【進化系ハイブリット】サニブラウン選手の視点は世界のトップ~骨盤前傾位での大きなストライドが中盤からの加速に寄与~

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6/24(土)日本選手権男子100m決勝はここ数年の陸上短距離の盛り上がりを象徴するレースとなりました。

マスコミによる9秒台はすぐそこ!という触れ込みの中、その可能性を高めてくれる選手達3~4人が出場するとあって近年稀に見る観客動員数(2万人以上や視聴率が見込まれました。

結果は注目された4人(山形・桐生・ケンブリッジ・多田)より速かったサニブラウン・ハキーム選手(東京陸協)が優勝をかっさらいました(^_^;)。

周りが一応に驚いたのは以前とは違ったサニブラウン選手の走りの進化です。

その走りはどう変わっていたのか?体の使い方という観点から観ていきましょう。

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緊張と上手に付き合える有意性

出典:https://goo.gl/2nYXhr

放送時間の問題か、陸上の花形である男子100m決勝は最終種目の20:00過ぎにセットされました。

風は多少の追い風(0.2m/h)でしたが何よりも雨脚が強くなってしまい、記録を出すためのコンディションとしては最悪の状態といってよかったでしょう。

にも関わらず、サニブラウン選手は188cm・74kgの日本人短距離走者としては大柄な体を悠々と動かしながら、黙々とウォームアップに努めていました。

前日の予選・準決勝とも10秒06という今大会参加選手中トップタイム(自己新記録)をたたき出しており、その走りが俄然注目され始めていました。

そして、いざ決勝へ!

走ってみるとレース中盤からそれまでトップにたった多田選手(関西学院大学)をまくり、余裕でかわしてゴール!

この人にはなぜか涼しい顔して走るイメージが似合うと感じてしまうのはTM鈴木だけでしょうか?

18歳ながら心のコントロールがうまくできている、というより「緊張」以上に『ワクワク感』で筋肉が良い意味で解れている感じがします。

なんだか大物の雰囲気が漂っている感じです(^_^)

お顔を観察していても良い意味での笑顔がでているし、もちろんレース直前は引き締まった顔をしていますが、あのボルト選手のように性格的も大らかで明るい感じがして好感が持てますね。

サニブラウン選手の動きの特徴

出典:https://goo.gl/yvoL1n

肩甲骨周りに目が行くと・・・、サニブラウン選手の走りで特徴的なのは、腕の振りです。

腕振りが体の後方より前方の方が大きいのです。

これは肩甲骨を中心とした上背部の動きに少々硬さが見られるからだとも考えられます。

原因は肩甲骨(肩甲胸郭関節)の可動域(ROM)が良くないのか、それとも前鋸筋を主とした胸郭の動きに制限があるのかもしれません。

*前鋸筋については下記サイトで詳しく記されています

前鋸筋は肋骨から肩甲骨に付着する筋肉で、肩甲骨を外転・上方回旋させる作用があります。腕を動かす時に非常に重要な筋肉で、肩こりの原因になることもあります。 前鋸筋とは? 前鋸筋は、「ぜんきょきん」と読みます。 その名の通り、鋸(のこぎり)型の形をしている筋肉です。あまり有名な筋肉ではありませんが、体幹~肩甲骨の固定に重要...

またサニブラウン選手はどちらかと言えばなで肩(鎖骨が外へ向かって下がり気味)です。

なで肩の場合、頸~頭部の安定に関与する僧帽筋上部(繊維)は緩みやすく、逆に広背筋が緊張しやすく肩甲骨を外側や斜め下方に引っ張る力は強いと考えられます。

そういえば少し前までかなり頭を振りながら走るフォームでしたが、その原因は身体のこうした特性によるものだったのかもしれません。

今後、例えば肩甲骨周囲の可動域が高まることで、腕振りの後方への引きが前方よりも大きくなり、推進力がさらに高まる可能性があります。

混血(ハイブリット)の強さ

サニブラウン選手のお母さんは日本人、お父さんはガーナ人、ご両親はそれぞれ短距離ハードル、サッカーの経験をお持ちだったとのこと。

いわゆるハイブリットの場合、その骨格・筋肉特性は日本人の体格特性を上回る傾向が観られると考えられています。

サニブラウン選手もガーナ人であるお父さんの体格特性を受け継いで、ネグロイド(人種)特有の身体特性を有していることが伺えます。

仮にその特性があるとすれば、骨盤前傾位による体幹のダイナミックな伸縮動作によって生み出される力で、大きなストライドを可能にする走り方にも納得です。

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特にレース中盤からトップスピードに達し、後半でもそのスピードを維持できるのは、骨盤が前傾することで体幹の動きが加速され、腕と脚の協調連動がさらに活発になるからだと考えて良いでしょう。

この動作は今のジャマイカ勢、特にあのボルト選手に観られる動きの顕著な特徴と類似しています。

余力を残すセルフコントロール

体格特性で忘れてはならないものがアキレス腱・膝蓋腱・ハムストリング(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)等のバネです。

ネグロイドに共通する”天性のバネ”はサニブラウン選手にも備わっています。

中盤から後半にかけてのあの大きなストライドを生むには、下肢のバネが生かされなくてはなりません。

それ程大きくないようにも見えるストライドですが、188cmという(日本人短距離走者にしては)身長を利した余裕のストライドで走っているため、無理のないストライド走法を可能にしています。

今大会は雨脚が強いコンディションにもかかわらずあの記録(10秒05)、しかもフィニッシュ付近では余裕のある走り(手を抜いたとは言わないけど)で駆け抜けていました。

同じ混血であるケンブリッジ選手のトップスピード時の走りは、現在のジャマイカ勢(黒人アスリート)と似ていますが、今回の走りだと推進力という点ではサニブラウン選手のほうが1枚上のように感じます。

こうした状況を踏まえると、サニブラウン選手は日本記録(9秒代突入)というより、本当に世界と勝負できる、つまり9秒台を常に出せる素質を備えたアスリートかもしれません。

個性を伸ばす指導の本拠へ!

出典:https://josai-dousoukai.tokyo/324

1月からサニブラウン選手はオランダやアメリカ等で練習を積んできたそうです。

秋からは多くのアスリートを輩出したスポーツの名門フロリダ大への本格的な進学も決まっており、今後陸上の練習はさらに質を高め洗練されることでしょう。

個性とはブレる走りなり

報道によれば海外での質を重視した練習により頭のブレが少なくなった、体軸がブレなくなって記録に繋がったのでは?とされています。

それはそれで間違いではないでしょう。

でもサニブラウン選手にはブレても速く走れるという体の特性があったのです。

つまりブレることで速く走りやすいという体の特徴を備えているから、そうなったと考えるべきでしょう。

本来ブレずに走るというのが100mの共通した見解であり、軸がブレないように走ることが速さの秘訣とも言われましたが、ボルト選手の出現によりそうした「短距離の走り」の常識は覆されました。

人の体は全くの左右対象ではないのだし、動作中にブレることは自然なこと、だからブレてもすぐに(体の中心に)元に戻せる能力さえ持っていればいいとTM鈴木は考えています。

ですからブレを少なくして速さを求めるのは構いませんが、ブレをなくす走りを追求するのは得策とは言えません

日本ではともすればフォームを修正(矯正!?)されてしまう可能性もあったわけですから、練習拠点をアメリカに移すことは正解だったかもしれません。

本職の200mも制す

そして25(日)に行われた男子200m決勝でも優勝、これで世界陸上ロンドン大会の100・200m代表の座を射止めました。

元々は200mの選手であり後半のトップスピード維持能力は非常に高い選手です。

そんな選手が100mに出ているのですから、レース後半の伸びは100mを主戦場にしている選手と比べれば3割近く伸びるのは当たり前といっても過言ではないでしょう。

昨今の短距離の特徴を踏まえると、日本人が短距離、特に100mで世界と互角に勝負するためには、中盤のトップスピードをあげる、そしてそのスピードをフィニッシュまで維持できる能力が必須です。

スタートは良いにこしたことはありませんが、中盤からまくる勝負が100mの主流となっていることを考えると、サニブラウン選手やケンブリッジ選手が今後の男子100mを引っ張っていく存在となるのは間違いないかもしれませんね。

骨盤前傾位での動き(走り)を実現!

骨盤を前傾させた状態で走ったり跳んだり動いたりできることは、そうじゃない場合と比べて何が違うのでしょうか。

簡単に言えば『動きのコントロール(制御)の度合い』がまったく違ってきます。

自分の考え通り、思い通りに体が動くようになるのです。

もちろん結果的に速度や高さ、動きやすさも違ってきますが、最も感じるのはあなた自身の体に感じる反応でしょう。

100mで言えば中間疾走からトップスピードにギアを入れた状態で最も感じることができるはずです。

ストライドは意識せずとも伸びます。

なぜなら(骨盤を前傾位にする以前に比べて)脚を前に振り出すよりも一瞬速く立体的に動き、脚のガイド(先導)役を担ってくれるからです。

【しなる】体幹のメカニズム

骨盤前傾位になると骨盤が良く動くのは元々人の体が構造上そういう風にできているからです←答えになっとるかいっ!と突っ込まれそうですが(ToT)/~~~。

骨盤は上は仙骨を通じて脊柱と、下は寛骨を通じて大腿骨と股関節で連鎖(繋がり)しています。

骨盤の前傾角が大きくなればなるほど脊柱は反る動作、そして股関節は伸展(後方に伸ばす)動作がしやすくなります。

走る(動く)際に重要なのは全身をバネのように多方向に【しならせる】ことです。

例えば後方への【しなり】が大きければ大きい程、前方に推進する勢いは増加します。

脊柱の反りは体幹の伸縮性能に、股関節の伸展は脚のストライド幅に直接関わる重要な要素ということです。

こうした後方への活動的な動きの可能性をさらに引き出しているのが背部の筋肉であり、だから黒人アスリートは臀部・ハムストリング・背部といった個所が驚く程の発達をみせるわけです。

黒人アスリートはこうした骨盤前傾を維持しながら走ることに慣れています。

彼ら/彼女らは骨格形態が元々前傾位であるため、走る際には骨盤を中心とした体幹部の【しなり】をバネとして前方への移動に生かせる走りが可能なのです。

元々骨盤傾斜角が大きくないアジア系人種(モンゴロイド)では、ブレーキの役目をする大腿前面の四頭筋を活動的にしやすく、体幹部の【しなり】を使えないため推進性能が不利にならざるを得ません。

骨盤前傾位動作(走り)での指導法

ここでハイブリットアスリートの有利性が発揮されます。

サニブラウン選手やケンブリッジ選手はネグロイドの骨格・筋肉特性を片親から継いでいる可能性が高く、元々の骨盤前傾位に加えて細心の科学的なトレーニングによって前傾位の強力な維持を可能にすることができる体なのかもしれません。

骨盤前傾位で身体を動かす(走る)ことはそれ程難しいのでしょうか?

これは実際にそれを日常生活やスポーツ現場に取り入れて実践したものでないと解りません。

いくら陸上のコーチが指導しようとしても、そのノウハウ(知識・技術・指導法)を持っていなければ実践には移せないのです。

TM鈴木は骨盤前傾位で身体を動かす(走る・打つ・投げる・泳ぐ・跳ぶ等)指導法を10数年かけて確立させました。

走るだけでなく、ほぼ全てスポーツにいかせる身体操作の極意です。

ご興味ある方は、こちらへお問合せください。

きっとあなたの今ある課題を乗り越える“手段”となるはずです!(^^)!

まとめ:

サニブラウン・ハブデル・ハキーム選手の速さの秘密を動きの観点から紐解きました。

ハイブリットアスリート特有の体格特性、特に骨盤前傾位によって体幹部のダイナミックな伸縮動作が推進力をさらに加速させる要因となっていることが伺えます。

いってみれば地上最速動物のチーターのように胴体の伸び縮みのエネルギーを上手に脚(腕)に伝えています。

加えてアキレス腱や膝蓋腱等のバネが効いている走りができるので、地面からの反発力をしっかりともらって体をグイグイと前に進めることができています。

緊張よりワクワク感が上回り筋肉を良い意味で弛緩させることができるのも、大らかで細かいことを気にしない性格特性が幸いしているのかもしれません。

日本人初の9秒台は元より、世界と互角に戦える真のスプリンターになる可能性を秘めたトラック・アスリートと言えるでしょう。

TM鈴木

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