特定球種SFFだけが肘の故障に繋がるの?独自視点で考察~「投げる」行為そのものに大きな負荷が加わる事実を知るべし~

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大谷翔平選手がロスアンジェルス・エンジェルス(LAA)に加入しセンセーショナルな盛り上がりを見せているMLB、二刀流としての活躍は海の向こうでも大きな話題です。

日本では松坂大輔投手(中日)が巨人相手に550日ぶりに1軍マウンドで先発、5回3失点(自責点2)とまずまずの結果をだしています。

この両者はプロ・アスリートととして大きな課題を抱えており、一方は二刀流がもたらすマイナス影響としてのケガのリスク、他方は既に負った肩や肘の状態がもたらすパフォーマンスの良し悪しです。

投手につきまとうケガのリスクについて、専門家がその要因を様々な角度から検証はしているものの、これといった決め手にはいきついていないのが現状です。

当ブログではアスレチック・トレーナーとしての視点で投手のケガの要因に迫り、その予防法についても独自考察から導き出されるアイディアを提案しています。

常識だけでみても解決策は中々見いだせないことを考えれば、違った方向からの “眼” を持つことの必要性にもフォーカスするべきでしょう。

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スプリッター、その特徴を知る

完全には挟まないことが鋭い落ちに繋がる!?

因みにですがMLBでは縦に落ちる系統の変化球であるスプリッター(SFF:Split fingered first ball)を “デスピッチ” と呼ぶそうです。

しかし日本では別名「フォーク・ボール」や、それより多少浅く握る「スプリット」が“悪役”と呼ばれることには、少々違和感を覚えてしまうのはTM鈴木だけでしょうか。

スプリッターの定義

抜く!?という表現は妥当?

フォークとスプリッターの定義はどちらかと言えば曖昧で、握りの深さの違い(前者:はさむ/後者:指を開いて握る)を指摘する向きもありますが、大差はないと専門家の見解です。

投げる時も双方とも手首を固定するし、ボールの回転数に関してもフォーシーム(直球)に比べて格段に少なくなります。

回転しにくい(しない)から揚力(上に持ちあがる力)も加わりにくく、ボールに空気の抵抗が加わって沈みやすくなるという理屈です。

ポイントはストレートと同じ速さで腕を振ることで、つまりボールスピードが上がれば上がる程ボールはより打者の手元で急激に沈むことになります。

因みにストレート(フォーシーム)もバックスピンをかけて揚力を得ることから変化球に分類されてもおかしくはないとある専門家が言うほどです。

握りによる感覚の変化

スプリットが肘を痛める理由として、ボールを指で挟みながら手首を固定して投げるという独特の投法によるかもしれません。

さらに固定気味にした手首の形を維持しようとするため、コッキングから加速、そしてリリースに至るまで肘内側は過剰なストレスに晒されます。

さらに4シームと比べた挟んで握ることの不安定感は、通常ボールに添えるだけの薬指・小指での安定機構を強いられるため、これまた過剰ストレスを受けてしまいます。

結局2本の指で挟むと特にMLBのボールが滑りやすいという特徴があり、しっかりホールド(掴む)感を出して安定したスプリッターを投げるため第4・5指での過剰な補助が欠かせないことになり、それが肘内側の内半モーメントを高めてしまう要因です。

また拇指(Ⅰ指)を補助している薬指に近づけようとする拇指屈曲によって肘に繋がる長短拇指屈筋へのストレスも高まります。

現在はスマホ肘という名称もありますが、親指でスマホをしっかり握り過ぎても肘の内側に負担がかかるのと同じ理屈です。

平均球速に大きな違い!

「悪魔のような!」と米メディアが絶賛した大谷投手のスプリッター(本人曰くフォークと呼びますが・・・)はなぜそれ程効果的なのか、秘密は彼のスプリットの平均球速にあります。

その最高球速は日ハム時代に記録している151km/h、平均でも140km/h台後半をじゃんじゃか出していて、これを一時期スプリッターを決め球にしていた先輩である田中将大投手の平均球速(2017年 140km/h)と比べると6~9km/hもの違いがでます。

スプリットは球速が上がれば上がる程 打者には直球との判断が付きにくく、さらに手元で“鋭く” 落ちるため一層打ちづらく、だからこそ “魔球” と称されるわけです。

単純比較はできませんが、仮に現状でのスプリットの「打ちづらさ」を比較すれば、大谷投手のそれは田中投手の“武器”を凌駕するといっても過言ではないでしょう。

デスピッチ:本当に悪者?

投球動作を観る:各ピリオド

ところがこの「スプリッター」、米メディアはもとよりMLBに関係者もその多くが肘を痛める通称「デス・ピッチ」として、投げるのを回避(投げ過ぎ含)するよう指摘しています。

SFFは肘を痛める危険性がある!いや、○○のほうがSFFよりケガをしやすい!いったいどっちなんだ???と言いたい程、実のところ投手のケガの要因に決定打はありません。

スプリッターだけじゃない!?

加速期:この肘の動きを観て普通に見える人はいないのでは?

様々な議論がある中、TM鈴木はカラダや動きの仕組みを知る立場から、投球加速時における肘を中心とした腕の動きに注目しています。

投球動作は各ピリオド(期分け)に分けることができ、肘の構造に最も大きな影響を及ぼすのはコッキング後期~加速期(acceleration period)にかけての腕の動きです。

この間は(右投げの場合)ボールリリースまでにスイングが最大速度に達し、しかも外旋といって上腕骨を外側に捻じる力が最大域になります。

最大加速と外側方向に向かう捻れによって肘の内側には外側後方に引っ張られる「外反ストレス:」が発生し、その “負荷” はモーメントとかトルク(捻じり力・力矩:りきく)と言われ机上で数値化することが可能です。

壁に固定したゴムチューブを持って投げる動作をするとき、前方へ腕を振ろうとすると胴体⇒上腕⇒前腕という感じでそれぞれの部位が順繰りに前に出ていくはずで、プロの投手はそうした力に肘の動きを上手く適応させて投げているわけです。

投げる度に!肘への外反モーメント

外反ストレスとは?

上記の画像をみればわかりますが、体が前にググッとでるのとは対称的にスイング腕は後方に残り、まるでゴムパチンコのようにおもいきり後方に引っ張られた後、時間差で一瞬の後に腕が加速します。

これはプロの投手だからこそできる芸当で、このシーンが正に“ムチのしなり”動作となり、150km/h超の球速を生み出しているわけです。

しかしその“しなり”は同時に肘関節の内側が強制的に開き、骨同士をつなぐ靭帯が強い力で外側に捻じられながら引っ張られる外反モーメントを大幅に増加させる要因ともいえるのです。

つまりプロの投手ならどんな球種を投げようとも肘関節に加わる外反ストレス(モーメント)は避けられず、ましてや160km/hを投げるならそのストレスは尋常というレベルを遥かに超えたものとなるわけです。

一定の方向から後方への大きな牽引力が加わる

プロレベルであれば投手には1球投げる度に相当のストレスが加わってくるわけで、ことさらスプリッターだけが悪役扱いされるのは如何なものか!とも感じます。

確かに人差し指と中指で挟んだまましかも手首を固定しての投球は他の変化球とは根本的に異なり、肘の内側にかかる負荷は相応のレベルになるでしょうが、それを防止する術を業界で探すことなく『投げるな』というのはプロ、しかもMLBがとるべき行動規範ではないでしょう。

重要な球種ごとのスピンレート

体と動きの仕組みを知る立場としては、投げる際、如何に非効率的な投球を回避するかが重要で、そのポイントは加速時での投球腕のスイングスピードです。

例えば回転数(spin rate)、これはボールが指にしっかりかかるかどうかで決まってくるため、例えばボールを置きにいった投げ方やミスピッチでは関節の負担は増大することになり、パフォーマンスは二の次となってしまいます。

腕を素早くしっかり振ることはボール(の縫い目)にしっかりと指がかかることにつながり、それが球種によって理想的な回転数を生み出す要因なのです。

腕をしっかりと振る、それによってボール速度が増すわけですから、そこはもう基本中の基本なわけで、振りが鋭く速くなって初めて指でボールを弾いたりといった、いわゆる小細工が功を奏するわけです。

どの球種を回避するか(投げないか)というよりボールに着実に指がひっかかり、球種毎の平均回転数をしっかりと維持すること、つまり投げる動作の基本を反復できる体の操作性が後々のケガのリスクを回避できる有効な対策なのです。

高めない工夫:肘外反モーメント

スローイングアームでの外反ストレス

決め球として、そしてストライクカウントを増やし、さらに名前以上の心理的効果を高めるスプリットを上手く配球に加えることは、投球の幅を広げる意味でも重要な課題です。

そこでスプリットを回避するするのではなく、スプリットを含めたピッチングでの肘外反ストレスをあげない工夫に迫ってみましょう!

機能的に外反ストレスを軽減する

ボールを持つ掌の向きでMERでの肘外反ストレスは大幅に低下する

肘の外反ストレスを増やさないためには、加速時の上腕骨最大外旋位(MER)をボールリリース直前まで維持するのが得策です。

MER維持の指標としてボールを持つ手の向きを(右投手の場合)、加速最終域のリリース直前まで、1塁側ベンチ方向(内側斜め下方)に向けておくことでです。

加速期のMER維持であれば肘内側へのストレスは3~4割程軽減され、ケガのリスク回避も高まり、さらに鞭のしなりがプラスされ球速アップにも繋がります。

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【機能的】骨盤前傾が腕のしなりに直結

上腕の最大外旋位(MER)は【機能的】骨盤前傾位(FAPTA)によって大きくなり、投球腕の “しなり”、つまりダイナミックでスピード感溢れる腕振りを生み出します。

大谷投手の登板2試合を観ていると骨盤の前傾位は程々に維持されており、その証拠に投げた直後の股関節が内旋(太腿が内側に捻れる)し足裏がセンターからレフト方向に向かって上がっているのが度々観られました。

田中投手も同じように骨盤前傾位を効かせた上でMERを引き出す投げ方ですが、イニング後半になると股関節内旋操作が薄れ、するとしなりを伴うスイングが甘くなり打たれる傾向が高いようです。

純血の日本人であれば疲労や体力レベルの低下で骨盤前傾を維持することは難しく、従って下半身で得た力を上半身へ上手く伝えることができずにパフォーマンスが落ちてしまうのです。

トップレベルといえど【機能的】骨盤前傾位の仕組み・方法・そしてMERとの関係等はまったく浸透していないため骨盤を中心に体を動かすという概念は持っていません。

ビックリーグでもカリビアンやアフリカ系の人種は先天的に骨盤前傾が効いた姿勢であり、中間位に固定されやすい日本人が同じような姿勢にするにはTM鈴木が開発したFAPTAメソッドを試したりといった新たな取り組みが必要となるでしょう。

単に球数を減らす、イニング数を限定する等の量的な規制より、骨盤の傾斜角が試合中のいつ・どの段階で甘くなるのか(=投げるための姿勢が崩れるのか)といった球数制限の要因を整理し根拠とするほうが、肘・肩のリスクを抑えられると考えます。

機械的にストレスを軽減する

肘の内側をケアしよう!

前腕の屈筋腱は骨格筋といわれ肘の内側突起(内側上果)に付着しており、この筋腱移行部へ機械的な圧刺激を加えることで、元々伸びることのない腱の張力を緩めることが可能です。

腱をゆるめるのに最適な方法としてTM鈴木がおすすめするのが、セルフ・ボディコンディショニング・ピラー【ツブツブ】を筋腱部圧刺激です。

投球腕の肘の内側に位置する骨の出っ張り、そのわずかに掌側にずらしたポイントを【ツブツブ】にのせてゴロゴロ・ユラユラさせると痛気持ちいい感覚が生まれます。

投球動作の前と後、特に練習後はアイシング&前腕のストレッチングと組み合わせることで効果は倍増するでしょう。

球速や変化球にもこだわりたいがケガはできる限り避けたいなら、まずは骨盤前傾位を維持しながら投げられる毎日のルーティン(トレーニング)を模索してみてはいかがでしょう!(^^)!

まとめ:

肘内側へのストレスを減らすことがカギ

スプリッターは肘・肩のケガに繋がる球種といわれますが、プロ・アスレチックトレーナーの視点から、むしろ投球時に発生する肘内側への外反ストレスにフォーカスすべきでしょう。

スイング加速中、肘関節内側が外側への捻じり(外旋位)、そして後方に引っ張られることで外反ストレスが発生します。

肘内側部へのストレスを軽減するには骨盤を前傾位にして上腕の最大外旋(外側への捻じり:MER)可動域を増やすことが重要です。

またスプリッターは手首を固定してボールを挟んで投げるため、肘関節内側部付近に圧刺激を加えることで筋腱移行部の張力発揮性能を高めることが可能です。

速い球を投げたい・変化球も投げたいが肘・肩のケガはしたくない!という場合、骨盤前傾位による加速期での上腕骨最大外旋位を可能にする身体創りを心がけてみると良いでしょう。

TM鈴木

あなたにお伝えしたいこと!

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