速く走るための機能的骨盤前傾位~ただし周囲の筋肉が使える状態にする必要あり!~

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速く走るにはいくつかの要素が必要です。例えば100mや200mでは最低でも4つ程の要素が必要になってきます。③は中長距離にも生かせる技術であり、いずれも知っているのといないのとでは身体の使い方や動き方に大きな差がでます。

①反応時間

②30mまでの加速

③中間疾走~フィニッシュ

*1) ④コーナリング 200m以上のスプリントの場合

骨盤の前傾を維持させたまま動かす技術は特に③で生かされます。ではどのような使い方をすれば③が速くなるのでしょうか。

本稿ではスプリント(速く走る能力)について、特に中間疾走からフィニッシュに至る場面での骨盤前傾位のメリットについて探ってみたいと思います。どうしたら速く走れるようになるのか、骨盤前傾位での身体の使い方についても検証していきます。

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速く走るための骨盤前傾位

機能的骨盤前傾位

黒人アスリートがスポーツ界においてこれほどの活躍ができる裏には何か秘密があるのでしょうか?筋発揮能力もその大きな要因ですが、まずはその姿勢をみると明らかに違います。黒人アスリートの姿勢はしっかりと真上(頭上)に伸びています。体幹が頭上にしっかりと伸びるのは骨盤前傾によるものです。

骨盤前傾位とは?

骨盤前傾位比較

Crt1:左の骨盤後傾(中間位)に比べ、右の骨盤前傾位でのASISPSISラインピンク)と水平線(黄色)のなす角度が明らかに違う

骨盤前傾位とは真横から観て股関節を中心軸とした骨盤の前方への傾き(角度)です。この傾きがある一定以上ある場合を骨盤前傾位と呼びます。ただ具体的な傾斜角については色々と意見がわかれていますが、目安としては黒人の傾斜角が参考になるでしょう。

因みに骨盤前傾角を測る際、いくつか指標がありますが、外から観て最もわかりやすいのはASIS(上前腸骨棘)とPSIS(上後腸骨棘)の高さを線で結び水平面(床)と交わる傾斜角度を算出する方法です。

一般的にはこのASIS-PSIS傾斜角は8~12度と言われています。日本人アスリートでは15~25度、黒人アスリートでは35~45度程あると言われています。

黒人アスリートの優位性

なぜ骨盤前傾位がパフォーマンスを高めるのかと言えば、黒人アスリートをみれば一目瞭然でしょう。彼ら/彼女らの骨盤周りや体幹部は、見た目でも機能でも他の人種とは明らかに違います。お尻の位置が高く足が非常に長くみえます(実際に長いし!)。

そして運動能力には大きな違いがあります。100mや200mのスプリント系種目、800m・1500m・5000m・10000m・マラソンといった中長距離系を見れば明らかでしょう。さらにNBAは全体の7割程が黒人アスリートですし、NFLやMLBでも彼らの活躍は突出しています。

いくつかの報告によれば黒人と日本人スプリンターの大腰筋断面積を比較したところ前者が約3倍程大きかったということです。大腰筋は太腿を体幹部に近づける働きがあり強い脚の振りを実現するために大腰筋が大きく発達したと考えることも可能です。

黒人アスリートの能力に近づける!?

日本人(アスリートであれ一般人であれ)も骨盤を意図的に前傾させることは可能です。しかしそれではまともに身体を動かすことができません。パフォーマンスがガクンと落ちてしまうのです。

これは無理もないことです。単に骨盤前傾位にした状態では周りの筋肉が骨盤の傾きに合わせて動いてはくれません。その訓練をしていないのですから当然ですよね。

骨盤を前傾しても周囲の筋肉がその骨盤の傾きに合わせて働かないようでは骨盤前傾位の意味がありません。ということは骨盤を前傾させたまま周囲の筋肉が呼応して働くようにすれば『黒人アスリートが持つ運動能力に近づけるかも!』と考えたとしても不思議ではありません。

骨盤を前傾位にしてその状態を保つには骨盤前傾に使われる筋肉の再教育が必要になってきます。骨盤前傾に関わる主な筋肉は以下となります。

大腰筋・ハムストリング・大臀筋・中小臀筋・腸骨筋・大腿直筋・脊柱起立筋

但し大腰筋やハムストリングは伸ばされながらそれ以上伸ばされないようにするために我慢する(力を発揮する)機能である伸張性収縮を得意とした筋肉で骨盤前傾に関わっています。

こうした筋肉が骨盤前傾位で機能する・働くようにするトレーニング(エクササイズ)が機能的骨盤前傾には必要不可欠なのです。

常識に拘っても勝利はない!

一般的に骨盤前傾位姿勢は多くの専門家が良くないと声高らかに叫んでいます。もちろん後傾では高いパフォーマンスは発揮できません。だから中間位にすれば良いと!

ではなぜ黒人アスリートの多くは骨盤が前傾したまま動けるのか、そして高いパフォーマンスを発揮できるのか、そこにこそ答えが存在するとTM鈴木は考えています。

たしかに付け焼刃の骨盤前傾位は反り腰にもなりケガのリスクも伴うから良くはないでしょう。そして身体が慣れていない状態では非常にギクシャクした動きになりパフォーマンスどころではありません。この辺り黒人の機能的骨盤前傾とは大きく違うポイントです。

そこでTM鈴木は黒人アスリートが持つ機能的骨盤前傾位に必要な以下の3要素に重点を置いたTM鈴木独自の機能的骨盤前傾位エクササイズ FAPT*1)を推奨しています。

*1)Functional Anterior Pelvic Tilt(FAPT)

・反り腰(腰椎の極端な前弯)を回避する

・骨盤前傾によって脊柱や股関節周りの筋肉が反応する

・骨盤前傾によるギクシャクした動きを回避する

骨盤前傾で最大のリスクといわれる腰を痛める要因であろう反り腰、つまり腰椎の前弯を回避する方法や黒人アスリートと同様、機能的骨盤前傾位にするやり方を約10年の歳月をかけて開発してきました。

骨盤が前下方に傾くだけの単なる前傾位ではなく、黒人アスリートやスーパーモデル・バレリーナのように機能的骨盤前傾位にするための方法であり、数年をかけて骨盤の前傾位と周りの筋肉の再教育を促します。

骨盤前傾位による感覚変化

走りの違い

走る時骨盤が前傾すると思った程腿が上がらないことに気づくはずです。今迄は腿を上げるというイメージが先行していた脳の感覚をまったく違った動かし方にすることで新たな刺激が入ります。

脳はどこに意識を持っていけばいいのか?という迷いが生じます。それを「ここの動きにイメージをリンクさせてあげな!」という風に導いてあげるのが、骨盤前傾位を維持して動作させるためのエクササイズなのです。

立位での違い

骨盤前傾位姿勢になると立位でまず重心が明らかに前方に移動します。すると身体が自然に前に倒れるような感覚になります。ほおっておくと身体が前に倒れそうになる!だから脚を前に踏み出す。前方への推進力はこうして生まれます。

マイ骨盤前傾後傾1後傾2重ね合せ

Crt2:骨盤前傾位では明らかにお尻が下がるし、下っ腹が出てしまう。腰部にはしっかりとした理想的な生理的カーブが出現する

速く走るために脚(腿)をあげて前に進もうとしていた感覚から、【前に倒れそうになる】から脚を一歩前に踏み出すというイメージに変える作業が必要なのです。

このイメージにする条件として腿裏がしっかりと伸びてる状態、ハムストリングがピーンと張っている感覚が必要です。合わせて脹脛(ふくらはぎ)の筋肉が伸ばされている感じもでてきます。

立位ではそのままでは前方に倒れてしまいそうになるため、足裏前部や脛(前脛骨筋)で前に倒れないように踏ん張る(つっかえ棒というべきか)感覚も必要なのです。

因みに骨盤前傾になりにくいのはハムストリングと大腰筋が縮まっているのが最大の要因です。両者はその性質から骨盤前傾位のバランス(つり合い)を保つ重要な筋肉です。

立位では両方の筋肉が適度に伸びている状態が最も骨盤が前傾しやすく、合わせて起立筋・臀筋群、多裂筋等が縮まり腹直筋が伸ばされた状態となります。

骨盤前傾を維持しながら走る感覚

・腿が思った程上がらない

今までは腿を上げて推進力を得ていました。いや!そういう風に自分で思っちゃっていました。でもそれは身体の仕組みと機能を知っていれば正解でないことがわかります。骨盤前傾位であれば腿は上がりにくいのです。

ではどういう感覚になるか?骨盤前傾角が大きくなればなるほど、(腿をあげられない代わりに)身体が前に倒れやすくなるため、脚を一歩前に踏み出すを繰り返します。前方に進むわけですから腿をあげるという非効率な動作は必要ないわけです。

そしてここが最大のポイントですが、脚があがらない代わりに前に踏み出す側の骨盤(腸骨)でもって脚を引っ張り上げている感触がです。これがいわゆる【ヘソから下が脚】になるという感覚なのでしょう。

・斜め後下方への蹴り出しが強く大きくなる

骨盤前傾位では腿が前上方にあがりにくくなります。代わりに脚の斜め後方への蹴り出しが強く大きくなります。骨盤前傾位では脚を後方に振り出す最大伸展可動域が大きくなるわけです。

腿をあげて前方への推進力を得る方法は廃れたとはいえ今でも多くの現場で行われていることです。それはあながち間違いではありません。あげた脚(足)を素早く身体の真下に下すことで弾性力(からだを弾ませる力)を利用することができるからです。

しかしそれではベクトル(力の向きと量)が斜め前方への推進力にいかされず、上に向いてしまうことが多いため速くなりません。

・大腰筋を主とするおへそ両脇の部分の急激な縮まり

斜め下方に蹴った(蹴り上げた)反動で股関節の最大伸展が起こり、その影響で大腰筋をはじめとする縦方向に伸ばされたおへそ両脇の筋肉が急激に縮まります。

大腰筋は伸ばされながら力を発揮する(伸張性収縮)が得意な筋肉であり、この瞬間に最大のパフォーマンスを発揮することになります。

これが大腰筋をメインとする骨盤~脚のバネ作用、いわゆる“しなる”脚の動きの原動力です。この地面を蹴ったあとの大腰筋のこの収縮は脚の蹴り上げより一瞬早く起こるため、真横から観ると骨盤がグイッと脚よりも一瞬早く動く(始動)のがわかります。

エネルギー伝達の無駄がない骨盤前傾位

黒人アスリートは他の人種にくらべ骨盤前傾角が大きいため、身体の真下に足を着地しながら着地足側の骨盤にグイッと体重を乗せて、斜め後下方への蹴り出しを強く・大きくすることで前への推進力に変えているのです。

骨盤前傾位で足を勢いよく地面に着地する(バーンと足裏で打ちつける力)際、その力が強ければ強い程弾性エネルギー(ゴムのようにはずむ力)が大きくなります。骨盤前傾位だと下半身から上半身に伝わるそのエネルギー損失が極力抑えられて上半身で大きな力を発揮しやすくなるわけです。

だから黒人アスリートは後方への脚の蹴り毎に頭が『コッコッコッ』と前に勢いよくでるように走るわけです。頭が前方へでやすくなるのは体幹部のしなりが大きいからです。骨盤の前傾により脊柱や胸郭・肩甲骨・股関節等、他の部位が呼応し連続性を持った動きになりしなる体幹を生み出してエネルギーを伝えているのです。

一般の技術指導では教えられない理由

速く走る技術はそれを経験した者やその技術の指導経験のある人しか教えられません。そうした経験者や指導者たちは速く走るための様々な指導技術を持っています。ただ、残念ながら骨盤前傾位で身体を動かすための知識・技術は持っていません。

短・中長距離技術指導者は実際に骨盤の前後傾をして速く走る技術を高めてきた人達ではないため、骨盤前傾位で速く走るための技術は指導できないのです。

TM鈴木は10数年にわたる骨盤前傾動作の調査・研究、そして実践をすることで骨盤前傾を維持した状態で速く走る・素早く身体を動かす指導技術や実践方法を身に付けています。機能的骨盤前傾位での動きはそれを経験し実践した者でなければわかりません。

本稿をご覧いただき機能的骨盤前傾位にご興味を抱き是非、体験したいと思ったあなた、スカイプによる機能的骨盤前傾操作の体験サービス(15分¥500)を実施しています。

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機能的骨盤前傾バナー

まとめ:機能的骨盤前傾位

前傾位

速く走るために骨盤前傾位は必要不可欠な身体の機能です。しかし単に骨盤の傾斜角だけを変えても反り腰になるだけでむしろケガのリスクが高まるだけに終わってしまいます。

黒人アスリートの骨盤は明らかに前傾していますが、同時にその傾斜角に合わせた股関節・脊柱・胸郭・肩甲骨周辺の筋肉の機能性が高く、骨盤傾斜を中心とした周囲筋群との連動・協調性がしっかりと洗練されています。

こうした機能的骨盤前傾を獲得することは可能ですが、それを経験した指導者や方法論をしっかり学び、実際の骨盤前傾位での様々な動作を訓練する必要があるため、その習得にはある程度の時間を必要とします。

運動能力(パフォーマンス)アップのためには必要な時間であり、機能的骨盤前傾位での動作習得を楽しむくらいの余裕を持って実践することが肝心でしょう。

実際、訓練中は日々身体を動かす感覚が変化するため、むしろとても新鮮で新たな刺激を得られる喜びに浸ることができるのです。

TM鈴木

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