コアトレの効果は動いている時どこに現れるのでしょうか?
体幹とかコアについての情報は多くの専門家やアスリートによって、そのやり方や効果が数多く紹介されています。
しかし実際に体はコアトレの効果をどこで・どんなふうに感じるか?つまり運動中コアが働く感覚についてはほとんど明らかにされていません。
その感覚がわからなければコアトレの効果を感じにくい!
そこで『コア』の働きを体のどこで感じればよいのか?今回は走りを中心にその考え方と実践感覚を紹介します。
アスリートからスポーツ愛好家、そしてこれからコアトレに挑戦するジュニア・アスリートやその親が知っておくと、走りが変わるヒントになりタイム短縮に繋がるはずです。
Contents
意識できること?

3つの腔・脊柱・周囲筋からなるコア・ユニット
「体を動かす時は日常であれスポーツであれどんな人でもコアを使っていますよ!」
レッスンやワークアウト・セッションでこんなメッセージを投げかけると、熱心に聞き入るスポーツ愛好家や子供達、そして親達は一様に驚きます。
なぜなら彼らを含めた多くのアスリートや一般人はコアを使っている感覚をもっていない!運動中にその意識が感じられないからです。
使われた感がない理由
なぜ多くの人達は実際の運動でコアを使っている感がないのでしょうか?
実はそこにこそコア・トレが「やるのは比較的簡単!でも効果がでているのか?使っている感があるのか?」という疑問を解消できない要因があるのです。
最も大きい理由はコアがどこだかわからない!場所を特定できないから意識しようがないため、働いているのかどうかもわからない(感じない)ということです。
一般的には同意語として捉えがちな体幹とコア、実はその意味合いは少し違います。コアと体幹を同じ意味に捉えていると、その先のトレーニング成果に悪影響となう可能性もあります。
体幹とは腕や脚を除く胴体(torso:トアソー)のことです。具体的なカラダのパーツでありコアに比べてイメージしやすのです。
一方コアはより抽象的な概念のため、腕や腹や脚といった正式な解剖学上の部位であるボディパートというより、いくつかを掛け合わせたユニットとして存在します。
そこでコアを意識する(イメージできる)ためには何処とどこがそのユニットに含まれるかをしっかり理解しておく必要があるわけです。
コアの概念を知る
まずは概念的なコアをあなた自身で決めてみましょう!もちろん教科書やネット等でコアについてその位置や役割を把握することも可能です。
ちなみに “体幹マイスター” であるTM鈴木はコアについて以下のようなイメージを持っています。
えっ!?何がなんだかわからない?
ではこれでどうだ!
コアとはつまるところこの3部位が『コア・ユニット』として存在するわけです。だからここだ!っていう正確な位置や部位ということではありません。
コアに力を込めるといっても力の強弱を担当するのは積み木や袋ではなく、その周りにある筋肉、具体的には腹横筋なのです。
この腹横筋が主となり強弱のコントロールをして、袋(腹腔がメイン+胸腔・骨盤腔)の圧力が強くなったり弱くなったりして、全体的動作の核となる“積み木(脊柱+骨盤)”が上手いこと安定するわけですね。
運動に必要な脊柱の”しなり”を含む微妙な動きを、その担い手であるコアを働かせる筋群がコントロールし、腹腔を通じて脊柱の動きへ繋げています。
コアが働く仕組み

コアが働くとは?
ではこれから他では絶対に聞けない「コアが働く仕組み」を紹介していきましょう。
メカニズムを知ることでコアの本質と走っている中でコア・ユニットをがうまく動くコツを深く理解できるはずです。
免震機能
積み木である脊柱+骨盤はその構造上、体を安定させる働きをメインとします。
高層ビルに例えると骨組+土台なわけで、ここが不安定になるとビルそのものが揺らいでしまい立っていられません。
その骨組みの周りに腹腔という“空気が入った袋”があって、その周囲を今度は骨格筋という“平たいゴム”が囲い、揺れや振動を吸収・分散させる“免震”機能を担っているわけです。
ここで大切なのは耐震ではなく免震だということです。不安定な状況に耐える・持ちこたえるのではなく、揺れを逃がすという意味でコア・ユニットを扱うことがミソなわけです。
「すぐ元の位置に戻る!」これこそがコアにとって最も大切な役割なのです。
役割の違いを知る
また“積み木+土台”と“袋”と“平たいゴム”ではそれぞれが微妙に役割が違っているということをわかっていただかなくてはなりません。
脊柱+骨盤は骨組みなので安定することが最も大切、しかし実は体の動きに合わせて骨盤が30°以上前傾することで脊柱全体でみれば“しなる”動きを可能にします。
コアに関わる骨格筋は固める安定性より動く要素が重視され、腹腔を中心とした中空構造は圧力のかかり方によって安定性と機動性の両方を併せ持ちます。
それぞれに個性があり助け合い運動中に最適な身体操作を実現するよう設計されています。
実際に力をコントロールするのはコアに関わる筋の収縮と弛緩、その影響が腹腔(胸腔・骨盤腔)に圧力として伝わり脊、柱の部分的な固定化(固める)やトータルでみた“しなり”を生み出します。
3つのパーツ毎に任務が違うから同じこと(トレーニング)をやっても「最大に効く・効く・あまり効かない」というバラツキがでてくるわけです。
例えばサイドプランクで最も安定させるべきは脊柱+骨盤というわけです。この場合コアユニットに属する筋肉は安定性をサポートするため微妙な伸び縮みの活動が必要となります。
実は今までこの事実を紹介する機会ほとんどありませんでした。
コアの本質(概念や役割)について知らないのだから、トレーニングしても果して運動中にその効果がでているかわからないのは当たり前ですね。
コアが覚醒める走りを!

どこでコアを感じるか?
いかがでしたか?
抽象的な概念であるコアをより意識(イメージ)し、コア・ユニットとして身近に感じやすくなったところで、ここからが本題です。
コア・ユニットが覚醒め、しっかりと働く走りは果してどのようなものかを検証してみましょう。
着地でのコアの働き
走る際人は必ず片足で着地しています。この時(速さにもよりますが)およそ体重の3~7倍の荷重が体に加わることになります。
片足着地&支持で体重の数倍の力が加わるため、前後・左右・上下の立体的なブレを最小限にした上でこの荷重を吸収・分散させなくてはなりません。
実は動作中の立体的なブレは必ず起こるので、如何に素早くゼロ地点(自分が思う中心点:体軸点)に戻し、次の動作に繋げるかが重要なのです。
したがってランナーであれば片足支持で加わる荷重を支持しながら、次の動きに生かせる内容の(コア)トレーニングが求められます。
因みに現実世界では事象を観る際立体的なイメージで観ます。よって走りを観る時も前後(前額面)・左右(矢状面)・上下(水平面)で観ると良いでしょう。
着地での力の吸収・分散はコアを固めて動かないようにすることではなく、先述した免震性能を高めてブレてもゼロ(0)の位置に素早く戻せることを前提とした意識をつくりましょう。
動きを感じやすいコアマッスルの繊細な伸び縮みとつながる腹空圧の微妙な加減、最終的には脊柱全体のしなりを伴う動きが、片足で体重の数倍となる衝撃を吸収・分散してくれます。
離地でのコアの機能
着地(地面接地)に続いて起こるのが離地です。いわゆる体が一瞬地面から離れた状態でスプリントやランニングでは必ず起こる過程です。
トップスプリンターは100mを40数歩で駆け抜けるため、少なくとも40回前後は地面から一瞬離れる状態があるということです。
片足支持直後にその足を後方へ蹴りながらスイングすると、体が地面から離れて蹴った力と脊柱のしなりが推進力を加速し前に進みます。
この地面から両足が離れた状態で次の逆足接地までに推進力が落ちないよう、空中での安定性を保ちながら元の位置に戻すよう仕向ける必要があるのです。
この時に大切なことはコアをすぐにオン(ON)の状態にできるようエコ(Eco)モードにしておくことです。エコ・モードとはコア・ユニット(3つの部位)にスイッチを入れたらすぐに働くいわば小休止状態のことです。
つまり完全にオフの状態でなく必要な時にはすぐにでも働く、両足が地面についていない離地状態から片足支持での着地になる瞬間に機能するというメリハリがなくてはならないのです。
そういう意味でコア・トレにはオンとエコのメリハリをつけられるような目的意識が必要となってくるでしょう。
コアの働きを感じる

コア・ユニット:動きの感度を高めるには?
走りとコアの働く仕組みのイメージがなんとなくつかめたところで、コア・ユニットにしっかり働いてもらうための感覚センサー(固有受容器)をご紹介しましょう。
ここの感度を高めることが上手な走り、しいては緻密なスプリント能力に繋がるのはいうまでもありません。
コアは走りにどう影響するのか?またどこでコア・ユニットの働きを感じるのか?その感度を高める実例をご紹介します。
圧を感じるセンサー
着地・離地局面でのコアの役割がわかったところで今度は具体的な感覚の話をしましょう。
片足で体重を支える着地では真横(左右)からみた前後へのブレと前方(後方)から観た左右へのブレを抑えるため(体重の何倍という)荷重を吸収・分散する必要があります。
こうしたコア・ユニットの吸収・分散を着地局面で機能させる部位、荷重を感じる箇所がどこかわかりますか?
実は股関節なのです。

荷重を受けコアに情報提供
股関節で荷重を感じることでコア・バランス(平衡)とストレングス(強度)機能が一度に働き、コアに関わる筋肉にどれだけの張力を発揮すればいいかという情報が送られます。
着地で股関節へ加わる荷重を元にコア・マッスルの伸縮力(機動性)が決まり、その加減を腹腔(骨盤腔・胸腔)の圧力で操作、さらに脊柱全体としてのしなる動きに繋げます。
だから走っている時に股関節とその周辺に加わる圧力を感じる感度がなければコア・ユニットの働きは十分引き出せません。
どんな素晴らしいコア・トレでもその感度(感覚)を走る時に引き出せないのなら、トレーニング選択やゴールとしては正解とはいえないのです。
この理解があって初めて走りでコアが使われる感覚がでてきます。
つまりコア・トレというのは股関節を通じたコア・ユニットの感覚・感度を高めるために実施することが重要なわけです。
股関節の感度を引き出す方法
股関節が受ける荷重を繊細に感じるには骨盤の傾斜角度が重要です。この傾斜角が甘い(緩い)と体重を股関節にのせる感覚は情報として入ってきません。
ではその感度が高まる角度は何度なのでしょう?
それが私・TM鈴木が提唱するFAPTA(機能的骨盤前傾位)、つまり30°以上の骨盤前傾です。
骨盤のこの角度を維持したまま股関節を動かせると、股関節に“のる”(体重をのせる)意識が高まります。
もちろん走りも同様で、片足を着地した瞬間荷重を股関節に感じその感覚はミッドスタンス(骨盤と脚の角度が0度)で最大になり、直後に蹴りからの後方スイングに入ります。
この股関節への荷重からのコア・ユニットのONモードと、両足が地面から離れる離地でのEcoモードによるメリハリが繰り返されることで上手な体の使い方、結果としての記録が生まれるのです。
まとめ:

股関節の荷重感度が高まるとコアの働きを感じる!
いかがでしたか?
ランニングでコアをしっかり使えるために必要な考え方と実際の動きについて紹介しました。
①体幹ではなくコア・ユニットという抽象概念を理解する
②コア・ユニットは各々役割が違う3つの組織の総称でブレを逃がす免震構造
③走りではコアを着地と離地でそれぞれON&Ecoモードにしておく
④コア・ユニットの働きを高めるには股関節の荷重感度アップを!
上記4要素について理解できれば実際の走りでコアの動きを感じるためのトレーニング選択が可能となるでしょう。
次回は具体的なコア・トレ種目にフォーカスし、大腰筋・ハムストリングを伸ばして育て、コア・ユニットに効くトレーニングを検証していきます。
お楽しみに!(^^)!
TM鈴木