「球数制限」という言葉が頻繁に使われその現状を取材したTV番組の内容は、今の風潮を反映しその有効性を説いているものでした。
しかし賛成派の一方的な意見・考え方だけを取り上げているため、反対派の意見が全く見えない「ただのニュース」となり、その本質を問わないどこかもどかしい内容だったのです。
ルールだけを適用させてもそれは表面的な“数”で選手の行動を縛るだけになってしまい、なんら解決策にはなりません。
メディアが取り上げないなら動きを分析するプロ、TM鈴木がその本質を伝えましょう!
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本質が視えない

球数を厳しく定める「ピッチスマート」の効果は?
賛成vs反対(を匂わす言い回し)と色々と議論は飛び交っていますが、私自身実のところ球数制限にあまり興味はなく正直言えばどちらでもいい!という心境です。
なぜなら球数制限はただの「手段」であり、賛成する多くの関係者がそれを解決策と取り違えているからです。
手段とゴール、勘違い!?
本来の目標は肘・肩のケガを減らすということなので、そのひとつの手段として効果があるならやればいいし、なければやらなくてもいいという意味です。
球数制限の重要性を訴えるあまり、あるいはそこに効果がある!ことを強めすぎるあまり、手段をゴールと勘違いして報道するメディアが多いことに驚くばかりです。

手術名の由来の人に会えるなんて!それだけは評価するぜテレ朝
人の体は球数制限という単一の手段で解決する程単純ではありません!
しかし「人がケガをするまでに投げる球数は決まっている!」という話をした医師の言葉も決して嘘ではないでしょう。
考えるべきはその先
必要なのは仮に球数を制限したことで選手・指導者含めた現場から何らかの思考改革を生み出されること!なのです。
それが出ないということは球数制限をただのルールとしか捉えていない証拠、それでは他に沢山ある決め事となんら変わりはありません。
人の野球に対する、あるいは投げることでケガをするという考え方に変化を生み出すことが最も大切なこと。
球数を制限せざるを得ない状況を「しめた!」「良い機会だ!」と捉えられる思考を持つべきなのです。
メジャーの350勝投手グレッグ・マダックス氏(アトランタ・ブレーブス等で活躍)は、“精密機械”とまで言われる制球力で、27個のアウトを27球でとることを本気で考えていたそうです。
つまりはそういうこと!与えられた条件の中で最高の結果を残すことを目標とすれば、球数制限があろうがなかろうが関係はないのです。
ピッチスマートを問え

アメリカでは当たり前
仮に球数制限を導入したとしてそれに対応できない人も日本には一定割合はいるでしょう!いわゆる「投げ込み信者」の元選手や指導者・高野連関係者等。
しかし人間は決して頭が働かないわけではありません!
色々な問題・課題を解決とはいかないまでも、良い方向へ導くための方法・手段を考え実行する人も少なからずいる。そう!常識からはちょっと逸脱した人達がね!
考え方を変える良い機会に
今までの方法を変えられない保守派を頭が固いとか石頭だとか老害だとかいうつもりは毛頭ありません。
むしろ人間なんでそういう人達がいるのは当たり前なんですよね。
若い人達がそういう指導者や関係者の影響を受けて同じように保守的(球数制限に否定的という意味)になってもなんら不思議じゃない。

実例を紹介
例え少数派でもいいんです!考え方が違う!常識に縛られない人がいるってこと!球数が減るならその制限内で楽しむ工夫をみつける、それが人間の心理というものです。
自分にだされた課題(球数)が50球なら、その中でヒーローになることを考える!見せ球で様子を見ることなく、マダックスのように1球で内野ゴロやフライを打たせる技術を磨けばいいのです。
そういう視点がないから2ストライクでわざわざボールを投げる!といった従来の投球パターンに終始してしまう!全くもって“引出し”が少なすぎます。
だから経験値でしか指導できない「投げ込み」信者指導者が幅を利かせることになるのです。
日米における決定的な差
球数制限を議論するとき大きく抜け落ちていることがあります。それは本人が何のためにそんなにも球数を投げ続けなくてはならないのか?
今の高校生でさえ、小・中学生だって監督に言われたから投げた!と考える本当のおたんこなすはほとんどいるわけがありません。
もちろん勝利の為でもあるけど、根本にあるのは自分が投げて(打って)勝ってヒーローになりたい!からです。
日本の野球現場というか日本のスポーツ界に決定的に欠けているのがこの考え方、今ふうにいうなら「リスペクト」です。
ルールに縛られる日本人
ルールを作ってもそのルールをただ守る(だけ)ことに縛られる日本人。
かたやそのルール内で存分に楽しもう!楽しませよう!とするアメリカ人(アメリカ人がどこまでピッチスマートを理解しているかは疑問が残るけど)。
ピッチスマートの導入で今までなら9回(ジュニアは7回)まで投げて勝ってヒーローになれた!から、「規定の球数内で全てを出し尽くす!それが自分の責任」という考え方に変われる。
常識にばかり縛られ固定観念ばかりに左右されるとそういう思考には向かいません。
さらにいえば、球数だけでなく「力の入れ具合(全力投球具合)」も是非!数値化すべきでしょう。
そしてその情報もピッチスマートに加え、2つの要素を掛け合わせたスタンダードを数値化するべきでしょう。
特にアメリカなら全力投球じゃなく8割で相手を抑え込む能力の獲得につながり、指導者側のその要素を高める効果も期待され、球数制限と合わせれば従来よりさらに異なる恩恵をもたらす可能性があります。

この顔が野球に対する捉え方の全てを物語る
なぜ1人のピッチャーにそれ程投げさせねばならないのか?なぜ他のピッチャーを使う余裕をみせられないのか?
自分がそうした従来の考え方に初めて異を唱え改革断行のリーダーになる!誰もやらないことを自分がやる!
それこそがチャレンジング・スピリットです。
選手も指導者もそういう人が日本に一人くらいいてもいいのではないか!
だからこそピッチスマート(球数制限)の本質を理解するべきなのです!選手・指導者・そして親達がね。
ここさえ読めば一目瞭然

速い球を投げたい!思いを変えられるきっかけになる!
▼球数制限を扱った番組内容には大いに不満を感じる!その有効性を暗に肯定しその肉付けを揃えただけに過ぎなかった
▼球数制限を手段ではなく“魔法の薬”のように扱っている(扱うようにみえる)が、あくまでいち目的達成の方法でしかなく、他要素の有効性も合わせて考えるべき
▼ピッチスマートの導入(仮にすれば)は従来の考えを変える良いきっかけになる!余計な球数を減らし決められた数で自分の責任を全うしリスペクトを得られる環境をつくりたい
▼ピッチスマートは球数だけでなく8割の力でバッターを抑える技術を学べる良い機会と捉え、選手・指導者がその考えを元に手段を模索する思考に変われるはず
TM鈴木