ピッチングとはただ球が速ければ良いというものではない。
しかし球が速いことはピッチャーにとって最大にして最高の潜在能力でもあり、野球における選手の価値を大いに高める必須要素となることは間違いない。
そこで人類最高(球)速を出せるピッチャーの条件を骨盤前傾マニアの視点から探ってみたい。
人類史上初の170km/h(106MPH)越えにはどんな才能が必要なのか?人種の違い・体格差を含めて検討する。
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ルーク・リトルに観る球速の才

大学生ながらプロ顔負けの159km/hで世間の度肝を抜く
日前に大学生ながらMAX105MPH(169km/h)を記録したLuke Little(ルーク・リトル)投手は若干19歳の大学生(San Jacint College Taxas)である。
彼に観る球速の才を述べるまでもなく、そこには大きな体格的要素が存在しているといっていいだろう。
体の大きさ
デカさは武器になる!体の大きさ、具体的にいえば身長がそれにあたる。
高身長こそが球速を追究する際の最も重要な要素になるからだ!以下にその理由を論じよう。
リトル投手は身長203cm、NBAやNFLからもスカウティングされそうな大きさを備え、さらに体重も108kgあることから非常に均整のとれた体格といえよう。
彼はここ2週間あまりの間に102マイル(約164.2キロ)、103マイル(約165.8キロ)と立て続けに球速の自己記録を塗り替えてきた。
でかい体に力強い腕振りは正に19歳という若さの勢いを感じずにはいられないが、今はどちらかといえば筋力を目一杯注いで投げている雰囲気である。
映像での投げ方を観ると肩甲上腕骨周りはむしろ硬そうなことから、今後腕のしなりを引き出すコンディショニングによってさらにレベルを上げられるとも考えられる。
リーチ/ウィングスパン
一般的に体がでかければウィングスパン※1)も長いといわれ、リトル投手の腕の長さ(リーチ)も球速アップに大いに貢献していると考えられる。
※ダルビッシュ投手は196cmの割に腕も短く手(指)も小さいといわれるが。

両腕を横に広げた長さ:ウィングスパンも球速アップの必須要素
腕が長いとそれだけ軸となる中心(腕の場合はその大元である肩甲骨)からの半径が大きくなり、遠心力が増すことでボールを持つ手にあたる先端部の速度が速くなりやすい。
ただし円軌道の軸がしっかりと(固定ではなく)安定した状態を維持することが条件だが、この要素についてはある程度後天的に高めることが可能である。
※1)両腕を肩から水平に真横に伸ばした時の最も長い指同士の長さ
注)遠心力を高めることで肩のケガのリスクが増すとの意見もあるが、腕の長さによって遠心力が高まりやすいのと故障リスクは別の問題である
手の大きさ・指の長さ
当然ながら身長が高ければ手(てのひら)も大きく、指も長くなる。
リトル投手の場合、身長203cmならおそらく指も長くボールを長い指を巧みに使ってホールドできると考えるほうが自然であろう。
2m前後のNBA選手達がバスケットボールを片手で保持できることを考えれば、リトル選手とて同じような大きな手/長い指を有していると考えて差し支えあるまい。
メジャーの公式球は日本のそれと比べ若干大きくしかもかなり滑るといわれる。さらに統一球とはいいながら一個一個微妙にその形が異なるため握りを調整するのが難しい。
180cm前後で手指がそれ程大きく長くない日本人投手とすれば、球数を投げる程微妙に余分な力が要求され、ボールを自分の投げやすい状態でホールドできないわけである。
これでは日本人本来の権トロール・ピッチングができるはずがない。
出身は違えどMLBのピッチャーはそのほとんどが190cm前後かそれ以上のデカいやつばかり、つまりあの滑りやすいボールを自然な握りで保持しながら投げられるというわけだ。
細かなことだが体格的な差異とは球数が増えれば増える程大きく影響すると言わざるを得ない。
人類最速男:“キューバン・ミサイル”

球速170km/hに最も近い投手はだれだ?
人類最速投手はいわずとしれたアロルディス・チャップマン(Aroldis Chapman:NYY)、身長は193cmありその体格的要素が最速169.1km/hを叩き出す絶対的要因であろう。
“キューバン・ミサイル”ことチャップマン投手の体格的なアドバンテージにフォーカスしてみよう。
日本野球が否定してきた“筋トレ思考”
どこぞのスポーツコーナーで張本何某かが大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンジェルス)をこうこき下ろした
ダメだねぇ、大谷は。あんな体つくっちゃダメ。プロレスじゃないんだからね。野球に必要なものだけでいいんです。ケガしますよ

エビデンスに基づく実践が使える体になる
しかしメジャーでは筋肉に適度なストレスを加えその最大出力を高めることが“理論上”有効とされ、いわゆる筋トレがノーラン・ライアンの時代から実践されてきている。
重いもの(ウエイト)を持ち上げていれば体がでかく結果的には大きくなるがそれは見た目を重視したものではなく、野球に特化できる機能性を高めているに過ぎないのだ。
そのことが日本野球を愛する“信者”にはどうにも理解できない!みずからの考え方を柔軟にすることで人はさらにレベルアップできるにも関わらずである。
比類なき体
まずはこれを観てほしい。
人類最速を誇るチャップマン投手の体つきをみればそれがあながち外れているとは思えず、むしろ的を得ているといっていいのではないだろうか。
ことある毎にその張本何某かのコメントに意義を唱えるダルビッシュ投手(シカゴ・カブス)が、体を大きくしようとしたのもこの考え方が根底にあるからだろう。
多くのファンが彼の極太の左腕に度肝を抜かれたようだが観るべきところはそこではない。
黒人特有の体格特性
キューバ出身のチャップマン投手、彼の骨盤は明らかに前傾している!
ピッチングを披露する映像(おそらくは太陽が右斜め後方から背中越しにあたっいる)をご覧いただきたい。
下背部からお尻上部にかけての日に広いエリアにかけてしっかり日が当たっているのに対し、お尻の最も高い位置からボトムは明らかに影になっているのがお分かりだろうか。
骨盤が自然に(過度に)前傾しているためお尻がしっかり引上げられその位置が驚く程高く、動く時背中との連動が効く姿勢、つまり腰椎カーブの凸凹とメリハリが効いている。
日本人の若年女性に多い筋肉の緊張が効かずに骨盤がただ前傾しているのとはわけが違う。
正に体を動かしやすくする理想的な(ネグロイド人種にとっての)過度の前傾なのである。
カードゲームをする映像をみてもしっかり左右の座骨上に上体をのせて座っているのがわかるだろうか。
彼にとってこの(骨盤前傾位)形が自然な姿勢なのである。
この骨盤前傾で動ける比類なき体が現時点で人類史上最速の169.1km/hを叩き出す原動力となっていることはいうまでもない。
特筆すべきリーチ&指の長さ
さらに彼の体格的優位性を表すのがそのリーチ、そして手指の長さである。
前述したように身長が高ければリーチ(ウィング・スパン)も手・指も長くなる傾向にあるが、チャップマン投手も例外ではない。
分節毎つまり上腕・前腕・手のひら・指各々が明らかに長く、中指先端が膝関節にかかろうかという程である。
あくまで見た目だがリーチや指の長さではチャップマン投手のほうがリトル投手より確実に長く、またそのリーチを上手くしならせる投球動作も比較にならない程素晴らしいといえよう。

脊柱・胸郭・肩甲骨の驚愕の動きは過度の骨盤前傾があればこそ
そのしなやかさを生み出す要素として肩甲骨を覆う筋肉、特に見た目ですぐにわかる大円筋と棘下筋の動きにも注目してほしい。
腕をぶらんと下げている時の扁平する(ひらたくなる)加減やバックスイングにおいての自然な盛り上がり、おそらくは協働する小円筋の機能も含め抜群にしなやかにみえる。
投げ方の違いを生む機能の違い

骨盤前傾はしなる腕振りに大きく貢献
“最速”とういう括りで張り合える両投手だがその投げ方には大きな違いが見られる。
二人の投球フォーム(メカニクス)を観ながら日本が世界に誇る二刀流と最速163km/hの潜在能力にも注目してみよう。
体の機能性による投げ方の違い
リトル投手はアングロサクソン(白人系)特有の力強い上半身と太く長い腕を最大限利用した投げ方である。

強靭な上半身を力強く使っている
かたやチャップマン投手は体も腕の使い方も非常にしなやか!意図的に筋出力を高める作業を継続してきたことで後天的に力強さが加わり平均球速を維持できているといえよう。
前者がどちらかといえば強靭な上体の力で腕を振る投げ方なのに対し、後者は地面反力で得たエネルギーを失わずうまく上半身に伝え、しなやかでムチのようにしならせる腕振りを特徴とする。
あくまで予想だがリトル投手の投げ方はケガ、特に肘のケガにつながりやすいと考える。
比較的“腕投げ”に近く上腕骨外旋による肘の外旋トルク(負荷)が大きくなる投げ方をしているからだ。
仮にトルクが大きいのであればチャップマン投手とはいかないまでも、今より少なくとも+5度骨盤前傾によって脊柱・胸郭・肩甲骨の可動域をもう少し引き出すほうが賢明だろう。
でないと肘にかかる外旋ストレスを減らすことができず、ある時突然内側側副靭帯が悲鳴をあげることになる可能性が高い。
日本最速投手の未来像
では日本最速を誇る大谷翔平投手(エンゼルス)、そしてその実力はまだ未知数だが最速163km/h佐々木朗希投手(ロッテ)の今後はどうだろうか。
大谷投手は193cm、身長だけならチャップマン投手と同じ!佐々木投手も190cmで日本人としてはやはり大きい部類、しかしリーチや指の長さでは人種差がでるかもしれない。
さらに“キューバンミサイル”との最大の違いは見た目45度に迫るあの骨盤前傾姿勢だろう。
人種差ともいえるが、この点に気づいて体を改善していかない限り彼の球速を上回ることはできないと考える。
チャップマン投手は左脚の鋭く力強い蹴りで大きな地面の反発力を生み出し、その力をロスなく右股関節から脊柱の“しなり”、さらに胸郭を伴う肩甲骨の大きな動き、そして鋭い腕振りへと繋げることができる。

骨盤が前傾することで股関節・脊柱・胸郭・肩甲骨が腕振りと連動
この一連の動きを可能にするのが黒人特有の過度ともいえる骨盤前傾なのである!
求められる+10度骨盤前傾
チャップマン投手自身が気づいているかどうかは別として骨盤前傾は股関節の感覚を鋭敏にし、脊柱(胸郭・肩甲骨含め)の動きに“竹”のしなやかさと強靭な“バネ”を生み出す。
人類最速170km/hに近づくためには少なくとも今より+5度骨盤前傾(理想は+10度骨盤前傾だが)でスムースなピッチ動作をできることが必須である。
理論上、投球動作の最大加速つまりボールリリース直前に腕振りが最高速に達しない限り、球速は高まらない。
そのためには単に腕を伸ばして真っ直ぐ振るのではなく、肘を中心とした曲げ伸ばしのタイミング・胸郭の柔軟な開閉、そして脊柱のしなやかで強靭なしなる動き動きが必要である。
こうした一連の“コア”ダイナミクス(大きな動き)の大元が骨盤傾斜(前傾)なのである。
大谷投手・佐々木投手共に160km/h超えの球速を叩き出す体格的な才は有している!あとは自身の骨盤前傾(傾斜角)に目を向ける視点があるか否か!だけだろう。
球速は投手の最大にして最高の武器である!
もちろんそれだけで打者を打ち取ること保障はないが、ベースに球速があることで投手として最大の優位性を有することに他ならない。
これから身長が伸びる!伸びそう!なあなた/もしくはそういうお子さんを持つ親なら是非!投げることに興味をもってみては(もたせてみては)いかがだろう!
さらに早くから+5度骨盤前傾に目を向けその思考を高めることで、人類初の170km/hを日本人が最初に打ち立てる可能性が近づくかもしれない。
まとめ:

身長は球速を高める大きな武器
▼人類最速に必要な体格要素はずばり身長である!背が高ければウイングスパンも長く手も大きくなり指も長くなる傾向があり球速を高める確立がアップ
▼最速159km/hを叩き出す大学生とメジャー最速(世界一)の左腕にはその投げ方に大きな違いがある
▼黒人特有の過度の骨盤前傾は脊柱・胸郭・肩甲骨といったコア(体幹)のダイナミックな動きを促進し鋭くしなやかな腕振りに貢献する
▼今後身長が伸びそうな子供ならリーチが長く手も大きくなり、速球派としての才覚を持ち合わせる可能性が高いことを考慮すべき
TM鈴木