スポーツ動作ではしなやかという表現が良い意味で捉えられ、その動きは一流の証明となります。
しかし今、アスリート達はむしろ力強さを求める傾向にあり、そこにはしなやかという意味の本質をはき違えた誤解が生じています。
しなやかを読み違えると競技力アップには繋がらず成長過程では大きな損失となります。
しなやかの真の意味を探りその考え方や獲得のための実践法に繋げましょう。
Contents
しなやかを生む考え方
「しなやか」とは弾力性があってよくしなること。動作がスムースでギシギシしていないこと等と言われます。
「しなやかさ」と柔軟性はお互いに深く関係はするもののイコール(=)とはなりません。
一体どんな動きがしなやかなのかを観てみましょう。
しなやかが生む誤解
日本人は「しなやかさ」=女性=ヨガ/ピラティスといったイメージでみることが多いのではないでしょうか。
「しなやかさ」は女性だけが持つ象徴ではないし、逆に力強さを男性だけが持っているとしたらそれは大きな間違いです。
また「しなやか=柔らかさ(柔軟性)」でもないので、柔軟性があるだけでは「しなやかな動き」にはなりません。
これらはいずれもメディアが煽って視聴者受けするプログラムに仕立てたという経緯があり、単なるイメージに過ぎません。
こうした映像はその多くが柔軟性のある女性を起用してヨガやピラティスでのイメージを強調するものでしかないのです。
では本当のしなやかさとは何なのでしょう?
しなやかの背景に強さあり
しなやかさは強さを生みます。
その昔はカール・ルイスとベン・ジョンソン(ふるっ)、現代では(それでも少し古いが)ウサイン・ボルトとタイソン・ゲイ(あるいはボルトのチームメイト:ヨハン・ブレイク)等。
ボルトはしなやかに走るけどゲイは力強さが際立っている、つまりしなやかさと力強さの両極にあったわけです。

動きの対極にいたふたり
ゲイは走りがとにかく直線的で体がブレることなくただひたすら真っ直ぐ走りましたが、ボルトは体が左右にブレて、前後に弓のようにしなりながら走っていました。
全盛期のボルトは主要大会で負けなし(引退を表明した世陸では既にやる気が失せていた!?)ゲイの後塵を拝することはありませんでした。
ウサイン・ボルトがなぜあれ程速かったのか?
ひとつの考え方ですがしなやかに走れたからでしょう。
しなやかさには元々(力)強さが備わっているのです!
それが“力強さ”だけのゲイやブレイクがボルトに勝てなかった大きな要因です。
黒人のダンスはしなやか!?
黒人のダンスはなんであんなにしなやかなんだろうか?
多くの人達の抱く感想ではないでしょうか。

こういう光景が日常の世界
エグザイルのダンスは確かにパワフルだけどなんだかカクカクしていて、しなやかさのかけらもないのはなぜなんだろうか?
三浦大地のダンスはとてもキレがあるけどなぜか黒人の動きとは違う!
彼らの動きを「キレッキレッ」と表現してますが、本当にキレがある動きにはその背後にしなやかさが潜んでいるのです。
感覚で捉えるとは例えば、音の背後に聞こえるビート音に動きを合わせられるということ。
ダンスの上手さと競技能力を観る時、例えば選手の8割近くが黒人で占められるNBAを考えると腑に落ちます。
バスケットのような対人スポーツだと、1対1の場合は自分の重心をわずかにずらしながら動いて相手をいなす/かわす能力が凄く必要なのです。
自分の重心変化は常にコントロールできて、相手の重心をアンバランスになるよう仕掛ける!
バスケに限らずサッカー・ラグビー・アメフト・果ては相撲等の組み合うスポーツも、いってみれば重心を如何にずらしてアンコントローラブルにするかの“化かし合い”なのです。
しなやかさに必要な要素

しなやかさの源は?
しなやかな動きはどうすれば獲得できるのでしょうか?まずはしなやかさの正体を探ってみましょう。
注目されない骨盤
この事実を知っている人は日本でも一握りだし、骨盤をどうやって動かせばいいのか!その手段を実践できる人材はわずかしかいません。
不思議なのはしなやかさを求めようとしているのに、骨盤や脊柱の動きをまったく気にすることなく、トレーナーから与えられたメニューを黙々とこなしていることです。
彼らはムチのようなしなやかさを身に付ける!と称し、その要素につながらないヨガやピラティスを模し自重トレを施しコアトレの動きを実践しています。
なぜ腕や脚だけを伸ばしたり動かしたり、無駄なポーズをとったり、コアを固めてしまうのか?
教える側・受ける側の知識・技術不足、そしてしなやかを柔軟性と誤解しているからです。
骨盤や脊柱は腕や脚のように動きが目に見えてわかるわけではありません。
見た目に動きがわからずその知識や方法もない!
かくして「骨盤は動かない土台・脊柱は無視」という解釈の元、意識して動かすこともなくその感覚も鈍くなるという悪循環におちいるわけです。
チーターが示す走りの極意
莫大なネット情報を利用できる現代においてさえ、未だリソースを得る手段として活用できていない状況があるのは実にもったいないことです。
地上最速の動物であるチーターも今ではネットを通じてその動きを細かく観ることができるのですが。
時速100km/hを超えるチーターの走りをよく見ると、骨盤や脊柱(背中)が波のように“うねって”いて実によく動いていますね。
しかもそのうねりは骨盤から生まれ上半身に向かっていくけど、背中の途中までいくとす~っと消えてまた次の “波” が現れるという連続性があります。
骨盤を前傾・後傾させてうねりを生み出しているんですよね!このチーター普段の姿勢や歩く姿は骨盤チョー前傾です(笑)。
手足が動いてバネのように働くのはもちろん、骨盤から脊柱が同じようにバネとして働き、波打つうねりができるからあれだけ速く走れるのです。
骨盤・脊柱等のバネが手足のバネと連動して地面を強く蹴れるから、前に進む勢いにつながるのですね。
しなやかさとは速さにつながり(地面を蹴るためのバネの)力に繋がるわけです。
骨盤が動くには?
骨盤・脊柱といった骨格のコントロールができて、それを速く・力強く動かせる能力が身に付いてはじめてしなやかな動きとなるわけです。
骨盤・脊柱・胸郭・肩甲骨といった骨格の動きは柔軟性や可動域という要素とも深くつながります。
ではこうした骨格の動きを獲得するにはどうしたら良いのでしょう?

ここの動きを感じられるか!
最も重要なのは骨盤を前傾させて動けること!日本人なら+5度骨盤前傾が理想です。
なぜか?といえば骨盤前傾にしないと黒人のように骨盤の動く感覚がわからないからです。
骨盤がニュートラル(中間位)だったり後傾位では骨盤はほぼ動きません。
骨盤を前傾にしたまま動けない、つまりニュートラルに近い傾斜角の日本人は骨盤を動かすことができないのです。
黒人はリズム感がいいからダンスが上手なのではなく(もちろんそれもあるし年中踊る環境もあるけど)、こうした骨盤を自在に動かせることでリズムにのれるのです。
骨盤前傾が生み出す様々な効果

骨盤前傾する黒人アスリートはしなやかな走りの典型
骨盤前傾は日本人選手の動きの本質を変える程の絶大な効果をもたらす可能性があります。
それを使いこなせないでいる日本のスポーツ界は是非!骨盤前傾思考に注目すべきです。
動きの観点から一例を紹介します。
感覚が高まるとしなやかになる!?
我々は筋肉を “ただ” 使い強くすることばかりに目を奪われがちですが、その瞬間に生じている感覚にはほとんど気を配ることはありません。
でも本当に大切なのはこの時感じる感覚なんです。
なぜなら感覚が力やスピードのコントロールを生む元になっているからです。
ではその感覚をどうやって生み出すか?といえば、今まで使ってない/使いにくいパーツを動かすことでしか感覚は鋭くなりません。
そこで骨盤、さらには骨盤前傾に注目が集まるわけですね。

骨盤前傾で動かせるテクニックがある!
筋トレを含めウェイトトレ―ニング・自重トレ・ストレッチ・ヨガに至るまで、従来の動きは簡単にいえば脚や腕を中心に動かしているに過ぎません。
体幹は腕や脚の動きのベースとなるよう固めようとする傾向にありますが、実はこの考え方こそが何も生み出さない・動きの本質に気づかない根本的な要因です。
目の前にウエイトがあればそれを持ち上げることに気を配るのは当然のように見えますが、本来フォーカスすべきは重りを使って動かすという外的刺激を如何に感じ取るかです。
骨盤・脊柱が自在に動くようになれば体は刺激を受けやすくなり、外部刺激に対して色々な部位・筋肉が反応しやすくなるわけです。
TM鈴木がおすすめする+5度骨盤前傾トレーニング『かるのび~kaRuNobi~』を身に付ければ、こうした骨盤の動きの獲得につながり外部刺激に対する感度が大幅に高まります。
力強さに注目しすぎるリスク
確かに見た目には良いかもしれませんが、力強さだけにしかフォーカスできない今のスポーツ環境は非常にリスクがあります。
これはスポーツ現場に技術系練習以外のトレーニング要素、最たる例として筋トレ(ウエイトトレーニング)が採用されたことと無関係ではありません。
確かに筋トレしていけば筋力も見た目も変わり、その筋力動作に対する考え方も身に付き「力は真なり」と捉えることが容易かもしれません。
相手とぶつかってもぶつかり負けしない・体幹がブレないということが、一見するとパフォーマンスを高める絶対要素につながりそうです。
しかし現実にはそうとはならず、むしろスポーツで必要なのは力の入れどころ・力の抜き所といったメリハリです。
しなやかとは正にこの力の出し入れをコントロールする能力です。
力を入れっぱなしにするとその分動きも状況判断も鈍るため相手の意志も掴めず、相手に勝利の機会を与えてしまうかもしれません。
力を時間差で上手く動作パーツ(手・足・道具等)へ伝えられる能力に優れる人は、この力の出し入れがものすごく上手です。
ビート音と骨盤の動き
日本人アスリートが絶対にしない/やりたがらない動きの要素ってなんだと思いますか?
それはダンス!
欧米と日本のスポーツ文化(プロでもアマでも)で最も異なる趣向の違いは、踊る環境があるかないかです。
TM鈴木はトレーナーとして大学のアメフト・サッカー・野球についたし独立リーグでも仕事しましたが、ロッカールームでは必ず音楽が流れ誰彼ともなく踊っている環境でした。
まさにその通りです!

黒人のリズムは骨盤が動くから
そのセンスがどこからきているのか?は彼ら/彼女らの骨盤前傾にあるのです。
前傾角は日本人とは明らかに違って急角度(30~40度以上)であり、この前傾が骨盤と脊柱の感度を高めている要因です。
感度が高まれば骨盤も脊柱も動きやすくなり、あとはビート音を捉えて(ダンス)を続ける環境さえ整っていれば誰もが上手くなれるという理屈です。
力強さを背後に持つしなやかさは、筋トレの考え方では決して競技力が高まらないことを意味しているわけです。
力を逃す感覚がしなやかさにつながる
黒人がダンスでお尻を振ってるようにみえるのは、実はそうじゃなく骨盤を自在に動かすという感覚なのです。
このビート音に合わせて骨盤を動かすことは同部位や脊柱・股関節に働く力を逃すことに繋がります。
骨盤から動き始め力を股関節や脊柱に伝えながら、何割かを一旦骨盤や脊柱といったコアで逃すと、体幹が波打つような動きができるわけですね。
こうしたコアで力を逃がす感覚は骨盤前傾で動けることで初めて、「あっ、こういう感じなのかぁ」というのがわかるんですよね。
渡辺雄太選手がNBAで常時出場できるようになるためにはダンス、というより主旋律ではなくビート音に合わせて体を動かせるセンスが必要でしょう。
USAなんとかを踊ってる彼をみていたら骨盤や脊柱が全く連動せず、これではNBAのロスターを勝ち取ることはとてつもなく難しいと考えてしまいます。
日本人は様々なトレーニングを競技力向上にとり入れますけど唯一ダンスだけはしませんね。
競技選手がダンスするっておかしい!という発想や環境が、そもそも間違ってると思うのですけど、アスリートもその先入観にそろそろ気づくべきでしょう。
「ダンス=恥ずかしい」という思考、その考え方そのものがしなやかではありませんよね。
実はそうじゃなく踊れることの真意を知れば、ダンスは絶対トライして損はないのです。
ウサイン・ボルトはもちろん、何せあのイチローでさせロッカールームでは踊っていたのですから!(^^)!
まとめ:

黒人アスリートように動きたいなら!
▼しなやかさを求めるスポーツ環境が本来の動き作りに欠かせない!今の日本人選手にありがちな力強さを求める風潮は競技力の隔たりに陥り力を発揮できなくなる
▼しなやかとは背後に力強さを合わせ持ち、男性にも女子にも必要な動きの要素
▼しなやかさは黒人に学ぶべし!+5度骨盤前傾で骨盤の動きをコントロールできる体環境を確立することが必要
▼しなやかさは感覚を鋭くした結果得られる要素!特に骨盤・脊柱・胸郭・肩甲骨・股関節といった部位の力を逃す感覚を高めるにはダンスがおすすめ
TM鈴木