日本記録更新!大迫傑選手東京オリンピック代表へグッと近づく~勝負を分けたレースインテリジェンス&フォアフット走法~

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東京マラソン2020は日本人トップ3の快走が期待された中、大迫傑選手(28)はみずからの日本記録を更新する2時間5分29秒(4位)で東京オリンピック代表に大きく近づきました。

かたや井上大仁選手、設楽悠太選手は日本記録更新そしてTokyo2020マラソン日本代表出場権獲得を目指したものの対照的な結果に。

大迫選手勝利の要因を動きを観る立場から主に走りの技術と精神状態から探ってみましょう!日本人トップとなった強さの秘密と東京オリンピックに向けた今後の課題にも迫ります。

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フォアフットの完成型

世界に近づく日本新記録!?

現在アメリカを拠点に活動する大迫選手ですが走りの素人がみても(誰でも)わかる程明らかなほぼ完全なるフォアフット(踵を着かない)走法です。

ケニア・エチオピアを筆頭とする東アフリカ勢(黒人ランナー)の特長であるフォアフット走法を完璧にマスターした唯一の日本人ランナーともいえるでしょう。

フォアフットが身に付く仕組み

そんな大迫選手ですがフォアフットをあえて意識した取り組みはしていなかったそうです。

7年前に渡米し筋力トレーニングに取り組み始め、所属するナイキ・オレゴン・プロジェクト(NOP)で世界的なランナー達と触れ合ううち自然とつま先接地にいきついたとのこと。

簡略化するためあえて一般紙でも表記されるフォアフット走法≒“つま先接地”としました!本来は微妙に違います!詳細を知りたい方は個別に対応

チームメイトのモハメド・ファラー(イギリス)やゲーレン・ラップ(アメリカ)といった世界で活躍する選手の走りから沢山影響を受けたことが予想されますね。

仮にフォアフットの意識的改善がなされなかったとしたら、フォアフットの切り替えにつながった素因は長距離では珍しい筋トレの導入にあったのではないか!と推察されます。

明らかなフォアフットで快走!

筋トレによって骨盤が前傾気味に位置し、骨盤ー脊柱ー肩甲骨&股関節といったコア(体幹)のアグレッシブな動きも高まって、前足部接地での体の安定性が生まれたのかもしれません。

設楽選手や井上選手のアップライトな走りと比べ、大迫選手はより黒人ランナーに近い上体を前に傾けながら走るスタイルを確立しているのもその証でしょう。

骨盤から前傾させる

動きについて鋭い観察眼をお持ちの知人M氏によれば、井上選手は箱根にでているランナー達に走り方が似ているとおっしゃっていました。

確かに見た目には非常に綺麗でスムースに走っていて設楽選手も含めた多くの箱根路を走るランナー達とも似通っていると感じました。

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大迫選手はこうした日本人ランナーと比較し、より体幹のアグレッシブな動きや大きな腕振りで推進力を得る黒人ランナーの走りに近いように見えます。

股関節と肩甲骨の動きが大きくリズミカルで、走る際の前足と後足の幅(歩幅は歩く時使うのであえて割愛)やアームスイングが他の日本人選手と比較し非常にダイナミックです。

アメリカだけでなくケニアでも合宿しエリート黒人選手達と多くの時間を共有し、彼らの走りの特長(骨盤前傾)をつかむことで、前足接地走法を吸収できたのかもしれません。

実はこのフォアフット走法、黒人ランナーのように少なくとも30°は骨盤が前傾しないと構造的にはほとんど身に付きません。

骨盤前傾が効かない日本人ランナーの理想はミッドフット走法

骨盤前傾は骨盤が脚より先に動きやすいので、振り出した足がミッドフットに比べより体の真下に接地できます。

すると膝が伸びた状態で自然につま先接地になりやすく、速度が落ちずスムースで力強い推進力が得られるのです。

多くはないベネフィット

骨盤がニュートラル(中間位)に近い日本人ランナーの場合、厚底シューズを履くことで多少無理をしながらフォアフットにせざるを得ない走りをしていると考えられます。

ナイキのヴェイパーフライシリーズや最新鋭「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」といった厚底シューズは、元々世界記録保持者キプチョゲ選手を筆頭に過度ともいうべき骨盤前傾を有する黒人ランナー向けに作られたものです。

井上・設楽選手はほぼ骨盤ニュートラル(中間位)で日本人特有のアップライトな走り方なので、黒人にくらべると足を体の真下近くへ接地させることができません。

厚底で無理強いした走り方になる多くの日本人

すると前方向への力と空中に浮いた直後の前脚荷重の合力負荷を、股関節と膝と脊柱でまともに受け止めることになり走りの効率性は高まらないのです。

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せっかく「前に自然に進む・緩やかな坂道を下っている」感覚がでるのに、骨盤前傾が効かず体重が後ろに残ったまま走るので、荷重負荷を分散することなくまともに受けて推進力に変えられないなんて残念でなりません。

自分の体や走り方を知ることが如何に大切か!ここに気づかない限り大迫選手を超える日本人ランナーの台頭は相当に難しいでしょう。

レース・インテリジェンス

機転の利くレース戦略の成果

大迫選手が日本新記録を出せた背景にはフォアフット走法技術と共に勝負のポイントを分けた2つのレースインテリジェンス(戦略)がありました。

それは20k過ぎてのイーブンペースへの意図的移行と30k過ぎからのペース・アップ!大迫選手はその身体つきや走り方もさることながらとてもレース感覚の鋭いランナーなのです。

20km過ぎでのペース配分

正確には22km過ぎから先頭集団のペースが上がったことにより大迫選手は20m程3~4秒離される格好になりました。

さらに24km過ぎからは唯一先頭集団を快走していた井上選手も離されはじめ、いよいよ終盤にかけて各ランナーが凌ぎを削る揺さぶりが始まりました。

この20kmから25kmにかけては大迫・井上両選手の心理状態は対照的であったことが推測されます。

大迫選手があくまで自分のペースを優先し意図的に(先頭集団がばらつきスピードアップしたことにより)“離された”一方、井上選手は先頭を追尾できず“離されてしまった”ように感じられました。

大迫選手が都度時計をみてペースを維持することに徹した反面、井上選手にはタイムをチェックしながらのペース配分という行動が観られなかったのです。

注)それでもその時点で依然として日本新記録をねらえる状況にはあったのですが・・・

このように20km~30kmまでイーブン・ペースで走れたことは、レース後半のスタミナ維持とスプリントへの準備いう点で大迫選手にとって非常に有利に働いたといえるでしょう。

30km過ぎからのペース・アップ

そして30kmを過ぎてからイーブン・ペースだった大迫選手の走りが徐々に力強さを増していきました。

30km過ぎからが本当の戦い

この時点で日本人トップ井上選手との差は10m程度、その後32km過ぎで遂に5位集団に追いつきペースがあがらないのを確認するや一気に井上選手ら7人を抜き去りました。

大迫選手本人も言っていたように肉体的にも余裕があったので前に出よう!とギアを切り替えたわけです。

この時点で5位集団に対しレースをコントロールできたことになり、自己の持つ日本新記録更新を狙える有利な立場となったのです。

この時大迫選手のペースについていけなかった井上選手はズルズルと集団からも遅れはじめレース後のインタビューで次のように語っています。

この距離でこれだけ元気なのは・・・、まっ、(大迫選手)ハンパないな

オリンピックのその先へ

世界を射程に!

ほぼ完成型に近づいたフォアフット走法、そして展開を予想しその場の状況判断で乗り切れるレース・インテリジェンスは、大迫選手のトップ・ランナーたる所以でしょう。

優勝ではない現実

しかし今回の東京マラソンでも37km付近からの脇腹痛に苦しむ姿をみるにつけ、40kmまでのレース後半は正に何が起こるかわかりません。

それに日本新記録をだしても結果的には4位と世界との状況は実に2分以上も離れたままです。

これまで完走5回のマラソンでは4回が3位と優勝を経験していない大迫選手、今回のレースでは是が非でも初優勝を狙っていたことを明かしてくれました。

優勝を狙う力がなかったことを直視し、(100%のまま競える)能力を少しずつでも高めていくと力強く語ったようにまだまだ伸び代はあるとみています。

それに自分の体と対話し後半にかけてレースをコントロールできる素養に磨きをかければ今後も徐々に世界との差が縮まると予想できます。

日本人でも骨盤前傾で走れる!?

海外のトップ(黒人ランナー)はスイング中はもちろん接地でも明らかな骨盤前傾(30°以上)ですが、大迫選手はこの瞬間はまだその“効き”が良くありません。

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ただ骨盤前傾に特化した能力を高めるトレーニング等、選択肢を増やし実践していけば修正できるポイントでもあります。

骨盤ニュートラル(中間位)気味で走る日本人であっても黒人ランナーの走りに近づけることは十分可能です!

黒人ランナーのような速さを身に付けるには骨盤前傾で走れることです!『ツブツブfit』に“のる”ことでその可能性は確実に高まります。

+5度骨盤前傾感覚を高める!

いずれにせよ彼が現在、日本マラソン界を引っ張るリーダーであることは誰もが認めているし、枠に収まらない世界レベルの選手としてさらなる成長をとげてほしいと願うばかりです。

そんな期待を抱ける今回のレース!新型コロナウィルスの影響から各地でイベントが中止(延期)される中、大迫選手の行動(走り)は観る者に多くの勇気を与えてくれました!(^^)!

まとめ

世界に近づけ!日本新

▼東京マラソン2020、大迫選手が打ち立てた日本新記録の要因を走り方(フォアフット走法)とレース・インテリジェンスの2点から紹介

▼厚底シューズを履きたいためフォアフットを無理強いする多くの日本人ランナーに比べ、大迫選手は意図せず自然な形でつま先接地ができる環境に身を置いた

▼レース展開に合わせた判断力が抜群!ペースの維持か勝負か!の選択を迫られた状況で的確な読みが記録更新に繋がった

▼記録更新は適い(1億円報奨金も得て)東京2020の代表権もぐっと引き寄せた!しかし優勝に向けては黒人ランナーの走りに近づくため骨盤前傾での接地が課題

TM鈴木

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