【練習しないことが本当の練習】というプロの思考法~ケガのリスク回避は8割での全力投球と脳のフル回転~

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『アメリカではゴルフをはじめ他のスポーツでも、”量をこなす”練習が推奨されることはあまりない』

出典:https://goo.gl/kNZxeT

実に気になる一言を先頃、とあるメディアにて見つけてしまいました。

TM鈴木も選手時代にこのコメントとは真逆の状況を経験したものでした。

日本はほとんどのスポーツシーンで “結果的に” 量をこなす練習が推奨されてしまう傾向があります。

例えこの状況がケガのリスクを高めること、そしてパフォーマンス向上を妨げていることを認識していたとしてもです。

なぜ日本のアスリートはこの“練習”にことさら精を出すのでしょうか。

そこには現場独特の雰囲気やら日本人が持つある特性が関係しているのかもしれません。

果して “量をこなす” 練習からの脱却は可能なのでしょうか?

現状を探ってみました。

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子供達が危険にさらされている!?事実

出典:https://goo.gl/Eu6pCX

こと野球に限って言えば、甲子園での投球(登板)過多の問題や野球少年達の成長障害(特に肘や肩等)は大きな社会問題となっています。

日米で同じ現象が!?

アメリカでも実は同じような現状があることを我々は知っておくべきかもしれません。

肘の靱帯再建であるトミー・ジョン手術。野球好き以外には聞き慣れない言葉かも知れないが、ダルビッシュ有や松坂大輔、古くは村田兆治などが受けている。かつては成功率1%とも言われたが、現在は8割近くが復帰に…

プロになってお金持ちになることを親が夢見て計画するしっかりとした目標設定!?、があるアメリカらしい合理的な考え方というのでしょうか。

比較するのはちょっとどうかと思いますが、日本はここまでシビアにはなれないのではないかと思います。

特に感情を込めやすい日本人の気質としては、将来の目標ではなく、今この場で起こっている我が子の頑張りに価値を見出すことの方が大切だと考える親は多いでしょう。

他のスポーツでも状況は同じ

実は野球だけでなく、多くのスポーツでしかもどの年代においても、練習過多による故障のリスクがあることを知ってはいても改善できないのが現状なのです。

ゴルフでは松山選手が一時期、左親指の腱鞘炎に相当悩まされましたし、腰痛も併発させていた過去があります。

石川遼選手も過去に腰痛が深刻化し日常生活もままならない時期を経験し、そのままスランプ!?に陥りました。

この2人には実はある共通項があります。

練習熱心、研究熱心なことで知られるのです。

両者とも試合前にも関わらずウォームアップとは思えない程入念に打ちこんでいるし、試合後もパートナーであるキャディと色々と相談しながらアプローチやパター等の練習を繰り返しています。

練習をしない勇気を持つ

出典:https://goo.gl/mV1sS5

特に日本ではアスリートも指導者も練習で “ある一定” の満足感を得ることが、練習を終わらせる一つの目安と考えている節があるようです。

みずからも高校・大学と強豪バレーボールチームで経験し、アスレチックトレーナーになって日米の様々なスポーツ現場を見てきてもその思いは未だ消えていません。

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大切なことは如何に練習量を減らすかで、量的練習を排除しながら尚且つ技術力を高めて、試合で最高のパフォーマンスを発揮できるかなのです。

一見すると相反するこの課題ですが、実行に移すことが不可能なことではありません。

そういう戦略的工夫が世の中に増えることで、こうしたピッチャーの故障やアスリートの身体の問題は解決する方向に向かうはずです。

不安と恐怖に打ち勝つ方法は練習じゃない

先の松山選手・石川選手の例に漏れず日本のアスリートは非常に練習熱心です。

しかしそれは裏を返せばこうも考えられます。

【練習で(試合でのスイングのブレや球が思う所に飛んでくれないという)不安感を打ち消すしかない!】

日本のアスリートは自分の理想とするフォームを身体に覚えこませる(落とし込む)ことを好む傾向があります。

だからゴルファーは数多く球を打たなきゃいけないし、ピッチャーなら数多く投げなきゃならないし、スイマーなら何千メートルも泳がなきゃいけないと思ってしまうのです。

野球でもゴルフでもテニスでもスイミングでも多くのスポーツでそうした傾向は顕著に見てとれます。

アマチュアや成長期の子供で基礎ができてない場合は量的な練習もあるいは必要でしょう。

しかしベースがほぼ出来上がっているジュニアや若いプロまでがそこまでやる必要はまったくありません。

彼ら/彼女らにとって投げ方・打ち方・泳ぎ方・走り方等を完成させるために、実に多くの時間を費やして間違いのないフォームを身体に覚えこませる、それが練習の目的となっています。

実は選手達を教える指導者にとってもそうした心理的要因が根深く関係し、量的練習にならざるを得ない原因のひとつとなっているのです。

こうした練習は一種の「不安・恐怖」に打ち勝つためのその場しのぎの解消法にすぎません。

システマティックな方法からは程遠い時代遅れの精神論的手法の何ものでもないと、個人的には考えます。

全力投球とは全(能)力投球なり!

練習というのはあくまで練習であり、試合ではありません。

試合になれば様々な環境・心理・体力要因等が関わってくるため、練習でいくらうまくいったとしても試合にそのまま現れることはないのです。

例えばピッチャーであれば、とかく若い(特に成長期の)選手は全力で(思い切り)投げることを好む傾向があります。

“【全力】で投げる・打つ” というフレーズは特に誤解を生みやすいのです。

全力とは全(脳)力のこと、つまりは頭をフルに使った投球をすることであって、全(体)力を使うことではありません。

体力は(年齢幅によるものの)限界値が低いため、どんなに鍛えようが疲れやすいものなのです。

しかし脳は体に比べ疲労感じるライン(閾値)は非常に高く、どれ程使ったとしても疲労感はそれ程感じないのです。

仮にストレス等も関係した相当の疲労感を感じたとしても、しっかりとした栄養と睡眠をとることで一日で回復するのが脳の特徴です。

予防法を探る

【頭を100%近くフル回転させて多くを8割の(体の)力で投げ、ここぞ!という勝負の時のみ9割を超えて投げる!】

こうした目標設定の元にパフォーマンスを発揮できるような練習にそろそろ移行させようと考える人達が増えていいのではないでしょうか。

マダックス的思考法

MLBで20年以上にわたって活躍したグレッグマダックスという投手がいます。

彼はシカゴカブスやアトランタブレーブスで絶対的なエースとして君臨し現役生活で350勝を挙げた大投手です。

彼の信条は27個のアウトを27球でとることでした。

そのためには速いボールではなく、思ったコースにきちんと投げられる絶妙のコントロールと、ボールに僅かに変化を加えることにこだわった技術を磨いたのです。

70イニング以上の連続無四球記録を作った彼ですが、キャリアで3000以上の奪三振も記録しています。

まさにここぞというときには「ズバッと!」三振を獲りにいけたMMB最高のピッチャーなのです。

そんなマダックス投手(当時)は自身のキャリアで肘を故障することはまったくありませんでした。

昨シーズン限りで引退した元広島の黒田博樹投手も肘の故障はありませんでした。

長いイニングやシーズンを通して活躍するため8割の力で投げても打者を打ち取れる技術を磨いた結果といえるでしょう。

MLBでは毎シーズン300イニングを投げていても肘を故障しない投手も中にはいるのです。

こうした投手の思考法が現場を預かる人達や選手が参考にすべき予防法になるのではないでしょうか。

予防する手段はある

前出の記事「投球制限があるのに肘の故障は増えている」では、ピッチャーの肘の故障を予防する手立てがないことを示しています。

とはいえ、球団側も選手側も、故障に対する認識が定まらない点は興味深い。故障を防ぐ方法がないからだ。極論すれば、合理的と呼ばれるフォームで投げていようが、球数や投球回数を制限しようが故障する人はするし、しない人間はいくら投げてもしない。

出典:http://toyokeizai.net/articles/-/167601

確かに現状はその通りかもしれません。

MLBがピッチャーの肘を予防するための様々な取組みをしていることは周知の事実です。

しかし実はどんな統計的なデータを駆使した手法より、マダックス氏や黒田氏のような柔軟な思考こそが肘を健康に保ってくれる秘策なんじゃないかと個人的には考えます。

人の身体ってまだまだ分からないし未知の世界だから、正解なんてあってないようなものだし解らないことも往々にして出てきてしまうものなのです。

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練習しないことが練習!

プロゴルファーの手嶋多一選手は練習時間の少ないプロとして有名で、先ごろはこうした内容もメディアで取り上げられています。

練習をし過ぎて故障をきたしていてはパフォーマンスは上がるはずもありません、プロとしては失格の烙印を押されてしまいます。

良いプレーは(あるポイントから)練習の量で生まれるのではなく、思考を変えることで生まれるということをそろそろ学ぶべきではないでしょうか。

手嶋プロがなぜ練習を極力しない方向に目を向けたのか、その本質がわかれば体への負担を強いる量的な練習習慣は大きく変わるはずです。

「良いパフォーマンスを発揮したい!だから練習する」という考え方ではなく、「不安や恐怖を残したままで試合を迎えたとしても心をコントロールすれば大丈夫!」といった思考の転換が必要なのです。

「故障をせず良いプレーを磨き続ける」それがわかれば練習の意義を再認識でき、結果的にファンを喜ばせるプロアスリートに近づけるでしょう。

若い選手は指導者思考に大きく依存

パフォーマンスが高まらないからとか、パフォーマンスを高めるためとかで量的な練習に比重をおいてしまうのは、選手として故障のリスクを高めているのと同じことです。

またそうした量的な練習環境を作り上げてしまう指導者は、教える資質のなさをさらけ出しているということを認識すべきです。

学生で全国を目指している強豪スポーツ校であっても考え方ひとつで練習に対する姿勢が大きく変わり、目標を達成することが可能です。

学校の指導者ならまずそのことに気づき、選手の全(脳)力投球やパフォーマンスがだせる環境を構築することが最も重要でしょう。

クリスマスから年末にかけて、JR千駄ヶ谷駅の目の前にある東京体育館に、バスケットボールを愛する高校

頑張ることの意味をはき違えない

若いときは身体を動かせる自由度が高いのです。

頑張っても頑張りが効いてくれます。

一般的な話で恐縮ですが、新陳代謝が活発で疲労が溜まりにくいから、例えば高校野球でいえば全力で100球・150球投げたとしても、翌日も問題なく投げられてしまうのです。

田中将大投手(NYヤンキース)も高校時代はかなり思い切り腕を振っていました。

若いからできたことでしょうけど、その多くは『投げてもケガはしない』という考え方に基づいていたのではないでしょうか。

スポーツ動作は日常の動きからはかけ離れた非日常の動きです。

だからどんな状況であれケガや故障するリスクは付きまとうのです。

現場で指導に当たる人達はこの考えを選手に再認識させるという大きな責任があると思います。

まとめ

出典:https://goo.gl/bONfLg

量的な練習が重要との認識を変えられない日本のスポーツ現場、そこには「プレーの質を高めるには練習しかない」という不安や恐怖感を払拭しようとする選手や指導者の考えが見てとれます。

様々な要素が重なり合う試合やレースでは、いち早く頭を切り替えられる柔軟な思考が必要であり、それは練習をしたからといって手に入るものではありません。

一定以上のパフォーマンスを発揮できる環境が、練習量によって左右されることがないことを選手や現場の指導者は認識すべきでしよう。

ピッチャーやゴルファーを含む全アスリートは体の故障リスクを回避するためにも、投げ込み(打ち込み)に依存しない全(脳)力投球を心がけることが肝要です。

TM鈴木

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