投球時の肘外反ストレスを軽減:ケガを回避する投げ方~投手:大谷翔平のピッチングスタイルを検証してわかる驚愕の事実~

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日本から移籍する投手のほとんどが当該シーズンまたは数年以内に肘(肩)のケガを負い、戦列を離れる(DL)という事実をご存知だろうか?

中には手術を回避するケース(2016年田中投手は60日のDLから戦列に復帰)もあるが、多くは手術、そしてその後に調子が上がらない状態が続き戦力外となる場合が少なくない。

こうした中、今年海を渡ったサムライがビックリーグの話題をかっさらい、しかも彼は二刀流というバッターとピッチャー双方の役割をこなして観客の心を引きつけているのだ。

大谷翔平、投手であり打者であり、彼が今後肘(肩)のケガに苛まれるのかは誰にも予想はできないが、独自視点で観るとケガのリスクを回避しながら最大限のパフォーマンスを発揮できる能力が見えてくる。

今回はピッチャー:大谷翔平の特徴的な腕の使い方を検証し、肘の故障を引き起こす「外反トルク」を下げるための方法をご紹介しよう。

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投手:大谷「投球の妙」

投球動作 by Ohtani

大谷翔平投手はその投げ方、特にコッキングから加速直前までの投球腕動作が同じ背丈の選手とは明らかに違い、それが現在までそれなりの結果を残す大きな要素の一つだと考える。

MLBでは国籍を問わずエース級が毎年肘(肩)を故障し戦線離脱が後を絶たないが、大谷投手は肘へのストレスを最小限にする独特の腕の使い方に大きな特徴があるのではないだろうか。

最大にせずとも最高を記録

腕振りが速くなる程肘内側ストレスが↑

理由はとても簡単で大谷投手は加速期の肘の外旋トルクがそれ程大きくなく、それでいて160km/h前後のフォーシームを投げられるからである。

投球腕は球速を上げるために投球時の途中から急激に加速するが、その際①肘の外側への捻り、①’曲げている状態から伸ばすという2つの動作を0.3秒程度で急激に変化させなくてはならない。

コンパクトかつしなやかな腕の振りによって余力を残して最高(に近い)球速を出せるから、肘の負担は他の(余力を残さずに投げる)投手と比べればそれ程大きくないのである。

スプリット・スライダー等の変化球も多くはその(外旋位が大きくなりすぎない)腕の振りで投げられるため、肘の内側側副靭帯に加わる牽引力(トルク)は最大限に大きくはならない。

同じ剛速球投手であるNYヤンキースのアルドレフ・チャップマンは胸の開きや後方への腕の引きはとんでもない角度に達する。

これだけ腕を引いていれば勢いは当然つくが・・・

矢をできる限り後方へ引けばその初速や球速は当然速くなり、十分な引っ張り力があればボールに勢いを十分伝えることができるものの、肘の牽引力(ケガのリスク)は高まってしまう。

肩の軟らかさが示すもの

いったいどこが凄いのかわかりますか?

大谷選手のさらなる特徴は肩甲骨周囲筋の驚愕の柔軟性であり、実際の画像がこれ!肩甲骨が外転し(背骨から遠く離れ)上腕骨内旋/前腕回外、つまり肘を介して曲げられた腕が最大限内側に捻じられているのである。

インナーマッスルと呼ばれる棘下筋・小円筋を目一杯伸ばすことができる“オオタニ”ストレッチ、ここがしなやかに機能することで、投球時のボールリリース直後から急減速で止まろうとする腕振りへのストレスが解消することになる。

肩甲骨を土台とした一連の“投球腕”への機械的負担は格段に低下し、投げることに集中できることは投手の最大にして最高の武器を得たと言えるだろう。

ここから肘に大きなストレスが!

上腕と胸郭(肋骨)をつなぐ肩甲骨周囲が驚く程柔らかいので、腕をコンパクトにコックさせても(矢を後方へ目一杯引くことなく)、腕振りが最高速になる(加速できる)から、今の球速や変化が鋭い!これは投手:大谷の大きなアドバンテージである。

デカい(身長・体重)から凄い球が投げられるのではなく(もちろんそれもあるが)、柔軟性があるから球速が上がるわけでもなく(確かに一理あるけど)、実は彼のコックから加速にかけての腕の振り方が最大の特徴と観る!

バックスイングからのその腕振りでピッチングの妙を作り上げ、またそれが球速を高め変化球の抜群のキレを生んでいる!そういう意味で彼は本当に野球の申し子なのだろう。

スポーツ動作は非日常

うっ腕が!ぎゃ逆側向いてるけど・・・

投手の肘・肩のケガの原因を特定することは非常に困難である!その理由はどれもこれもさしたる確証がないから!

ただ上の画像を見ればおそらく誰でも理解できるのではないだろうか?なぜ肘を痛めるのかを!

それは投球時のあるポイントで腕が “あらぬ” 方向を向いてしまうことが最大の要因だと個人的には考えている。

外反ストレス

肘の外反ストレス

当該画像はスリークウォーター(ほぼサイドスロー)ぎみだが、オーバーハンドスローも大体同じで、投球腕は加速期ででこの “あらぬ” 方向を向いてしまうことは少なくない。

これが俗に言う腕の“しなり”であり、学術的には外反ストレス(トルク)等とも呼ばれているが、肘の故障の最大要因はこの外側に反ってしまう腕の形だと考えている。

しなりが出ないとボールに勢いはつかない!つまり球速は上がらない!そしてボールのキレも生まれない!なぜなら腕振りがムチのように柔らかくならずカクカクしてしまうからだ。

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ボールに速度を増す加速期ではこのしなりがあればあるほど、体は前(キャッチャー方向)に向かうにも関わらず、ボールを持つ先端は後方に残る!これが“しなり”の正体である。

ダルビッシュ(CHG)しかり、チャップマン(NYY)・シンダーガード(NYM)しかり、150km/hを優に超すフォーシーム、変化球に抜群のキレがある投手達ならこの腕の“しなり”になんとか対抗しうる体の使い方が必要なのである。

大谷投手の凄いところはこの外反ストレスを軽減しながら(たたんだ腕の使い方で)160km/h前後のフォーシームや鋭いスライダー・スプリットをバンバン投げ込んでくるところにある。

ケガと縁遠い投手達もいる

が、しかし!である。

150km/hを楽々と超える球速や鋭い曲がりの変化球を多投し、しかも中4日間隔で何シーズン投げてもケガをしない投手もいる。

こうした投手達はしっかりと決められたローテを守り(時には休養も含めたDLに入ったりして)、毎年200イニング以上を投げている。

彼らは決して腕っぷしが強いわけではない!体の使い方を熟知しているのである!ある者は8割で投げてバッターを打ち取る術に長けているし、ある者は打者を数球で打ち取る技術を極限まで磨き球数を減らしているのである。

また肘そのものに適度なストレスをかけ続けることで血流増を促し、疲労回復を早期に改善するという試みもあり、今大きな注目を集めている。

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こうしたコンディショニング的アプローチは、肘を痛める大元の内側側副靭帯に隣接する屈筋腱、ここを如何に緩められるかで投げるパフォーマンスが大きく変わるため、是非、参考にしてほしい!

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体が違えばやり方も変わる!

ケガを恐れていてはパフォーマンスが上がるはずもなく、だからといって肘を壊してしまえば、例え再建術を施しても2年弱の期間をリハビリに擁することも考えものである。

今のところケガのリスクフリーな大谷選手、シーズンが進むにつれてビックリーグの雰囲気には慣れても、様々な要因からなる体の疲労が蓄積してくる可能性は高い。

しかし彼には肘のケガに至らない(であろう)絶妙な腕振り技術があり、対戦相手を圧倒的に制圧する程の驚異的なパフォーマンスを併せ持つ、比類なきスーパーアスリートである。

加えて毎日のMLB環境における試合・練習を含めたルーティン(他選手からすれば楽しみがまったくない!と思われるような)を、心から楽しむことができる性格特性を併せ持つ。

“仕事”ではあるが自分が楽しめてこその野球人、そこに大いなる魅力を感じているからこそ世界一を目指す猛者達に全力でぶつかっていける環境もまた、致命的なケガを回避できる理由なのかもしれない。

今後彼はどこまで伸びていくのだろう?個人的には静かに、そして冷静にその投げ方や動きの変化とその時の気持ちの変化を見守っていきたい!(^^)!

まとめ:

two-way player:二刀流の真骨頂

MLBでは毎年決まって肘(肩)の故障に苛まれる投手がいる中、現在まで好調を維持する大谷投手の投げ方からわかる肘の負担軽減な腕振りにフォーカスした。

コッキング動作を最大限にせずとも、十分な加速を得られるコンパクト且つスムースな腕振りにその秘密があると考えるが、その源は肩甲骨周囲筋の柔軟性も要因であろう。

肘の外反トルク(ストレス)は同じ体格や同じ球速を投げる投手と比べ数%程低く抑えられ、それでも160km/h前後の剛速球や鋭く落ちるスプリットを投げ分けられる体性能は、超一流の証でもあろう。

過酷日程の中同じルーティンを心から楽しみ、ビックリーグの猛者達とハラハラドキドキの対戦に心躍らせる!そうした野球少年のような精神性もケガのリスクを減らす要因であろう。

「投げる・打つ・走る・飛ばす」、大谷選手が持つ身体特性は彼の性格特性と相まってケガをしにくい状況を創り出しているのかもしれない!(^^)!

TM鈴木

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