黒田投手に見る200イニングの価値と運動能力

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18(火)広島東洋カープ黒田博樹投手(41)が引退会見を行いました。

見た目以上に身体はボロボロだったということ、そして何より精神的にタフな世界で生きていくことが困難になった、蓄積された経験という名の疲労は来季回復しないと踏んでの引退だったのでしょう。

今は最後の大仕事が残っています。日本一の奪還!果して黒田投手は最後の花道を飾れるのでしょうか?

今回は41歳まで黒田投手が現役を続けられた理由のひとつである、彼の【運動能力】と先発投手が目標とする【200イニング】登板について迫ってみたいと思います。

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先発投手が目標とする200イニング

日本では投手の契約更改時、来年の抱負を聞かれ「200イニング」登板を口にする投手が結構います。

一方、海の向こうのメジャー(以降:MLB)ではどうでしょう?

先発投手の200イニング登板達成は投手の契約事項に非常に大きな役割を果します。なぜなら200イニングも投げてくれる投手はMLBといえどチームに1人いるかいないかくらい(2015 MLB Statisticsより)なのですから。

MLB's official statistic page detailing player stats with milestone tracker and statcast leaderboard, the latest in MLB technology.

つまりそれだけ働いてくれた、その価値への対価は年棒アップの比率としてはとても大きいものがあるのです。

現MLBLAドジャースの前田投手も200イニング登板を達成すればかなりのインセンティブ(出来高)がもたらされるとの契約があるそうです。

200という数字を達成するためには①「高いパフォーマンス」を発揮し、②「安定してケガをせず」に一年間投げ続けなくてはなりません。

さらに登板数もMLBなら30~33試合登板しなければ達成することは難しいといえるでしょう。NPBはMLBよりも試合数が19試合少ないため登板数も最高でも26~27試合程度(先発完投する確率は高いけど)にとどまる場合が多く、年々難しくなっています。

以下に日本(NPB)とアメリカ(MLB)の登板間隔の違いを表記してみました。

日(143試合): 投ー1-2-3-4-5-6-投   7日に1度の登板

米(162試合): 投ー1-2-3-4-投       5日に1度の登板  

こうしてみると如何にMLBのピッチャーが身体を酷使するか、その一端が伺えます。

結果として、契約条項としても、さらに投手の【タフネス】を表す(しっかりと規定投球回を超えて働いてくれる意味で)指標としても200イニング登板という価値は非常に大きな要素を締めているといえるでしょう。

黒田投手の本当の価値

さて黒田投手です。

黒田投手の場合、ピッチャーにとって致命的といわれる肘や肩のケガは今までほとんどありません(2006広島時代に右肘痛・2008LAD時代右肩腱板炎があるが軽傷)。

第1次広島時代(1997~2007)は先発完投型であり毎年200イニング近く登板していましたし、実際200イニングを超えたのが2度あります。

MLBの7年間では2011年から2013年まで3年連続して200イニングを達成、最終年の2014年も199イニングと大活躍してくれました。

MLB平均でもシーズン平均188イニング超(1319イニング/7年)と、ケガに強く安定ししかも勝ち星もある程度計算できる選手だったことが黒田投手の価値をグングンと高めたのは言うまでもありません。

投球スタイルの変化

黒田投手はMLBに移籍してからその投球スタイルをガラリとかえました。

MLBでは強振するバッターが多く、正直速球派としての勝負ではすべてのバッターに対応した(弱点を突いた)投球という点で不利な状況が考えられたからです。

弱点の克服に対応するために生み出されたのがツーシームやカットボール(打者の手元で鋭く小さく曲がるシュート回転やスライド回転する球)といった速く少しだけ打者の手元で動く球種でした。

この二つを駆使して左右両方のバッターに対しフロントドア(左打者の内から中へ入れるツーシーム系の球)、バックドア(左打者の外角ボールゾーンから内側のストライクゾーンに入れる球カット系の球)というスタイルを使い分けました。

スタイルの変更は黒田投手に大きな変化をもたらし、その投球術は5年連続の二桁勝利となって現れました。

しかもシーズン平均188超のイニング数です。

大きなケガもなく、安定して試合を作れ、着実に勝利をモノにできるこの日本人投手には多くの付加価値がついたのです。

【運動能力】的視点でみる黒田投手

MLBで速球派からの脱皮を図った作戦は大成功だったといえそうです。

しかし私、TM鈴木はもうひとつの視点も見逃しません。

黒田投手はしっかりとローテーションを守り且つ安定した投球を続けられるだけの【運動能力】があったと考えていいでしょう。

この場合の【運動能力】とは投球術に関連した要素が高まったことで良い結果を出すという意味で使っております。

*例えば、ダルビッシュ選手を筆頭とする各種トレーニングによって高まった機能を駆使した総合的なパフォーマンスアップを示す【運動能力】とは意味が違います。

「○○力が高まった」とも捉えられますが、あえて言えば投球自体を『8~9割』程度の力で投げていたのではないかとおもいます。

力を入れずに投げれて、打者を打ち取れることもある意味【運動能力】が高いと言えるはずです。なぜならそれで結果を出しているのですから。

精神的にはもちろんそうですが、肉体的にも力むことなく投げることで以下の3点で有利であったと考えるからです。

・コントロール(精度)のアップ

8割程度でコントロール重視のほうが打者を打ち取れる率が高まることを本人が理解したのではないでしょうか。

・ボールにキレがでる

コントロール重視の投球をすることで余分な力が入らない分、カットやシーム系ボールの回転数が上がり、逆にスプリット系の回転数が落ちて、思い通りの変化で打者を打ち取れたと考えられます。

・ケガのリスクが軽減

当時、30代中盤に入り下降線をたどっているアスリートにとって100%、あるいは全力を使って投げていてはすぐに潰れてしまいDL(故障者リスト)に入ってしまうことは明白です。

黒田投手がなぜMLBで7年もの間安定した投球ができて、シーズン平均188イニング超もの登板ができたのかを考えれば納得がいくでしょう。

無駄な力に頼らずとも総合的な投球術(コントロールやボールのキレ)が改善することで結果はでるということを示しています。

第1次広島時代の力感ある投球に比べると、むしろ力んで投げる感じは彼の投球フォームからは観察できませんでした。MLBでの後半4年程は明らかに力を入れずに投げていたように見えます。

人は力を入れれば入れる程逆にパフォーマンスも精度も落ちてしまいます。如何に力を入れずに投げられるか、この点において黒田投手は【運動能力】に秀でたアスリートであったとTM鈴木は考えます。

如何でしたか!

黒田投手は【運動能力】というポイントを違った方向から眺めて自分のスタイルを確立しました。

力まず・淀みなく・淡々と投げることで先述の3点(コントロールアップ・キレ回転数アップ・ケガのリスク低下)の要素を高め、さらには守備でのリズムを作り味方の攻撃にさえ繋げていたと考えると、黒田投手が如何に “For the Team” に貢献していたのかが理解できましょう。

残念ながら彼の雄姿をみれるのもあと数試合ですが、ひとつでも多く勝ってチームに貢献できるよう頑張ってもらいたいものです。

実は日ハムを応援するTM鈴木ですが(^^+

TM鈴木

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