「なぜピッチャーは年齢と共に球速が落ちたり、肩や肘を痛めるのでしょうか?」という疑問に対しあなたはどういう答えをだしますか?
メディアや研究機関等で様々な検証はされているものの、中々『これだ!』という答えは見出せていないのが現状です。
そこで今回はプロ・アスレチックトレーナーの立場から身体の機能的な低下について検証してみます!
最後までお読みいただければ、球速を“ある程度”維持しつつケガのリスクを極力減らしながら、(プロなら)現役を全うすることも可能となるはずです!(^^)!
Contents
球速低下の要因を探る
image1:
動作に大切なもの、それは・・・
剛速球でしかもバッターをねじ伏せるイメージといえば・・・、一昔前はやっぱり松坂大輔投手だったのではないでしょうか!
現在の状況は残念ながら「過去の投手」といったところで、3年契約だったソフトバンク(ホークス)を自由契約になり、2019年1月に中日(ドラゴンズ)の入団テストを受けるといった具合です。
松坂投手にみる典型例
image2:
プロフェッショナル
であることの難しさ
多くのメディアや専門家諸氏が「松坂は終わった!」とか「もうあの剛球はなげられんな!」、「早く引退して後進の指導にあたってほしい!」とか勝手なコメントをしています。
たしかに誰が観てもフォームが崩れプロで通用するボールではありえませんし、登板したとしても打たれるのは当然といえるでしょう。
まあ、本人が続けたくてどこかのチームで必要とするなら契約成立なのだから問題はないでしょうし、外野がワイワイガヤガヤいう事ではない話です。
ただ松坂投手が並みの投手以下になってしまったのには、確固たる理由があるとTM鈴木は観ています。
それが2つの《し・な・り》を失ったことであり、それは2度と取り返すことができない運動性能であることを自覚しない限り、彼は現役に未練を残したまま引退することとなるかもしれません。
2つの《し・な・り》とは脊柱を中心とするコア(体幹部)の動きとアームスイング時に生み出されるムチの動作です。
肘や晩年に肩を壊したのは金属疲労、つまり使い過ぎたことによる組織損傷が大きく、その痛みを出さないために投球メカニクス(日本で言えばフォーム改造)を変えたことも2つの《し・な・り》を失う要因となったのかもしれません。
深刻!《し・な・り》が生まれない体
《し・な・り》を生み出せなくなってしまったのは年齢による主要組織の機能低下と、それ以上に彼が目に見えて太ってしまったから(体型変化)です。
体幹(コア)の《し・な・り》を生む骨盤や脊柱の動きをまったくイメージできなくなってしまった(またそうした改善をまったくしてこなかった)ことが大きな要因と考えます。
体型の変化、特に太ると《し・な・り》がイメージできないばかりか、その《し・な・り》の源となる骨盤の傾斜角や動きを感じ取ることができません。
骨盤の傾斜角は高い運動性能を維持するためある程度の角度が必要で、その角度が大きい程身体能力的な指標も高くなります。
松坂投手の場合太りやすいことが災いしたようで、食生活やコンディショニング管理の面でかなりマイナスに作用した可能性が高く、それはとりもなおさずプロフェッショナリズム(プロ意識とでもいうのかぁ)の欠落にあったといえるでしょう。
2017年1月の自主トレの際には9kg程絞った体をお披露目!?していましたが、例え10数キロ痩せたとしても骨盤や脊柱の【カラダ(動き)感覚】は戻らなかったとみるべきでしょう。
アームスイングでの《し・な・り》を生み出す動力源(骨盤の最適な前傾位を意識できないこと)がなくなってしまった結果、かつてのムチのような《し・な・る》腕振りもまったく機能しなくなったというわけです。
2つの《し・な・り》と運動性能
image3:
ムチの《し・な・り》を生む秘訣
運動性能とは、人の体が動いて何らかの成果を出すために必要な本来備わる能力と、それを上手に引き出す体の操作感覚です。
投手として運動性能を目一杯引き出すためにはこの2つの《し・な・り》は必須なのですが、果してどうやってそれを生み出しているのでしょうか!
《し・な・り》を生み出す秘訣
image4:
竹の如く!
脊柱が持つ《し・な・り》
投手が投げる際に必要な《し・な・り》とは、①体幹(コア=脊柱)であり、②アームスイング(肩ー肘ー手)の2つです。
①コアの《し・な・り》は脊柱を中心とした肋骨ー肩甲骨ー骨盤の連動性能で、②腕の《し・な・り》は肩ー肘を体より如何に(時間的に)遅らせてスイングするかに集約されます。
どちらも動きが波状に伝わっていく過程で、特に腕の振りはムチのような《し・な・り》を伴い肩ー肘ー手ーボールと先端にいくに従って強く速くなることが特徴です。
ピッチャーが加速期に入るとなぜ胸を張るのか!といえば、弓矢の“矢”を目一杯後方へ引っ張るためであり、その瞬間は投球腕の肩甲骨も最大内転(背骨に近づく)しながらその引っ張るためのエネルギーを蓄えています。
胸を最大限張り肩甲骨をマックスに背骨に近づけられるのは、骨盤の最適な前傾位を維持し脊柱を“若い”竹のように《し・な・ら・せ・る》ことができるからです。
ピッチャーにこの《し・な・り》が出なくなるとどうしても腕を速く振ろうとしますが、実は腕を速く振っただけでは限界があり、且つ肘の外反ストレス(肘を中心に腕が外側に反る動作)が強くなり痛みのリスクが増大してしまうのです。
【カラダ感覚】を失うことの怖さ
体幹の《し・な・り》がなくなれば地面から得る反発エネルギーはそこで顕著に失われ、腕に伝わる間にロスが生じ、残ったエネルギーもムチの効かない腕振りで球速をあげることは如何ともし難くなります。
晩年松坂投手(まだ引退していないけど・・・)に代表されるように、お腹や骨盤周りの“ふくよか!?”が目立ってしまうピッチャーや野手はその時点で成績は急激に下降線をたどります。
太ってしまったことで、ピッチャーというかアスリートとしての生命線であるこの【カラダ(動き)感覚】を失ってしまったことが、そもそもの失敗なのです。
松坂投手の場合、ピッチャーとしてのその素質はNPB(MLBであっても)の中で群を抜いていましたが、この「カラダ(動作)感覚」はその性能を得る取り組みを怠ったため、持ち合わせることができなかったと言えるでしょう。
日常生活でも必要となるこの「カラダ(=動作)感覚」、スポーツ時に生かせれば大きな利点となることは明らかなのですが。。。
プロとは斯くあるべき!
image5:
柔軟な思考が目標達成には不可欠
アスリートとして現場で一定(以上)の成果を上げ続けるため、本人のそのスポーツに対する考え方・取り組み方が試されているのです。
プロ(フェッショナル)とはどうあるべきか?あくまで各々の自覚次第ですが、様々な面における管理も仕事のうちと言えるでしょう。
取り組み方が試されている!?
これは何もピッチャーに限ったことではなく、トップスプリンターやトップスイマーにも通ずる能力であり、体を資本とするアスリートであれば持つべき必須の資質といえるでしょう。
ヤクルト・阪神・楽天で15年以上に渡り監督を務めた野村克也さんは「プロとはなんぞや?野球とは何か?」を問い続け、選手に考えることの尊さを促しました。
考えること、そして「今のままでいいのか・・・?」と自分に問いかけ続けること、こうした取り組みがなければ人の視点は楽な方へと向かってしまうものです。
懐は裕福なプロ野球選手とくればいつでもどんな美味しい物でも食べられるはず、でもそこには「体が動くための栄養素を補給する!」ことが優先されるべきで、「好きな物を好きなだけ食べる!」という思考では成果は現れにくいのです。
今の特にMLBでは筋肉をつけて身体を大きくする肉体改造が成果を出すために必要だとして、日本人選手もその慣例を実行しています。
ダルビッシュ投手は肘の手術から復帰し一見結果を出しているようにも観えますが、記録的には平凡であり本人も含め満足する成果には至っていません。
肉体改造によって今まであった2つ《し・な・り》が失われる可能性も十分ある!ということを自覚した上で取り組むか否かを判断する。
そうした思考を常日頃から持ち合せることがアスリートには求められているわけです。
アスリートに必要な資質
image6:
《し・な・り》を生み出すのも
維持するのも本人の取り組み方次第
動作中にこの《し・な・り》を生み出すのはその多くが先天的、つまり才能ともいえますが決してそれだけではありません。
後天的にそうした資質を身に付けることも十分可能であり、その性能をキャリアの間維持していくのも本人の考え方と取り組み方次第です!
大切なことはこの2つの《し・な・り》に気づくための「カラダ(動作)感覚」を常日頃から磨いておくことなのです!
イチロー選手はバッティングそのものは決して天才というわけではありませんが、この「カラダ(動作)感覚」は名立たるMLBプレーヤーの中でもずば抜けて優れています。
だから44歳を迎えた今現在でもMLBで注目されるアスリートであり続けられるのです!
TM鈴木はこの「カラダ(=動作)感覚」に着目した動きを推奨しています。ご興味がある方はこちらまでご連絡ください!
では最後にとある質問を少し・・・。
亀梨和也さんが「剛速球プロジェクト120km/h」で最速113km/hにとどまったのはなぜでしょうか?あなたのご意見をお待ちしております!(^^)!
出典:https://goo.gl/R8KHcS
まとめ
image7:
体型変化は失うものも大きい!?
投手の球速が年齢と共に落ちたり、その過程で肩や肘を痛める理由(わけ)について、松坂投手(現在フリー)の例を検証しました。
球速が落ちたりケガをする要因のひとつは体に働く2つの《し・な・り》であり、その《し・な・り》が生まれないことでアームスイングでのムチ動作が失われ(エネルギーロスが生じ)、いわゆる「腕投げ」になってしまう状況が考えられます。
勢いのない動作になるため球速は当然ながら落ちますが、そこで無理に腕を振ろうとすれば肘内側に外反ストレスが生じるため、ケガのリスクが跳ね上がります。
大切なことは2つの《し・な・り》を生み出しているか否かに気付くための「カラダ(動作)感覚」であり、その性能を日頃から磨いておくことでハイパフォーマンス維持が可能となるのです。
TM鈴木