スポーツ界やフィットネス業界、はたまた健康産業では大流行の体幹(タイカン)、様々な方法や関連用具等が数多く出回っています。
しかし体幹の概念・機能として横隔膜(おうかくまく:Diaphragm)が深く関与していることはあまり知られていません。
また数ある体幹トレーニングの中でも横隔膜をしっかりと刺激できる方法はまだまだ確立されているとはいえず、スポーツ現場へも提供されていない実態があります。
当ブログでは人の呼吸や体幹(コア)パフォーマンスに深く関わる横隔膜の特徴やその刺激法について迫ります。
横隔膜を“意識下”でコントロールできれば様々な恩恵をあなたにもたらし、日常生活動作は元よりスポーツ動作での核(コア)をよりイメージしやすくなるはずです!
Contents
呼吸とスポーツパフォーマンスの関係
出典:https://goo.gl/fvGpxZ
横隔膜は肋間筋・腹直筋・斜筋群等と並ぶ呼吸筋の一種です。
因みに肺自体には筋肉のようにそれ自身で収縮する能力はなく、胸郭周囲に存在する筋肉の伸縮によって胸郭が拡大縮小することで、空気の貯蔵や出し入れを可能にしています。
横隔膜の機能
人が身体を動かす際、通常の動きに比べより多くの酸素(O2)を必要とします。
酸素を体内に取り込むには呼吸筋の活発な活動が必要になるわけで、横隔膜は日常生活は元よりスポーツ活動時には特に重要な役割を担っているということになります。
横隔膜は通常の骨格筋とは異なり筋繊維走行が人の身体を輪切りにした時のように脊柱を中心に放射状に伸びています。
通常筋肉は縦方向(筋繊維走行)に伸び縮みしますが、横隔膜は息を吐くときにドーム状に膨らみ、吸うとそれがほぼ平面になります。
東京ドームは常時膨らんでいますが、あれがちょうど息を吐いている時なわけです。
出典:https://goo.gl/Rp4eE6
腹式・胸式呼吸の違いとその役割
胸(胸腔:きょうくう)と腹(腹腔:ふくくう)を分ける境目に横隔膜は位置しています。
一般にこの筋肉を極限まで動かす状態を腹式呼吸と言います。
息を極限まで吐ききると横隔膜はそのドーム(丸い天井という意味)が上方に向かって大きく膨らみ他の呼吸筋と連動して肺に溜まった空気(二酸化炭素や窒素)を外に押し出します。
逆に極限まで吸いきるとドームはペッタンコや下方に向かって凹み腹腔をギュギュっと圧迫すると同時に、胸郭が大きく広がり肺に新鮮な空気が沢山流れ込むという仕組みです。
一連の横隔膜を大きく上限に動かすスタイルの呼吸法を腹式呼吸と呼びます。
横隔膜があまり動かず、肋間筋を使って胸郭を広げるスタイルが胸式呼吸です。
*注)胸式でも横隔膜がまったく使われないということではなく、その使用比率が変化するということ
ヨガで行われる瞑想時の呼吸法はこの腹式呼吸が中心となります。
意識下でコントロールする!
通常だと横隔膜の収縮(息を吸った時“ドーム”が平べったくなる状態)は常に“無意識的”に脳幹部で調整されています。
しかし横隔膜は「“意識制御”と“無意識制御”との両方に支配されている例外的な筋肉」なのだそうです。
*出典:「Joseph E.Muscolino「Drマスコリーノ Know the Body 筋・骨格の理解と触診のすべて」
つまり横隔膜の動きは《意識することができる!》ということであり、その方法が先にあげた【腹式呼吸】≒横隔膜呼吸というわけです。
横隔膜の動きを“意識下”でコントロールできると自律神経の乱れを改善できるという利点が生まれます。
アクセルの働きを担う交感神経、ブレーキの役割の副交感神経からなり、体の外部刺激に対し自分の意思とは関係なく恒常的な状態を維持する神経です(←なんのこっちゃ!)
自律神経については下記サイトをご覧ください。とても詳しくわかりやすく掲載されています!
この神経がスポーツにおける極限状態でのパフォーマンス維持に大きく関わっていることが最近の研究から明らかにされています。
そしてこの自律神経の制御に深く関わるのが横隔膜を中心とした【腹式】呼吸であることが既に周知されています。
横隔膜の活性化がカギ
横隔膜の動きは今まで自分ではコントロールできないとされてきた自律神経の制御を可能にします。
トップアスリートは極限の緊張状態でも、自らの呼吸をその意識下でコントロールすることで優れたハイパフォーマンスを維持することができるとの研究結果がだされています。
【横隔膜】の動きを利用した呼吸法はパフォーマンスを高める一助となりますが、同時に体幹機能を高める必須要素でもあります。
起始部で繋がる
出典:https://goo.gl/s7WUNS
横隔膜はその位置や特性から大腰筋との繋がりが深い筋肉と言えるでしょう。特に脊椎の起始部(筋肉から腱になって骨に付着する身体の中心に近い部位)はそれが顕著です。
【走・投・打・跳・泳・漕】等スポーツ時のパフォーマンスアップには大腰筋の働きを高めることが必須となっているのは周知の事実です。
大腰筋の機能向上に多くの実践的な方法や道具が考案されていますが、その一部に横隔膜の能力アップがあげられます。
なぜなら大腰筋と横隔膜の起始の一部は繋がっており、従って大腰筋を活発に働かせるには横隔膜の動きを大きくする必要があるからです。
瞬時に変化を強要されるスポーツ動作状況において、体幹を意識的に安定させたり、能動的に機動力を発揮させる場面に対応するための能力は必須といってもいいでしょう。
こうした動きの能力を獲得するためのエクササイズを以下に示します。
横隔膜の性能アップに最適なメソッド
Chart1:肩甲骨の下角(下側の最も尖ったところ)より数㎝腰寄り
『セルフ・ボディコンディショニング・ピラー【ツブツブ】』を利用した「コア(Core)7」メソッドに含まれるのが横隔膜ストレッチング&呼吸法です。
Chart1の位置(みぞおち付近の背中)が最も横隔膜が伸びやすい位置になります。
体の前(表)面がしっかりと伸び後(裏)面が縮まることで、横隔膜の伸展能力、つまり息を吐き出す能力(ドームが大きく高くなること)が高まります。
ポイントは
1.【ツブツブ】を置く(背中の)位置
2.呼吸の長さ
3.吐き方(吸い方)
です。
呼吸は以下の①と②を2~3セット程繰り返します。
①10秒かけてゆっくり吐く
②7~8秒かけてゆっくり吸う
一気に吐く(吸う)というよりは少しずつ吐いていく(吸っていく)量をコントロールすることが大事なのです。
呼吸の量的な制御ということは横隔膜の動きをコントロールしていることであり、それが横隔膜の動きを“意識下”でイメージすることに繋がります。
Chart2:捻じることでさらなる伸展能力アップ
余裕ができたら[Chart2]のように捻じってみましょう!
シャツに斜めのシワがよっていますが、捻じっている証ですね。
表面に露出せず一見すると「じみ(地味~)トレ」に感じるメソッドですが、実践するあなた自身が感じるか否かが凄く大切な要素となります。
目に見える筋肉だけを鍛えてもパフォーマンスは決して高まりません。
大きな筋肉と小さな筋肉、目立つ筋肉と地味~な筋肉・組織の共働作業がハイパフォーマンスには欠かせないのです。
まとめ:
横隔膜は呼吸筋の一部であり“意識下”での制御が可能な組織です。
自律神経に働きかけ極限状態での高度のスポーツパフォーマンスを維持するためには、横隔膜の動きを利用した腹式呼吸が最良の方法です。
横隔膜と深層部の大腰筋はその起始部が繋がっており、大腰筋の活発な働きを促すには横隔膜の働きを高める必要があります。
スポーツ動作時の体幹の安定化、機動性能アップには横隔膜を“意識下”でコントロールすることでインナーユニットの能力が飛躍的に向上します。
セルフ・ボディコンディショニング・ピラー【ツブツブ】を利用した横隔膜の伸展エクササイズを紹介しています。
TM鈴木