を維持するのもOKです。
最初は息継ぎ直後に体が一瞬沈むかもしれませんが、細かいキックを続けることで力が抜けてリラックスできれば体は自然に浮いてくるので、その後の楽なブレスに繋がります。
この
- 片手伸ばしストリームライン
- 45度ローリング
- 細かいキック
- 自然なブレス
をお子さんが「やってみたい!」と思えるように上手に誘導してあげるのもお母さん・お父さん、そして指導者の役割です。
効果抜群!
あくまで主観ですが1~4までの4つの動作を一度に行うため、当然のことながら最初は上手くできません。
しかし慣れてくると水中での片手伸ばしが全身を使ってできる安定感に変わり、それまで余裕がなく無理矢理気味だったブレスを、スムースなローリングでこなせるようになります。
45度ローリングは最初顔だけをあげてしまいがちですが、息継ぎ側の骨盤をクイッと捻じることで体幹全体を傾けることができるはずです。
この「骨盤クイッと」をイメージできるようお子さんの骨盤を下からサポートしてあげることもステキなことかもしれません。
ローリング姿勢をとる瞬間、水底(下)側のわき腹に手を添えてわずかに支えると、呼吸方向に曲りやすい体が真っ直ぐになって浮力をコントロールしやすくなるはずです。
キック

しなるキックのけり方は?
バタ足の最も大きな目的とは、体を水平(面)に保つためのサポートをすることです。
多くのレッスンではいまだにバタ足は「大きく・強く」と言われ、強く打てばより速く進むという一種の固定観念があるのは否めません。
キックの目的
本来クロールにおけるキックは、腕を水中でかくことで得た前への推進力を維持する、つまり下肢が下がってしまうことで増えてしまう水の抵抗を軽減することにあります。
推進力を得るには上半身のストローク8割、キック2割という比率も的を得ているのはこうした理由からでしょう。
つまりキックによって前への推進力を得るというより、脚部が下がって水の抵抗が増えないようにするためです。
キックを含めたストローク全体で体が水面に対して常に水平を維持することが大切なのです。
もっちが通う大手スイミングスクールでも、バタ足練習では「大きく・強く」という指示は飛び交っており、推進力を主として指導する現実があることは否めません。
しかし当事者である娘は元々コーチの指示を聞かないので、バタ足の目的やその重要性については正に他人事です。
それが是か非かはさておき、彼女のバタ足は激しくないので頭は揺れず、その代りバタ足で推進力を得る泳法になっていません。
以上のポイントを踏まえ、初級者のキックは以下の目的で「細かく」蹴ることを心掛けます。
注1)但し泳ぎをさらに上達させるためには「細かく」にプラスして「大きく・大胆に」と、変化をコントロールするキックが必要となることも忘れないでください。
バタ足で使う筋肉

脚の根元は“へそ”にあるよ
本来バタ足で使われるべき筋肉は、体の深部にあって脚の付け根から動かす中心となる大腰筋がその役割を担います。
大腰筋が使えると「ヘソから下が脚」という感覚が生まれ、骨盤から動きが始まり足元に行くにつれて波状の徐々に強くなるしなやかなキックに変わります。
しかし大腰筋を使う感覚を得るのは非常に難しいため、多くは太腿の前にある大腿四頭筋を使うキックとなってしまうのです。
大腿四頭筋を使うとまるで丸太棒を縦に無理矢理動かすような感じになり、打っても中々前に進まず非効率でメリハリの効いたしなやかなキックにはなりません。
「ゲゲゲの鬼太郎」にでてくる「一反木綿」のように、お腹から下がひらひら動くのが理想で、空中を浮遊しながら進むイメージをそのまま浮力のある水中で実践するとよいでしょう。
大腰筋を使った脚の根っこからけるキックのコツは以下の通りです。
また足の付け根が股関節ではなく骨盤にある!イメージづくりには、以下のような動作を普段からお子さんと楽しみながら繰り返すと良いでしょう。
骨盤が脚より先に動き出すようになるとキックだけでなく陸上での走りや他のスポーツ動作が大きく変わります。
是非、試してみましょう!
大胆にける
それではTM鈴木が考えるキック・チャレンジについて紹介しましょう。
基本的にはストリームラインでのキックがベストですが、慣れない場合はプールの端っこを両手でつかむ(進まないけど)か、ビート板を使用してください。
- 顔を水中につける
- 体をしっかり伸ばしたストリームライン
- 足先を軽く内側に・脚全体を内股気味に
- 最初は細かくよりゆっくり大きめにキック
- 吐きったら顔を水面にあげる
尚、ビート板を使う場合でも呼吸する以外はお顔を水面につけたほうがよいですよ。
4.のイメージは各々違いますが、あえて言うならひとかたまりの水をとても幅広いイメージを持った足の甲で下にグインと押し下げるような感じです。
親指を内側に向けると脚全体が自然に内股気味になるので、足首をムチのように扱えしなりを生むキックの感覚が生まれます。
逆に足首を固定したり、足先が外側に向いてしまうと脚全体が動き「強い」けりになってしまいます。
しかし最初は両方行ってどっちが疲れないのか!その違いを身を持って感じとることも大切なのかもしれません。
ブレス

傾きと一定以上の速度がカギ
理想的なストリームラインができればどんな状態にせよブレス(息継ぎ)で躓くことはなくなります。
水面に無理矢理顔を突き出すことなく、滑るようにス~イスイと水面を進みながら、ついでに息継ぎ!といったブレスのコツにフォーカスしてみましょう。
息継ぎで重要なこと
大切なことはなんといっても水中で進むために十分な空気を取り込むことです。そのためには十分な余裕をもったブレスのコツをつかみましょう。
息継ぎがうまくできない理由はいくつかあります。
- 水中で十分息を吐いていない
- ローリングがうまくできない
- 水面から顔を出す十分な時間を確保できない
- 速度が一定以上に達していない
もっちと一緒にスイミングに関わるようになって初めて気が付いたことはたくさんありますが、中でも 4.については改めて気付かされました。
特にクロールに慣れていない人は、泳ぐ速度を維持できない(ある一定以上にすることが難しい)ため、ブレスのためのポジションをキープできないという要因が多々あるようです。
実は1・2は慣れてくれば子供でも十分対応できますが、3は4と相互に関わるため、まずは一定以上の速度アップを目指すことが余裕のある息継ぎをするコツと言えるでしょう。
速度アップの要素
一定以上の速度に必要なのが先に示したストリームラインとキックです。

大きく余裕のあるグライドが十分な呼吸のカギ
まずは分割したストロークそれぞれとどの部分で速度を維持できるかを確認してみましょう。
- エントリー(入水)
- グライド
- キャッチ
- プル
- プッシュ
- フィニッシュ
- リカバリー
クロールの場合、一連のストローク(腕の動き)で最も前方への推進力が高まるのはプル、その勢いをロスすることなくプッシュからフィニッシュに繋げます。
フィニッシュと同時に逆側の腕がエントリー後のグライドに移行し同時にブレスします。
息継ぎが右の場合で考えてみましょう。
安定したストリームラインなら左腕のグライド時に十分な速度を維持できて、余裕あるブレスにつながります。
そのためには直前の右腕で推進力を高めるプループッシュ期で如何に一定以上のスピードをキープできるかが重要なのです。
本来の小刻みでしなる大腰筋を利用したキックと、ブレの少ない上半身のグライド(片手ストリームライン)によって、十分な速度を得られれば自然な息継ぎに繋がります。
息継ぎのコツ
息継ぎで顔だけ向けて水面に出すようにすると水面に対する体の平行面がくずれてより抵抗が増すことになります。
ブレス側の腸骨をクイッと捻ることで体全体がローリングし結果的に顔が下斜め横を向くという形がベストです。
スムースなローリングのため、息継ぎとは反対側の腕のグライド(伸びきる動作)をしっかりと効かせるイメージが大切でしょう。
グライド時に前に出した腕側の肩を “いれる” ようにすると、「骨盤クイッと」との相乗効果により、さらにローリングがしやすくなるので是非、試してください。

頭に当った水の流れが口元に凹みをつくる
造波抵抗によってできる波は、頭の丸みにあたることで息継ぎする顔の直前で口元に水流の凹みができるため、45度ローリングができれば自然に口元に空気が入ってきます。
自然な息継ぎのためには是非、この知識を頭にいれながら3つのコツに楽しくチャレンジすると良いでしょう。
まとめ

3つのコツを伝えやすくする観察の重要性
クロールでとても大切なコツは3つ(ストリームライン・キック・ブレス)あります。
しかしそれを身に付けやすくするためには、前段階で体を「伸ばしきる」動きと水中で空気を「すべて吐き出す」呼吸の2つが必要です。
最終的に必要となる3つのコツを楽しく身に付けられるよう、体の使い方と呼吸の仕方の2つを、お子さんがしっかりと理解できる言葉で伝えながら、是非一緒に泳いであげてください。
一緒に泳ぐことで伸びる感覚や息の吐き方を間近でしっかりと観察できて、よりわかりやすい伝え方に繋がることはいうまでもありません。
TM鈴木