球数制限問題は日本の多くのスポーツ現場でみられる練習量の多さ・時間の長さと深く関わっています。
スポーツ現場には質より量をこなす練習が美徳とされ、“目に見える”努力が関係者を納得させる構図があるのです。
球数制限の問題解決には“量”優先の練習から抜け出す対策も含めたアプローチが必要不可欠となります。
当ブログにて世界初公開の通称「マダックス思考」が球数制限や練習量問題の解決に寄与するはずです。
Contents
日米の思考・現状
出典:https://goo.gl/Eu6pCX
少年野球・高校野球ではいまだ投げ過ぎ問題の解決には至っていないのが現状です、いや!解決法はない!といったほうがいいかもしれません。
極論を言えば肩・肘を痛める人は痛めるし、痛めない人は痛めない!身も蓋もない言い方かもしれないがそれが現実ではないかとさえ思えてなりません。
アメリカ野球の現状
投球数・投球回数を制限することで肩・肘の負担を軽くするという考えはいかにもアメリカ的思考であり、一見効果があるように思えます。
しかし2017年前後ではたとえ球数制限をしても肘の故障は増えている現実が浮き彫りになりました。
「ピッチスマート」は医師をはじめとした専門家が2014年に作った球数制限に関するガイドラインであり、徐々にではですががユースベースボールの環境にも浸透しています。
ここで大切なことはアメリカはMLB、しいては野球の未来を懸案し「ピッチスマート」を野球界全体で現場へ迅速に浸透させたということ!
野球(ベースボールではないが!)の未来を願うのは日本も同じですが、各々の思惑と利益・地位優先に固執するこの国は、どうやっても足並みを揃えることはできません。
新潟県高野連が本年春季大会で投球制限を実施すると発表した矢先、本家高野連から再考するよう求められあっさり撤回(新潟は見送りといっているが)したことがその証です。
他のスポーツでも状況は同じ
野球だけでなく多くのスポーツしかもどの年代においても、練習過多による故障のリスクがあることを知ってはいても改善できないのが現状です。
多くのトップレベル選手が練習に明け暮れ体を酷使する現状は、未だその確信に考えが及ばないことを意味しています。
トップを指導してきた関係者がアンダーカテゴリー(大学・高校・小中学生等)へ当該スポーツを普及させるべく関わると、多くの場合練習量つまりこれだけやったからトップになれた!ことを吹聴するケースが少なくありません
「たくさん練習した=トップレベルになれた」と吹きこまれる子供達やその親が「もっと練習増やしてくれ!」という考えにいきつくのも無理はないわけです。
特に少年野球ではその(練習)量というかダラダラと長い時間を費やす練習がそこかしこで行われていることに変わりはありません。
彼らの精神構造は長時間の練習で“安心感”を得られることが最大の効果と言える程、その量に対する依存度は高いのです。
量をコントロールする勇気
日本では選手も指導者も練習で “ある一定” の精神的満足感を得ることが、練習を終わらせる一つの目安と考えている節があるようです。
不安を一層する手立てを考える
練習量で安心感を得る!という手段から質で安心感を得るという考えにシフトすることが、今後の野球界・スポーツ界にとって大切なのではないでしょうか。
如何に量をコントロールし技術力を高める内容に目を向け、試合でのベストパフォーマンスを引き出すか!を考えることを優先すべきです。
一見すると相反するこの課題ですが、実行に移すことは不可能ではありません。
アメリカにおける「ピッチスマート」、日本における(仮にルール化されるとして)球数制限によって、その投球数内でベストパフォーマンスを見せて評価されるという環境が確立されることを望みます。
そうした戦略的工夫が現場に増えることで、若年層を含む投手の故障やアスリートの身体的問題は解決する方向に向かうはずです。

無駄な時間の宝庫!削ぎとれる部分は沢山ある
とにかく野球には練習中の無駄な時間が多すぎるのです!それを省くだけで小一時間は簡単に短縮できるし投球練習も大幅に減少可能です。
不安と恐怖に打ち勝つ方法
プロ野球選手・プロゴルファー等、多くのアスリートはご多分に漏れず非常に練習熱心です。
しかしそれは裏を返せばこうも考えられます。
【練習で(試合でのスイングのブレや球が思う所に飛んでくれないという)不安感を打ち消すしかない!】
日本人アスリートは自分の理想とするフォームを身体に覚えこませる(落とし込む)ことを好む傾向があります。
だからゴルファーは数多く球を打たなきゃいけないし、ピッチャーなら数多く投げなきゃならないし、スイマーなら何千メートルも泳がなきゃいけないと考えてしまうのです。
野球でもゴルフでもテニスでもスイミングでも多くのスポーツでそうした傾向は顕著に見られます。

量が減ることをメリットと捉える思考
彼らにとって投げ方・打ち方・泳ぎ方・走り方等を完成させるために、実に多くの時間を費やして間違いのないフォームを身体に覚えこませる、それが練習の目的となっています。
実は選手達を教える指導者にとってもそうした心理的要因が根深く関与し、量的練習にならざるを得ない原因のひとつなのです。
こうした練習は一種の「不安・恐怖」に打ち勝つためのその場しのぎの解消法にすぎません。
システマティックな方法からは程遠い時代遅れの精神論的手法の何ものでもないのです。
全力投球とは全(能)力投球なり!
練習というのはあくまで練習でしかなく、試合ではありません。
試合になれば様々な環境・心理・体力要因等が関わってくるため、練習でいくらうまくいったとしても試合にそのまま現れることはないのです。
ピッチャーであれば、とかく若い(特に成長期の)選手は全力で(思い切り)投げることを好む傾向があります。
“【全力】で投げる・打つ” というフレーズは特に誤解を生みやすいのです。
全力とは全(脳)力のこと、つまりは頭をフルに使った投球をすることであって、全(体)力を使うことではありません。
体力は(年齢幅によるものの)限界値が低いため、どんなに鍛えようが疲れやすいものなのです。
しかし脳は体に比べ疲労を感じるライン(閾値)は非常に高く、どれ程使ったとしても体力に比べて疲労感はそれ程感じません。
仮にストレス等も関係した相当の疲労感を感じたとしても、しっかりとした栄養と睡眠をとることで一日で回復するのが脳の特徴です。
量ではなく質を高める

「マダックス思考」作った本人
【頭を100%近くフル回転させて多くを8割の(体の)力で投げ、ここぞ!という勝負の時のみ9割を超えて投げる!】
こうした目標設定の元に、パフォーマンスを発揮できるような練習に、そろそろ移行させようと考える人達が増えてくることを願います。
「マダックス思考」を考察せよ
MLBで20年以上にわたって活躍したグレッグマダックス氏、彼はシカゴカブスやアトランタブレーブスで絶対的なエースとして君臨し、現役生活で350勝以上を挙げた大投手です。
彼の信条は27個のアウトを27球でとることでした!これが通称「マダックス思考」の概要です。
27個のアウトを27球でとるために速いボールより、思ったコースにきちんと投げられる絶妙のコントロールと、ボールに僅かに変化を加えることにこだわった投球術を磨いたのです。
70イニング以上の連続無四球記録を作った彼ですが、キャリアで3000以上の奪三振も記録しています。
まさにここぞというときには「ズバッと!」三振を獲りにいけたMLB最高のピッチャーのうちのひとりなのです。
そんなマダックス投手(当時)は自身のキャリアで肘を故障することはまったくありませんでした。
またNYヤンキースで活躍し広島に帰還して引退した黒田博樹投手も、MLBで毎年200イニング前後を投げていましたが肘の故障はなかったのです。
彼らはできる限り多くのイニングを投げシーズンを通して活躍するため、8割の力で投げても打者を打ち取れる技術を磨いていたはずです。
MLBではこうして毎シーズン200イニングを投げても肘を故障しない投手もいます。
こうした投手達の思考法が現場を預かる指導者や選手が本当に参考にすべきエッセンスなのではないでしょうか。
今求められているのは現場の選手・指導者・親(家族)の【思考改革】なのです!
視点を変えて強みを高める
前出の記事「投球制限があるのに肘の故障は増えている」では、ピッチャーの肘の故障を予防する手立てがないことを示しています。
とはいえ、球団側も選手側も、故障に対する認識が定まらない点は興味深い。故障を防ぐ方法がないからだ。極論すれば、合理的と呼ばれるフォームで投げていようが、球数や投球回数を制限しようが故障する人はするし、しない人間はいくら投げてもしない。
出典:http://toyokeizai.net/articles/-/167601
確かに現状はその通りかもしれません。
MLBがピッチャーの肘を予防するための様々な取組みをしていることは周知の事実です。
しかし実はどんな統計的なデータを駆使した手法より、マダックス氏や黒田氏のような柔軟な思考こそが肘を健康に保ってくれる秘策だと個人的には考えます。
人の体はまだまだ分からない未知の世界、だからこれが正解なんてことはありません!
解らないことも沢山あることを自覚してスマート・アクション(賢い思考)をフルに発揮することが、ケガを回避しベストパフォーマンスを維持する唯一の方法と気づくべきでしょう。
練習しないことが練習!
プロゴルファーの手嶋多一選手は練習時間の少ないプロとして有名で、先ごろはこうした内容もメディアで取り上げられています。
練習をし過ぎて故障をきたしていてはパフォーマンスは上がるはずもありません、プロとしては失格の烙印を押されてしまいます。
ベストプレーは(あるポイントから)練習量ではなく、思考を変えることで生まれる!
という考えを現場もそろそろ身に付けるべきではないでしょうか。
手嶋プロがなぜ練習を極力しない方向に目を向けたのか、その本質がわかれば体への負担を強いる量的な習慣は大きく変革する可能性があります。
「故障をせず良いプレーを磨き続ける」それがわかれば練習の意義を再認識でき、結果的にファンを喜ばせるプロアスリートに近づけるはずです。
これさえ読めば一目瞭然
練習量が重要と考える日本のスポーツ現場、そこには「プレーの質を高めるには練習しかない」という不安や恐怖感を払拭しようとする選手や指導者の考えが存在。
様々な要素が重なり合う試合やレースでは、いち早く頭を切り替えられる柔軟な思考が必要であり、それは練習をしたからといって手に入るものではない。
一定以上のパフォーマンスを発揮できる環境が、練習量によって左右されることがないことを選手や現場の指導者は認識すべき。
ピッチャーやゴルファーを含む全アスリートは体の故障リスクを回避するためにも、投げ込み(打ち込み)に依存しない全(脳)力投球を心がける。
TM鈴木