【特集】ピッチャーが肘を痛める要因は肘内側の外反ストレス~ちょっとの工夫でストレスフリーな投球ひじを維持しよう~

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アスリートにケガはつきものかもしれません。

しかしできればケガとは無縁でありたいと願うのは選手共通の想いでしょう。

近年プロ野球やMLB(メジャーリーグ)でも投手の肘のケガが大きな問題になっています。

こうしたピッチャーの肘の痛みはプロに限ったことではなく、アマチュア特に少年野球や中高生達も抱える大きな問題です。

それにしてもなぜピッチャーは肘を痛めてしまうのでしょう?

そこには今まであまり語られてこなかった肘にかかる「外反ストレス」という要因が絡んでいます。

当ブログではこの「外反ストレス」について、その特性や身体との関係性について迫ってみます。

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投球メカニクスを知ろう!

投球メカニクスとは投げ方の仕組みという意味で、平たく言えば投球フォームのことです。

因みにバイオメカニクスはバイオ(生体)とメカニクス(力学)という意味の組み合せです。

投球メカニクスには投げ方をより科学的・学術的な視点から見てみようという意図があり、最近では投球メカニクスと表現するようになってきています。

野球肘、その様々な要因

野球肘、肘に痛みが起こる要因は様々で、そのどれもが当たらずとも遠からずというものでした。

・球数(プロでは特に100球を超えるもの、成長期は70級が目安)

・登板間隔、中4日ローテーション(MLB)

・粘土質の硬く急傾斜のマウンド(MLB)

・縫い目の低い滑りやすく重いボール(MLB)

・特定球種の多投(スプリット等)

・投球メカニクス(フォーム)の問題

・その他(新たな生活環境・ストレス等)

こうした中で

外反ストレスの正体

出典:https://goo.gl/6TJwkB

実は肘の「外反ストレス」はボールを投げる人なら投げる毎に誰でも経験するものです。

投手であろうと野手であろうと、プロであろうとアマチュアであろうと、投げる時には肘の内側に外反ストレスが大なり小なりかかります。

外反ストレスの正体は一連の投球動作中、前に移動しようとする体幹・肩・上腕に対して、ボールを持つ手を加えた肘から先の前腕部が後方に取り残されて、肘の内側関節を強制的に開こう(引っ張ろう)とする力です。

出典:https://goo.gl/5Yrx21

内側の関節間部が開こうとするため、その部分に付着する内側側副靭帯というコラーゲンを主成分とする上腕骨遠位端と尺骨近位端を繋ぐ“接続バンド”が、強制的に引っ張られます。

この外反ストレスは、例えば止まっていた物体が急に加速する時に働く力(慣性力)に相当します。

停止していた電車が進もうとするとき、乗客が一時的に後方に引っ張られて「おっとっと・・・」となるあの力にも似ています。

外反ストレスは大きくなればなるほど「ブチッ」と断裂しやすくなります。

靭帯は細い繊維の束が集まってできているため、部分的に断裂したり完全に破けるように切れたりと様々です。

メジャーリーグのピッチャーが肘の治療として行うトミージョン手術は、(部分)断裂した靭帯を患者の他の部位から切り取って置換する方法です。

手術だと少なくとも復帰までは1年4ヶ月を擁するため長い間のリハビリが必要になります。

こうした肘の故障を起こさないためにも「外反ストレス」を増やさない工夫を施した投げ方が重要になってくるのです。

投球腕の“しなり”と密接に関わる

出典:https://goo.gl/Q7kZ5W

前腕が上腕骨・肩・胴体の前方移動によって後方に引っ張られる(残る)のと、ボールを持つ手が地面を向く捻じりが合わさって動く動作を一般的に【腕のしなり】と呼んでいます。

投球動作をすればその回数だけその靭帯が引き伸ばされますが、問題はどれくらいの強さで引っ張られる(後方に残ってしまう)かということです。

腕のしなりが大きければ大きい程、腕の振りが速ければ速い程肘の内側にかかる外反ストレスは大きくなります。

つまり速い球を投げる(速球派型)投手はこの肘の「外反ストレス」に絶えずされされることになるというわけです。

球速が上がれば上がる程、回転数が多ければ多い程、肘の外反ストレスは増大します。

ダルビッシュ投手・藤川投手・松坂投手等、プロ野球やメジャーリーグの投手達になぜ肘の故障が多いのかを知る手がかりとなります。

外反ストレスを増やさない工夫

物体(ボールや槍など)を投げる誰の肘にもかかる外反ストレスですが、このストレスを上手く増やさない工夫はもちろんあります。

そのひとつが理に適った投球メカニクスで球を投げることです。

「当たり前のことじゃんかっ!」

と怒られそうですが、実はこの理に適った投球をできる人はそれ程多くはいないのです。

なぜならその理に適う投球フォームがどんなものか、具体的な形で示しているテキストや指導者がいないからです。

理想的な腕の使い方が必須

出典:https://goo.gl/2KIqU2

ピッチャーの肘が痛くなる要因については様々な問題が挙げられますが、そのどれもが一長一短があり、未だ明確な予防策がでているわけではありません。

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しかしこの問題については投球メカニクスが非常に大きな要素を占めていると個人的には考えます。

外反ストレスが増大する投げ方が大元の原因で、それを反復してしまうとという遠因も重なり肘を痛めると考えることが自然でしょう。

ピッチャーの投球メカニクスをその動きの特徴から分類すると上の図のようになります。

左から順々に観ていくと4番目(加速期)とありますが、このステージで腕は最大外旋位(MER)となり、肘内側の外反ストレスが最も大きくなる瞬間です。

MERとはボール速度を上げる(加速させる)ための肩から先の腕の使い方で、右腕の場合は投げる本人から見て時計回りに腕を捻じる(外旋)動作のことです。

MER時が肘の内側部に最も外反ストレスがかかりやすい瞬間であり、胴体・肩・上腕がホームプレート側へ急加速で移動するのに対し、肘から先は後方へ引っ張られ(残り)最終的にボールを持った手先が僅かの時間差で加速されます。

いわゆる腕が最もしなる瞬間で、この”しなり”の有無によってボール速度が決まってくるのです。

【理想の振り方】に精通せよ!

画像1) MERw/手のひら上 vs 斜め後下方

さて、このMERで大切、これは本当に本当に重要なことで、このポイントを見極められれるかどうかでケガのリスクを回避できるかどうかが決まります。

そのポイントはズバリMER(最大外旋位)でのボールを持つ手の向きです。

右投手の場合、MERではボールを持つ(右)手面が左斜め後下方、または1塁側ベンチ方向を向く状態が最も理想的な腕の振り方です(画像1参照)。

上腕がMER(最大外旋位)の際、前腕は最大ちかく回外(外側に捻じられて)しながらボールを保持すると、手の向きが自然と左ななめ後下方を向くようになります。

出典:https://barrettstover.com/tag/pitching/ 1)MERでのボールを持つ手の向き

1)この投手はボールを持つ手の向きがほぼ理想に近い状態です。上腕のMERに対し、掌(てのひら)を外側に向け前腕を内から外に捻じる回外(下記動画参照)という動作が起こっています。

これで投球腕の内側にかかる外反ストレスは約30%程軽減されるとも言われています。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=LFg4czeSlp4

出典:https://goo.gl/tBTETh 2)MERでのボールを持つ手の向き

2)こちらはアメリカの大学生投手(UNC)ですが、MERでのボールを持つ手の向きが上を向いています。

この腕の使い方だと肘にかかる外反ストレスが最大になるため肘には過度の負担が生じます。

出典:https://goo.gl/lXwvGY 3)藤川球児投手

因みに藤川球児投手の場合もMERでボールを持つ手の向きは上側(空)を向いています。

その投げ方が原因かどうかはわかりませんが、彼はMLB挑戦1年目にして肘を痛めトミージョン手術(肘の内側側副靭帯再建術)を余儀なくされました。

この藤川投手と同じ傾向(MER時のボールを持つ手の向き)はMLB1年目以降の松坂投手にもありました。

藤川投手は晩年に差し掛かる松坂投手と同じく、MER(最大外旋)時よりも前からボールを持つ掌(手のひら)が上を向いてしまう癖があります。

画像1)と、2)・3)のボールを持つ掌の向きを観ると、明らかに2)・3)の投手の肘に負担がかかるのがわかります。

肘の構造的な問題でMER時にボールを持つ掌が上を向いていると、体幹・肩・上腕がホームプレート側に移動する際に前腕を後方に残そうとすればする程、内側側副靭帯にかかる負担が増大します。

上腕のMER時は前腕が回外(内から外への捻じり)していることが腕の大きなしなりを生み、且つ肘内側の外反ストレスを増やさない重要なポイントなのです。

投球動作や野球肘についてのご相談、またはパーソナルのご希望はこちらよりお問合せください。

投げる球質によって変わる!?

ここまでのところで「理解した」または「少しだけわかった」という人がいれば、TM鈴木は嬉しいです(^_^)

でも「MER(最大外旋位)の画像をみたらほとんどの人がボールを持つ手が上を向いちゃってるよ!TM鈴木さん」と思っているあなた、その通りです。

理想はあくまで理想です。

プロや大人たちが投げる時にそうしてしまうのにはある事情(それこそ大人の事情)があるからです。

それは彼らが様々な変化球を投げるからです。

打者を打ち取るためにフォーシーム(速球)だけでは限界があります。だから変化球を使うのです。

変化球はフォーシームに比べるとわずかですが球持ちを長くしたり、指先での操作を加えなくてはなりません。

その分MER時からボールに対する手先での扱いを増やすことで変化球のキレを良くしているのです。

しかしフォーシームを投げる場合でもこうした理に適った腕の振り方ができないプロの投手も多いのが現状です。

画像2)や3)の方が投げやすい、しっくりくる等の理由もあるのでしょうが、理に適った腕の使い方からはかけ離れてしまっていることが、肘を痛めるリスクを高めることを問題視するべきでしょう。

成長期ではより理想的な腕振りを!

参照:『カラー人体解剖学』(西村書店)

まだ身体が成長過程にある野球少年、そして中高生ならばMERでのボールを持つ手の向きに関してはプロの真似はしないほうが賢明でしょう。

彼らはプロだからできる、いわば一種の高次技能であって、それをまだ身体が完成していない子供達に同じような真似をさせてしまうには非常に無理があります。

指導者や親(特にお父さん)には我が子の投球腕の動きを常々しっかりと確認していただくことを望みます。

投球腕のMER(最大外旋位)での前腕の回外(内から外への捻じり動作)の結果、ボールを持つ手の向きが1塁方向に向いているかを確認しておくべきでしょう。

そのためには腕や肩だけでなく、体幹部のしなりを伴った動きも得られるようにしておくことが必要です。

体幹の機能をフルに生かす

出典:https://goo.gl/RjU5o4

成長期の投手達や関係者に知ってほしいのは腕の使い方だけではありません。

腕のしなりを生むため、そしてキレのあるボールを投げるために必要なのは体幹の活発的かつしなやかな動きです。

田中将大投手(NYヤンキース)はMER(最大外旋位)時に背筋が伸びながら反って胸がしっかりと開いています。

出典:https://goo.gl/OK1WQd

この後ボールリリース時には投げたボールに乗っかるような勢いで体幹全体を縮ませながら捻じり込んでいます。

体幹の伸び縮みと捻じりという動作によって腕の振りがより一層速く鋭くなっているのです。

こうした体幹の動きと腕の振りの連動が理想的な投球メカニクスと言えるでしょう。

投げ方や腕の振り方についてのご質問やパーソナルトレーニングのご相談はこちらよりお問合せください。

まとめ

ピッチャーの肘の故障については様々な要因がとりだたされていますが、複合的な要因が絡み明確な答えはでていません。

そこで当ブログでは野球肘の要因として「外反ストレス」を検証してみました。

外反ストレスの特徴、そして肘の痛みとの関係、さらに外反ストレスを増やさない工夫について実際の投球フォームで気を付けるべき腕の振り方を示しました。

プロはもちろんですが、アマチュア特に成長期にある子供達は肘にかかる外反ストレス増やさない投げ方を覚える必要があるでしょう。

またその理想的なメカニクスに関する知識・技術を指導者や家族がしっかりと把握して指導にあたってほしいと願います。

TM鈴木

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