速く泳げる動きの妙!スーパースイマー:ケイティ・レデッキー~水の抵抗を極限に抑える体と腕と脚のコーディネーション~

シェアする

活況を呈した「パンパシ水泳2018」日本は女子期待の池江・大橋両選手が得意種目で見事に金メダル、男子も渡辺一平選手が200m平泳ぎで金メダルを獲得しました。

しかしTM鈴木が注目すべきは、なんといってもケイティ・レデッキー(Katie Ledecky:アメリカ)選手!

ロンドン2012・リオ2016で計5個の金メダルを獲得し、400・800・1500m自由形で世界記録をもつアメリカを代表するスーパースイマー、今回も出場4種目のうち3種(400・800・1500m自由形)で金メダルを獲得!

国際大会はこうしたスーパースターが出場するので目が離せないし、日本で行われるのだから間近でみる機会に恵まれるわけですね!(^^)!

彼女の記録とその泳ぎについて、動きの妙に迫ってみましょう!

スポンサードリンク

動きの妙を知る!

彼女の次のターゲットはTolkyo2020!

レデッキー選手の泳ぎのメカニクスを詳しく観ていきましょう!

右手の入水(エントリー)から再び入水までの1ストロークと、左足から始まるキックを基準とし、各層(期分け)にわけて観てみます。

参考にしたのは2014パンパシ400m自由形優勝時のメカニクス(動き)です。

特色ある4ビートキック

レディッキー選手は400mを泳ぐ際、4ビートキックを使用しています。

右手の入水から始まり再び入水直前までの1ストローク中に、左足・右足・左足・右足と4回のキックを入れます。

以下に手と足の動きの関係を記します。

→①右手(入水)左手(プッシュ)/*左足(キック)

→②右手(キャッチ)/*右足(キック)

→③左手(入水)右手(プッシュ)/*左足(キック)

→④左手(キャッチ)/*右足(キック)

【プル】で水を最大限にかける位置をパワーポイント(PP)と呼び、クロールではこのタイミングで足を下向き方向へ動かし(キック)ます。

①内側に向いていた左足関節がムチのようなすさまじい勢いで外側に捻じられる(足関節内転→足関節外転+脛骨外旋位)

②キックは真っ直ぐ下へ

③息継ぎ(ブレス)+キックは真っ直ぐ下へ

④右足関節がムチのように外側に捻じられる(足関節外転45度+脛骨外旋)

その動きには意味がある!

真っ直ぐ伸びる腕と脚(左)足は最終域で45度程外転(回転)しながら水を押し出す

レデッキー選手のキックは①と④の足関節最終可動域では外側45度に向き、②③は真下(水底)へ向かってキックしています。

特筆すべきはそのキックのメリハリで、①左足/④右足キック共に、②右/③左と比べそれぞれ約2倍/1.5倍程大きく長く強くキック、まるで水を “捉えるか” のような動きです。

①④のキックはその動きも範囲も非常に大きく、他の選手よりさらに膝が過伸展するため、いわゆる “ムチ” のようなしなりで非常にダイナミックなキックとなります。

①(または④)で左足を大きく深くキックするのは、左手で水をかく時間が右(手でかく時間)よりも約1.5倍程長いため、その時間を調整する意味があります。

水を長くかき続けている間の姿勢安定に左足の大きく長いキックが深く関わっているのです。

また通常は息継ぎをすると沈みやすくなるので、浮力を再度回復する(調節する)役割もあるように見えます。

④息継ぎ直後の左手の “かき” は頭を沈めがちにしてグイッと渾身の力で水をかきますが、この瞬間のパワーポイント(PP)はおそらく右手のそれよりかなり大きいと推測します。

こうした腕と脚のメリハリのある動きや方向のタイミングは絶妙で、彼女なりに強弱のリズムを創り上げていることが、この爆発的な加速を生み出している理由のひとつです。

速さを生む上半身の使い方

水を味方に!

世界で活躍するスイマーの多くがそうであるように、レディッキー選手も抜群の肩甲骨の可動性(ROM:Range of Motion)を誇ります。

ただ誰にもまして優れているのは、抜群の関節可動域を水中で最大限に使えるという筋発揮能です!

可動性を最大限に使う!

この後肩甲骨から動かして脇の下の“水のかたまり”をプッシュダウン

可動域が大きい(広い)ということは関節を取り巻く筋肉の柔軟性が高いことを意味します。

肩甲骨が動けば胸郭(肋骨)も、さらに腕や体もよく伸びよく動くことに他なりません。

レディッキー選手は左右の手を入水してから真っ直ぐ前方:頭上に!グイッと伸ばしきっています!

左右の肘が真っ直ぐ伸びていること、そして胸郭が伸びて膨らみ脇から肩甲骨の出っ張りがしっかり観えることが、何より活発な肩甲骨の動きを物語っています。

さらに腕と対角をなす脚の動きが、グンと伸びきる程の勢いによってメリハリと強弱のあるキックに結びつけています。

体全体を使う筋発揮能の高さ、そして泳ぎのハイレベルな技術のなせる業と言えるでしょう。

爆発的な推進力を生む奇跡の “ハネ”

水をキャッチした後【プル】に入る際には特にこのアクティブな “ウィング” の真骨頂が発揮されます。

【プル】で肩甲骨から始動し肘を、直角近くに曲げた腕と同側の上半身で得た “水のかたまり1)” を、肩甲骨から始動した腕全体で一気に“プルダウン”し、足元へ押し出すようにかいています!

1)パックド・ウォーター・ロード(PWL)

*映像にて彼女の泳法を確認してみましょう!

この時背中にある広背筋と肋骨(肋間)を締める前鋸筋を働かせ、水を捉えた(キャッチした)腕と共にひとつのユニットとして “水のかたまり” を後方へ押し出します。

押し出そうとする “水のかたまり” が大きい程、前方への爆発的な推進力を得られるのです。

レディッキー選手は手の【キャッチ】後このPWLを大きくすることも、そして広背筋・前鋸筋と腕を1ユニットにして後方(足元)へ一気に押し出す能力も抜群に優れているのです。

その技術を強力に後押ししているのが、肩甲骨から始動して腕をかける、つまり目標とする動作をするために必要な筋を積極的に使える特異な能力です。

乱れぬストリームライン

抵抗を極限域に弱める機能的なストリームライン

スイミングでは浮力・抵抗・水圧のある状況でその姿勢を維持しなくてはなりません。

どんな状況であろうと如何にストリームライン(姿勢)を機能的に維持できるかが、速さを生むカギとなるのです。

ストリームラインは横(左右方向)だけでなく、前(前後方向)、頭上(上下方向)からみて真っ直ぐ、または上半身・下半身のバラツキがないことが理想です。

肩甲骨から動かすにはコアをある程度安定させなくてはなりません。

でないと肩甲骨の動く側の脇腹を縮めることになり、体がそのサイドに傾斜して曲り抵抗が増えることになります。

五輪2大会金メダルの孫楊(そんよう:中国)選手でさえ、ブレス(息継ぎ)では身体が呼吸する側に曲り、「造波・摩擦・形状」といった各種抵抗が増えてしまうのです。

トップスイマーでさえこうした傾向が多い中、レデッキー選手は呼吸する側に体が曲がらず、真っ直ぐなストリームラインを常に維持しながら泳げる数少ないスイマーです。

基本的な動きの中にこそ・・・

体全体を使える人は少ない!

体全体を使う

ごくごく当たり前のこと・基本的なことですが、できる人は本当に限られます。

僅かな人しかできないからこそ、その人達はトップに君臨できるわけです。

まわりの変化する様々な状況に合わせて体を動かせる能力は、アスリートにとってそれだけ大切な要素といえるでしょう。

狙うはTokyo2020

レデッキー選手は現在21歳、スイミングでは正に脂の乗り切った年齢で、2020年東京オリンピックは本気で4冠を狙いにくるでしょう。

中・長距離選手として活躍するレディッキー選手、東京オリンピック複数メダルへの一番の課題は短距離系に近く加速とスピードが重視される200m自由形です。

この200m自由形には、今回優勝したテイラー・ラック(カナダ)選手を始め、リオ銀・銅のサラ・ショーストロム(スウェーデン)/エマ・マキーオン(オーストラリア)選手らが虎視眈々と覇権を狙っています。

さらに日本代表の池江璃花子選手(パンパシ2018では銀メダル)もこの種目にエントリーしており、「レディッキーVS池江」対決も2年後には大注目となるでしょう。

日本のスーパースイマー池江璃花子選手に観る大きな身体の動き~とても優雅に泳ぐのは手足が長いだけではない理由~
リオ・オリンピックで大活躍した池江璃花子選手、日本女子水泳界に彗星の如く現れた東京オリンピック期待の星です。 長身且つキュートなルック...

日本代表チーム(トビウオジャパン)には、女子は今回のパンパシで200・400mメドレーリレーを制した大橋悠依選手、男子も瀬戸大也・萩野公介を筆頭に有力選手が目白押しです。

進化の過程

こうした名立たるスイマーの中でもレデッキー選手の泳法は特筆に値し、水中でのその動きは今後のさらなる進化も期待できます。

さらにスタート時の反応/飛び込み姿勢、そしてターンでのクイックな回転による優位性もあり、今後の成長次第では東京での200m制覇も夢ではありません。

一流になればなるほど、30度が理想とされる飛び込みの入水角や、両足を揃えて水に吸い込まれるように入る技術等、泳ぎ以外の技術も高い!

こうした速さにつながる要素を合せ持ち、他のスイマーに比べ体をさらに大きく伸びやかに使えるレデッキー選手、その才能と日々の貪欲な練習姿勢もあり、彼女の進化はまだまだ止まらなそうですね!(^^)!

まとめ:

敵なしの400m自由形

16年ぶりに日本で開催されるパンパシフィック競泳選手権(パンパシ2018)、中でも大注目のケイティ・レデッキー選手(アメリカ)、水中でのその縦横無尽の動きに迫りました。

足の大きくしなやかなキックと肩甲骨から始動する腕全体のかき方、双方を繋ぐコアの安定性を生む機能的ストリームライン、水中での自在な動きを支える才能が泳ぎに反映されています。

水中での体の使い方はスイミングを本格的にしている子はもちろんしない子供達も見習うべき特筆すべき動きです。

2020年東京オリンピックでは日本のエース(となるであろう)池江選手との200m自由形対決に注目が集まる一方、自由形4冠を狙う逸材の動向に今後も目が離せません!(^^)!

TM鈴木

#池江 #競泳 #東京2020 #女子200m #水中 #動き

スポンサードリンク