【思考変革】高校野球甲子園出場投手の投げ過ぎは是か非か~単に投球数やイニング数を規制するだけでは肘と肩は守れない~

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今年も春の選抜高校野球は当稿執筆時点でベスト4が出そろいました。どのチームも甲子園で全力を出し切って充実したプレーをしてほしものです。

さて、そんな甲子園の話題をかっさらったのは早実の清宮幸太郎選手でも、前評判の高かった多くのキープレーヤーではなく、延長引き分け再試合での投手の投げ過ぎ問題かもしれません。

甲子園だけでなく高校野球自体がピッチャーの登板過多について多くの意見がだされています。

実は多くの問題をはらんでいますが、中々解決の糸口は見つかりません。

そうした投げ過ぎ問題についてアスレチックトレーナーとしての立場から少し話をしようと思います。

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多くの批判を生む「投げ過ぎ」問題

出典:https://goo.gl/FrkxMW

「高校野球・投手・投げ過ぎ」というキーワードで検索すると必ずでてくるのがこの大野倫さんの問題です。

大野事件とも揶揄されるこの問題は高校生投手の登板過多に一石を投じた大きな問題となりました。

大野倫(りん)氏は沖縄県出身の元プロ野球選手で現在は九州共立大学沖縄事務所長を務めています。

高校時代登板過多が原因で投手の道を断念した経緯を多くのメディアで伝えられていました。詳細は以下の通りです。

沖縄水産高校2年夏に第72回全国高校野球選手権大会(甲子園)出場、決勝戦では南竜次擁する0-1で惜敗。次の年は県予選から肘が悲鳴をあげ、医者の警告を受けながらも痛み止めの注射を打って登板、第73回高校野球選手権大会へ出場。本大会は2回戦で既に投げるのも困難な状態で、有力な控え投手もいなかったことから決勝まで6試合全てで完投し、3回戦以降は4連投した。

沖縄県勢初の夏制覇」の期待がかかる中で登板した大阪桐蔭との決勝戦では13失点で敗れた。監督の栽から「大野と心中だ!」という言葉を受けながら6試合で36失点、773球を投げた。大会後、右ひじの疲労骨折と診断され手術、剥離骨折した親指の爪ほどの骨片が複数摘出された。

出典:https://goo.gl/qnpHU1(Wikipedia)

投手投球過多の問題は後の沖縄県勢へも影響を与えたのでしょうか。現ソフトバンクホークスの島袋投手に関しても大きな問題となりました。

1999年の第71回センバツ大会では、沖縄尚学が決勝戦に進出するが、前日の準決勝・PL学園で延長12回、200球以上投げたエース・比嘉公也(現・沖縄尚学野球部監督)を登板させず、控え投手の照屋正悟が登板。結果、決勝の水戸商では7-2と快勝し、念願の沖縄県勢初の全国制覇を果たした。

一方で、2010年に沖縄県勢として初の春夏連覇(第82回センバツ大会・第92回高校野球選手権大会)を達成した興南は、島袋洋奨(福岡ソフトバンクホークス)を軸に三本柱で大会に臨んだものの、島袋が中1日で4連投するなど過酷な登板はなくなっていない。

因みにこの問題以降、高野連も動き1993年には投手複数制を加盟校に奨励し、これを受けて後にベンチ入り選手数が増加しています。

春の珍事?!延長再試合が続けて起きた!

投球過多が叫ばれている最中に春の珍事?!ともいえるような出来事が起こってしまいました。

大会7日目2回戦第2試合「志賀学園vs福岡大大濠」と第3試合「健大高崎vs福井工大福井」が延長15回戦っても決着つかず1日おいた9日目に順延、引き分け再試合となりました。

1日挟んで臨んだ「延長16回」のマウンドにはこの4校中3校甲子園初登板の投手を起用しました。

志賀学園や健大高崎はどちらかと言えば複数投手制を重んじて実際にそのシステムを県予選から採用してきた経緯があります。

一方福岡大大濠の三浦銀二投手は延長15回を一人で投げその数はなんと196球、しかも次の再試合でも130球で完投しています。

この三浦投手、22日の1回戦では149球、26日の2回戦までは中3日、28日の再試合までは中1日の登板間隔でしかも130球を投げているのです。

さすがに3回戦の報徳学園戦では投げなかったようですが、7日間の間に475球も投げているのです。

これでは球数多すぎ!と批判されても仕方のないことかもしれません。。。

エースを守るべきシステムがない!?

出典:https://goo.gl/L1caq9

こうした投球過多の問題に対しTM鈴木がアスレチックトレーナーとして現場にいたら、『投げるのは無理だよ!』とはっきり言ったかもしれません。

しかし現場のトレーナーがそう忠告したからといって、登板を回避できるような環境や雰囲気ではないことも当然理解しています。

決定打を見出せない現場と運営

件の「大野問題」や斎藤(早実 現日ハム)、安楽(済美 現楽天)、さらに遡れば多くのエースと呼ばれるピッチャー達の環境は代わりがいなかったことに起因するのではと思います。

監督だって代わりがいれば自軍のエースをそんなに酷使することはないだろうし、批判が登板過多に集中しないことだってわかっています。

高野連だってみなさん手弁当で大会運営にあたっていて、いくら専門家の意見を戦わせて色々と案を出しているといっても限界があるわけです。

現役の先生(教師)や指導者OBの集まりなのですから、新しい考えをどんどん入れるといっても本業(教員)の合間にしかも様々な大会運営事務にも対処しなければならず、いかに大きな問題とは言え投手の登板過多問題だけに注視するわけにもいかない事情があるのです。

大会側も現場もできる限りのことをやってはいるけどひとりの投手にかかる負担を分散する術がないというのが正直なところではないでしょうか。

(普段の練習も含め試合ももちろん)球数制限や連投禁止、イニング数減(7回)、果てはタイブレーク方式など様々な方法も検討されてはいますが、今ひとつこれだ!という決定的な方法はないのが現状でしょう。

こんな方法もあるのでは?

中々ない決定打、それならいっそのこと毎年ごとにとか春と夏は違った方法を取り入れるなんてこともありかなとも思います。

例えば夏の大会は球数制限や連投禁止、春はイニング数制限や9回終了時点で同点ならタイブレーク方式とかね。

レンタルシステム

あまり堅苦しく考えず、色々な方法を例えば数年かけて試してみて、その間現場からも意見を聞きつつ、良いものを決めたらどうでしょう。

例えば県の代表(優勝)校が県予選でベスト4に入った残り3チームから2ないし3人のピッチャーを借りて出場する、なんてシステムもあっていいのではないでしょうか?

特に夏の甲子園は都道府県代表としての色合いが強いので、ベスト4や決勝を戦ったチームであれば我が県の代表としてのイメージが反映されると思います。

これならもしピッチャーが1枚(看板)しかいない出場校の場合はエース級を2~3人揃えられることになりかなりの戦力アップになるでしょう。

貸す側の学校関係者、特に指導者との間でどの程度使うのか?酷使させないようなルール作り等、詳細を詰めなくてはなりません。

ただ選ばれるピッチャーにしても“夢の”甲子園で投げられる可能性があるわけだし、生徒を貸し出す学校側としてもかなりの宣伝効果もあるので、乗らない手はないでしょう。

甲子園出場校の戦力アップによってさらに緊迫した面白い戦いが繰り広げられること請け合いでしょう。

そうした県内チームでの切磋琢磨する状況がさらに高校野球の共存や反映に繋がるような気がしますが、あなたはどう考えますか?

考え方にアプローチ

連盟側がどんなにルール改正をしようと、結局は現場の考え方が変わらないことには投球過多の問題は多かれ少なかれなくならないような気がします。

現場ではその指導者やさらにその先代、先々代のその指導法や考え方が脈々と受け継がれてきています。

選手側にしてもその指導法を受け入れる脳と身体になっているわけですから、単にルールを変えるだけでは物事の本質は変わらないと思った方が良いでしょう。

現場の指導者であれば打たれない可能性のある投手を引っ込めることは大変勇気がいることだと思います。

だから結局はひとりのエースに何百球も投げさせてしまうわけです。

選手にしても選手、つまり現役の“その時”しか考えないし見えないわけです。

『自分は将来こうありたい!こうなりたい!』と考えているなら、ここで投げ過ぎてはダメになる!ということを予見できるはずです。

思考や視点を変えてみる

「このピッチャーでは打たれるかも!」から「打たれるかもしれないけどさらに戦略の幅が広がるし、この子が自分で工夫して成長できるかも!」とか。

「今ここで無理をする必要はない!」「踏ん張りどころはもっと先にあるから今は力を抜いておこう」とか。

指導者も選手もそんな感じで少し違った視点で考えられることが本当のところ重要なのではないでしょうか。

甲子園を統括する側がまずやるべきことはルール改正ではないのかもしれません。

結局はこうした現場の今迄の考え方や視点を、違った方向に向けさせるアプローチなのではないかと強く感じます。

TM鈴木

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